鈴虫寺

鈴虫寺の雑木林から青空を見る 今日は梅雨の中休みでとても天気が良かった.
どこまでも真っ青な空で,見上げているとそのまま吸い込まれてしまいそうな気分になった.

こんなに気持ちよく空を見上げたのは,記憶している限りこれが2回目だ.
1度目は今から10年近く前,札幌で大学生をやっていた頃で,確か季節は冬だったと思う.
その日,どんな気分だったかは今となっては思い出せないけれど,大学生活がつまらなく思えて落ち込んでいたか,面白くないことがあってイライラしていたかのどちらかだったと思う.行きかう人々によって踏み固められた雪はツルツルになって注意しながら歩かないと転んでしまう.だから当然うつむいて足元を確かめながら歩くわけだが,もちろんその時の気分のせいもあって,普通以上に下を向きながら歩いて3大学に向かっていた.
大学の構内に入って,ふと見ると,同じ学科の女の子が歩いていた.それほど親しい仲ではなかったけれど,普段から会えば挨拶をして2-3言葉を交わす相手だったので,その日もとりあえず朝の挨拶をした.本人にとってはとりとめもない言葉だったかもしれないが,彼女がその時言った言葉は,今でも僕の頭に残っており,目をつぶれば彼女の声の調子や表情,一緒に見上げた空の青さまでもよみがえってくる.
「おはよう.ねぇ,見て.すごくきれいな空じゃない?」
その一言で,それまでの嫌な気分が全部吹っ飛んで,とてもさわやかな気分になった.
今日の空は,そんな空だった.


suzumushi.jpegさて,これからが今日の本題.
今日は,京都の妙徳山華厳寺,通称「鈴虫寺」を訪ねてきた.ここには,どんなお願いでも一つだけ必ず叶えてくれるという,わらじを履いたお地蔵様がいらっしゃる.そのお守りを義理の妹へ送ってやろうと思ったのが動機.

決して悪い意味ではなく,このお寺は「一流のアミューズメントテンプル」だと思った.
参拝料500円,待ち時間30分で思いっきりおつりが来るくらい楽しめるお寺だった.僕は,神も仏もほとんど信じないし(人並みに,髪とノドボトケはあるけどね),4月に祖母がなくなったときも「まぁ,セレモニーだからしかたねぇなぁ」くらいの気持ちで葬儀に参列する大馬鹿者です.そんなわけで,心があらわれたってわけじゃなく,お寺のアミューズメント性にものすごく感心したわけです.

集客のための工夫がいろいろされています.
まず,参拝料500円を支払うと,100人ほどが収容できる大講堂に通されます.お茶とお菓子(「寿々むし」(すずむし)という特製茶菓子)が振舞われます.その後,住職が20分ほどいろいろとお話を聞かせてくださいます.主な内容は,「スズムシについて」「庭園」「幸福地蔵の正しいお願いの仕方」「御守と御札の違い」(前者は個人レベル,後者は家レベルと効果の範囲が違う.また,厄年対策は御守はダメで御札を使う必要がある)「ゴールデンウィークは3時間待ちもざらなので,雨や雪の平日に参拝するのが吉」などなど.住職の話がまた面白く,これだけ聞くために言っても損はないでしょう.ちなみに,鈴虫寺で振舞われる「寿々むし」には小さな黒い物体が含まれていて,これがスズムシの死骸ではないかという噂があるそうですが,それは間違いでシソが正体だそうです.また,お地蔵様へのお願いの仕方にも,事細かなお作法があり,それを正しく守らないとダメだそうです.詳細は後に譲ります.

それから,「鈴虫寺」という通称の由縁ともなったスズムシ.通常スズムシは晩夏から秋にかけて2ヶ月ほどしか生息しませんが,この寺ではスズムシを1年中飼育しており,常にスズムシの声を聞くことができます.スズムシを通年飼育することは非常に難しく,先代の住職が28年の歳月をかけてやっと飼育に成功したそうです.住職のお話をうかがう講堂に1箱当たり500匹,計8箱のスズムシが元気に鳴いています.実際に見てきましたが,たいへん立派なものでした.

suzumusi_park.jpegさらに,寺の庭園と眺望.小高い山の中腹にあり,京都の街が一望できます.僕は土地鑑がないのでわかりませんでしたが,境内から比叡山や大文字焼きの大文字山などが見えるそうです.また,境内には,幹が三角や四角といったちょっと変わった形の竹も生えており,そんなものが世の中にあるとは思ってもみなかったので,とてもびっくりしました(「○○クン Love」とか落書きするのはやめろよなー).寺の背後にも大きな林があり,冒頭の写真にあるとおり,抜けるような青空に木々の緑が良く映えて,それはそれは美しい光景でした.

Suzumushi_dizo.jpegそして,最大の見所はやはりなんといっても,幸福地蔵と幸福御守です.御守は1つ300円.一度にできるお願いは一人一つだけ.願いがかなったらお礼参りをして,新しい御守をいただくことで新しいお願いができるそうです.お地蔵さんはわらじを履いており,お願いをした人の家を訪問して願いを叶えてくれるそうです.ですから,お願いをするときには自分の住所と名前をはっきりとお伝えしないと,お地蔵さんは迷ってお寺に帰ってきてしまい願いがかなわないそうです.お願いをした後に引っ越してしまった場合は,御守をもってお寺の方角に向かって手を合わせ「転居届け」をすればよいそうです.なお,お地蔵さんはケータイを持っていないので,電話やメールは受け付けないそうです.^^;
御守やお願いは一人一つだけですが,家族や知人の御守も分けてくれます.その場合は,以下の手順にそってお願いする必要があります.1)全員分の御守を持って手を合わせ,自分のお願いと住所氏名をお伝えする,2)すかさず1つの御守を抜き取り,それを自分用に別のところにしまう,3)それぞれの人に御守を渡し,受け取った人は寺の方に向かい,自分で住所氏名とお願いを伝える,だそうです.なお,どうやって海を渡るかは聞きませんでしたが,お地蔵さんは外国にも出張してくれるそうです.

こんな感じで,1時間弱の滞在でしたが,とても楽しかった.
神も仏も信じない僕だけど,ちゃんとお作法にのっとって,一生懸命お願いをしてきたし.

なお,このお地蔵さん,「菩薩地蔵」だそうです.自分がどんなに苦労しても,他の人の幸せのために一生懸命がんばる,そんなお地蔵さんだそうです.
くどいようだが,僕は宗教心はないし,今まで「菩薩」の意味も知らなかったけど,そういう考え方にはものすごく賛成なわけで.
すごく心がきれいになった気がした.
きっと,きれいな空のせいだと思う.



鈴虫寺
境内のそばに専用駐車場有.ただし,行く道が狭いので要注意.また,一方通行などが多く,僕は道順を発見できなかった.そのため,府道29号線沿いの有料駐車場(ここらへん)に車を停めた.3時間単位で1,000円.境内までは歩いて10分弱.川沿いの道を歩くので,ちょうどよい散歩コース.
参拝時間は午前9時から午後4時半.
講堂の広さは限られているので,入場まで多少時間がかかるので,余裕を持って.(お礼参りの人は,講釈なしでいけるのかもしれないが,僕は知らない)



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