科学 Vol.74 No.7

岩波の科学最新号の澤口俊之先生の記事,良い意味でも悪い意味でも熱かった.

この号の特集は「言語の起源」であり,提起論文→座談会→座談会へのコメント という形式を導入しており,企画者たちの意欲はひしひしと伝わってきた.
でもって,座談会の前に問題提起を行ったのが,脳神経学者の澤口先生.
(学生時代に僕の学部に澤口先生がいらっしゃり,講義を取るチャンスはいくらでもあったのに,一回もまじめに話を聞いたことがなかった.いまさらながら,激しく後悔.時間は戻ってこないから,常に緊張感を持って物事に取り組まないとダメだなー)
彼は,「脳に対する操作」という観点から言語を捉えている.彼によれば,2つの種類の操作があり,それは言語によって行われているとしている.一つは,思考などのように,自分自身の脳の状態を操作するための言語であり,もう一つは,コミュニケートすることによって,他者の脳の状態を操作するための言語である.「脳の状態を操作する」というのは,言われてみれば当たり前のことなのかもしれないが,僕にとってはコロンブスの卵だったわけで.
また彼は,脳の状態操作は,主に前頭葉のあたりで司られているワーキングメモリが重要な働きを担うことを指摘.
これらのことから,脳の状態変化 = ワーキングメモリ = 言語 が密接に関連するとし,霊長類の言語の起源は,ワーキングメモリの獲得にまで遡れるのではないかという仮説を提起した.
細かい話は忘れちゃったけど,彼の仮説が正しいとするなら,言語の起源が人類よりもっと古いリスザル(?)あたりまでたどれるそうで.
今まで,言語の話といえば,たいていがホモ・サピエンスで,せいぜいさかのぼってもチンパンジーあたりだったので,彼の記事にすごくワクワクした.

しかし,座談会では「ここでは,我々ホモ・サピエンスの言語を扱いたい」みたいな論調で,澤口先生の問題提起はほとんど黙殺.

そして,澤口先生もその扱いに,かなり腹を立てたらしい.
座談会に対するコメントで
「アンタら,マジで科学者? 学者なら,他の人の意見に対して建設的な批判・コメントをするのがマナーじゃないの? なんだよ,黙殺って? やれやれ. そもそも,『科学』みたいな,査読もない似非学術雑誌に寄稿した俺が悪いのか? まぁいいや.これから研究者を目指す若い人は,こんな大人になっちゃダメよ.科学ってのは,反証可能な仮説を立てて,それを立証する作業だからね.それを忘れちゃダメよ」(木公フィルターがかかっています;-p 正しい表現は原典をあたって下さい)
みたいにボロクソ書いてるし.

いや,澤口先生の気持ちはよくわかる.せっかく面白い話を書いたのに,相手にされなくちゃ腹も立ちますよねぇ.
だけど,ちょっと大人気ないと思うのは,何も座談会の出席者を「馬鹿よばわり」(いや,どこにも「馬鹿」とは書いてないけど,コンテキストがねぇ)しなくてもいいのに.

ただ,書き方は酷かったけど,真摯な科学者なんだなぁと思った.
だけど,ケンカ売っちゃった以上は,自説を自分で立証するような研究しないと,「口だけやんけ」って言われやしないかと,ちょっと心配してみたり.
#僕に心配される筋合いないと思うケド

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