「心理テスト」はウソでした。 受けたみんなが馬鹿を見た / 村上宣寛

「心理テスト」はウソでした。 受けたみんなが馬鹿を見た
「『心理テスト』はウソでした。 受けたみんなが馬鹿を見た」(村上宣寛, 2005)読みました.
感想を一文で述べると「一般向けの啓発書としてはいい内容だけれど,印象は悪い.」でした.


各章の内容を簡単に述べると,

1章:
血液型人間学.批判として,1)そもそもの性格類型が根拠のない主観的観察に基づいている,2)実際に性格と血液型の関連を調べる学術調査を行っても血液型人間学を支持する結果は得られない,といったことが挙げられている.
また,血液型人間学の始祖である古川学説が1933年に日本法医学会で正式に否定されたこと,1980年代に森本毅郎の検証などで再び否定されたこと,それにもかかわらずTV番組などで面白おかしく取り上げられていることへの苦言が述べられている.

2章:
誰でも当てはまるような一般的な記述に対して,「それは自分だけに当てはまる」と思い込んでしまう傾向を人々が持つ(「バーナム効果」)ことを挙げ,それをわかりやすく,つぶさに紹介.
僕が思うに,この本の中で,重要なメッセージの一つ.つまり,この本で槍玉にあげられている各テストを「よくあたっている」と思い込む傾向を,人々は持っているので気をつけましょう,ってこと.(もう一つのメッセージは,偉い学者サマだってミスを犯したり,無知だったり,場合によっては保身(?)のためにイカサマをやることがあるから,注意深く吟味する必要があるってこと)

3章:
ロールシャッハテスト.ご存知,インクのシミが何に見えるかを答えるテスト.
世の人々の誤解を解くための記述がある(ていうか,僕も誤解してた!).このテスト,「インクが何に見えるか?」ではなく,受験者が「シミのどの部分(部位,色の濃淡など)に着目しているかをコード化する」を元に診断するものらしい.シミが性器に見えようが,食べ物に見えようが,そういうことはあんまり関係ないらしい.
あと,一番笑ったのは,ロールシャッハテストの権威(と思われている人々)ですら,そのことをわりと失念していて,検査者の主観的な思い込みに合致するように結果をゆがめてしまうという例が挙げられているところ.よそに女を作って(ここポイント.まぁ,おサカンなわけだ)生活がめちゃめちゃになった挙句,誘拐事件を犯して投獄された男性の回答を,その人の素性を伏せたまま”偉い先生”方に見せたところ「男性は”こけし”や”酒瓶”に見えたと報告している.これは,男性器の象徴.性機能に自信がない人だ」とかなんとか診断してた.やれやれ.

4章:
矢田部ギルフォード性格検査.なんか,僕も大学の教養の授業でやった気がする.質問紙がカーボン紙になっていて,質問にYes/Noで答えた後に紙をめくると,回答が2枚目の紙に転写されていて,なにやら診断ができるやつ.
このテストは,「歴史はあるけれど,こっそりと質問項目が入れ替わっていたりする.入れ替えたのに,妥当性のチェックをやり直した形跡がない」とか「近年では,性格は5因子(Big Five)説が有力なのに,それが全然反映されていなくて,13因子も想定されていてめちゃくちゃ」とか批判されてます.

5章:
内田クレペリン検査.制限時間内に暗算(1桁の加算)を大量に行う検査.
この検査では異常者(ちなみに,異常者の定義は厳格にやられてないっぽい)を発見することが可能なテストと言われているが,実はこの検査の結果は性格の外向性・内向性との相関の方が強いということがいくつかの研究でわかっていると主張されている.内向的性格の持ち主が示すパターンを,この検査では「異常者」とみなしているので,結果を信じるな!と.
あと,普通の人でもこの検査に習熟しすぎると,「異常者」のような結果のパターンを示すらしい.気をつけましょう.;-p

以上,知ってる人にしたら「何をいまさら・・・」感が強い内容でした(僕は不肖心理学者なので,一般的な心理学の知識は素人同様と言われていますが,それでも7割くらいの内容は知ってた)が,今まで”権威ある”心理テストを頭っから信用していた人なら,さっぱりと目が覚める内容でしょう.
また,著者の揶揄った文体も読んでいて,面白いっちゃー,面白い.


ただし,逆に,その揶揄さ加減が,ちょっと鼻につくところもあった.
それと,本筋と全く関係のない筆者の日常風景の描写にもイライラさせられた.例えば,学生に心理テストの体験実習で回答させている間は暇で暇で仕方がないし,”自分は割と忙しい人間なので”研究室に戻ってその他の仕事を片付けるとか,しまいにゃあ,学生は授業が始まってもなかなか私語をやめないが,「就職活動でよく使われるテストのコツを教える」みたいなことをチラッと言うと一気に私語がやむとか.
この手の小話が1箇所や2箇所くらいなら,クスッと笑えもするのだが,あまりに人を小馬鹿にしたような記述が多いので,本当にイライラした.(内田クレペリン検査の内田勇三郎とか血液型人間判断の能見俊賢とかの”権威ある有名人”を揶揄するのは小気味いいが,匿名とはいえ,市井の学生さんなどをバカにするのは本当にけしからん)

そして,最終章はエピローグとして「仕事の能力は測れるか」というタイトルがついている.
実は,Amazonで注文する前に目次を見て,この章に多大な期待を寄せていた.これだけ扇情的な書名なのだから,たとえ私論であっても,さぞかし示唆に富んだ内容を述べているのだろうと.

しかし,読んでみると,できるとも,できないとも書いていない.
しまいには,「俺は,巷にあふれた心理テストをこき下ろして,人々を煽るための本を書くのに忙しいから,仕事の能力を測るテストなど作ってる暇はない」(俺的勝手要約)と言い放って,さじを投げていた.

あ~あぁ

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コメント (3)

  1. 最後のオチが、そんななら、ほんと、あーあですね。
    こきおろしている作業よりは、はるかに建設的で
    魅力的な仕事だと思ってしまいますが、、、、
    この人の天職は、人を揶揄することなんでしょうね。
    び・・微妙。

  2. 人が人を「客観的に」評価するなんて、できっこない。血液型占いとか、心理テストとか、みんな本気では信じてないから、気軽にお遊びで使う訳でしょうし…。う~ん、一般の人にとっても今さらだったりして。人事の現場のことは、よくわからないのですが、うむぅ、本気で使っているんでしょうか、この手のものを….。

    でも、読んでみたくなった一冊です。


  3. 物理学だって「客観的」に測定できないじゃん.
    その代わり,漸近的に「客観性」の追求をしているわけで.

    心理学だって同じです.
    人間にかかわる全ての事象をひっくるめて言われると,ちと悲しくなったり.

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