プラナリア / 山本文緒

ごめんなさい,久しぶりに本読んで泣きました.
#といっても,涙がにじんだ程度

5編収録.

【プラナリア】
乳がんで乳房を切除した女性が主人公.
それだけ聞くと「病気を克服して強く生きる女の物語」なんだけれど,実はこの女性,かなりイヤな奴.100人中95人くらいは,「いけすかねー女」と言うこと間違いなし.
なんか淡々としていて,僕的に「ごめんなさい」.

【ネイキッド】
老舗の和小物店を一緒に経営していた夫と仲たがいし,現在一人暮らしでモラトリアムしている女性が主人公.
彼女もまた,わりとイヤな奴.
そしてまた,これも淡々としていてあんまり好きじゃない.
ただし,”チビケン” と肌を通じて心まで通じちゃうくだりはイイ.

【どこかではないここ】
山本文緒には珍しく,主婦が主人公.
しかし,愚痴っぽい主人公なところとか,主人公がいけ好かない女だと思っている相手が実は学生時代の同級生だとか,かなり山本プロット全開.
これも,淡々と読むしかない.

【囚われ人のジレンマ】
学生時代の(ていうか,今もだけれど)僕の研究柄,かなり「もしや」と思ったお話.案の定,「もしや」だったお話.
主人公の恋人は学生時代からのお付き合いで,主人公自身は社会人として働いているが,恋人は大学の社会学部の博士課程の1年目.わはは.
でもって,その恋人の研究テーマが「囚人のジレンマ」だそうで.げはは.
途中で,かの有名な「共犯の容疑者2名がいて,自白するか黙秘するかうんぬん・・・」がご丁寧に出てくるし.むはは.
しかーし,朝丘君(恋人の大学院生ね),最低限「応報戦略」もセットで説明しないとだめじゃーん.まぁ,大学1年生の時の回想として出てくるセリフなので,まだ勉強の途中だったのかもしれないけれど.

何はともあれ,主人公も恋人も,かなりイヤな奴に描写されてますな.
しかし,僕の知る限り,数少ない「大学院生の生態」がうまく描写されてる作品だと思いました.
大学院生とか若手研究者の♂を落とそうとしていて,彼の生態とか頭の中とか行動傾向とかがイマイチよくわからずに苦労している女の子は,とりあえず参考図書として役に立つでしょう.

いやーホント,自分のことは棚に上げるけれど,朝丘君みたいな奴が学生時代には周りにいっぱいいたような気がするので,笑った,笑った.


【あいあるあした】
白眉.
山本文緒の数多の作品群の中で,僕的大ヒット.
珍しく,男性主人公.脱サラして小さな居酒屋の大将(本人は「マスター」とか苗字とかで呼ばれるのが大嫌い)で,口数少なく,女性に対して不器用で頑固な30代.
ニガニガしく思いながらも,ホームレスの女性を家に住まわせてやる人情派.だけど,天真爛漫なその女性に細かいことで心をかき乱されちゃったり.
とにかく,「がんばれ,不器用なおっさん」を心のスローガンにしている当方としては,かなりイケていて,泣けた作品.

伏線の張り方も絶妙でした.
もしお読みになることがあったら「プリン」と「髪の毛」には要注意.

あと,

(前略)・・・俺の頭を「よしよし」と言って撫でた.


でホロリ.
これだよ,これ.

キュンとくるね.






ちなみに今回,図書館で借りてきたけれど,文庫も出てるようだし,買って愛蔵しようと思った次第.

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