下村博文衆院議員の教育改革案はダメダメだと思う

当方、教育問題とかを今まで真剣に考えたことすらないけれど、去る8月20日に行われたシンポジウム「新政権に何を期待するか?」で、下村博文衆院議員が語ったとされるビジョンはお話にならないと思った。

正確な発言内容はわからないが、骨子が産経新聞の記事「安倍政権でこうなる: 首相主導で『教育再生』 」に報道されている。

最初、下村議員の意図が、記者によって誤解されて報道されている可能性があるかもしれないと思った。
念のため、下村議員のblogを調べたところ、「全国教育問題協議会 教育研究大会 シンポジウム2006」において、

・・・翌日の産経新聞朝刊の記事にて詳しく取り上げられた。

と、産経で報道された事実を本人も認識している上、内容に関して訂正を行っていないことから、報道の内容は下村議員の発言意図を逸脱していないと確認された。

そこで、安心して、産経の記事を引用し、ちょっと考えてみることにする。

子供たちに、1人で生きているのではなく、社会みんなで助け合って生きているのだと実体験してもらうために、奉仕活動、ボランティア活動を必修化しようという案がある。
高校卒業は3月だが、大学入学は9月にする。半年のブランクのうち3カ月間は、介護施設などで奉仕活動をしてもらい、その経験がなければ大学に入学させない。

「社会みんなで助け合って生きているのだと実体験してもらう」というアイディアは大賛成。
奉仕活動やボランティア活動を必修化するという案に関しては、いろいろ思うところもあるけれど、今回はスルーする。
問題にしたいのは「大学入学に奉仕活動を義務化する」というアイディア。

ダメだと思うこと、その1。
大学・短大への進学率は、平成17年度で51.5%とのこと(文部科学省「平成17年度学校基本調査速報について」より)。
ある世代を単位とした場合、少なくとも半分の人々は大学等へ進学しないことを意味する。
ということは、下村議員のプランに従えば、奉仕活動が課せられるのは理論上国民の半数にしか満たないことになる。
誰も「社会みんなで助け合って生きているのだと実体験」しないことよりはずいぶんとマシであることに代わりはないが、その程度の比率で満足だと下村議員は判断を下すのだろうか?

僕自身、正直なところ、国民全員に義務付けるべきか、大学進学者だけに義務付けるべきか、明確な答えは有していないが、どちらかというと前者じゃないと意味がないように考えている。

ダメだと思うこと、その2。
大学は高等教育/研究機関であり、「模範的国民養成期間」ではないはずだ。
高等教育を身に着けたり、研究を行ったりする能力があるかどうかで、大学入学者は選抜されるべきであると考える。この限りにおいて、(それが最適かどうかはわからないが)学力テストで選抜を行うことが理にかなっている。もちろん、各大学には「教育方針」なるものがある。その大学が、卒業生として「奉仕活動経験者であることが必要である」と考えるのであれば、それを選抜の基準にしても良いだろう。
しかし、奉仕活動経験が、大学卒の資格を得るのに必須であるとは考えない大学にまでそれを強いるのは、傲慢であると思われる。

また、海外留学生をどう扱うかという問題を全く考えていない。
日本に留学する学生は、「日本の国民性」を身に着けるために日本に来るのではないだろう。彼らはおそらく、「高度な教育/研究」に触れるためにやってくるのだ。
そんな彼らを、選抜から排除するのだろうか。
#なお、「外国人は、日本から知的財産を海外に持ち出すだけだから排除していい」という意見はあんまりだと思う。教育に関してはそうかもしれないけれど、研究に関しては日本の大学が留学生から知的財産をもらうことだって沢山ある。

ダメだと思うこと、その3。
大学入学に導入する前に、とりあえず”公僕”たる公務員の選抜に導入したらいいんじゃないですか?
公務員の採用を4月じゃなくて9月にして、その間に奉仕活動を義務づけなければ公務員になれないようにしたらいい。
約半年間、本来(4月採用)なら研修に使えるはずの時間を、公務員候補者の自主的な奉仕活動に充てたら、いったい何が起こる?大まかに言えば、本来の公務員の業務にとっては全く役に立たない半年間を強制的に過ごさせることになるだろう。

それと同じことが、大学教育/研究活動にも起きるのだ。本来なら、高等教育を受けることができたはずの時間が、それにとっては全く役に立たない時間を過ごすことを入学希望者に強いることになる。こんな時間の無駄遣いはない。


本当は、

駄目な教師は辞めさせる。一方で、いい先生の待遇をよくするという体系に変える。親が学校に期待しているのは、いい先生だ。

に対して、「そんな、至極当たり前のことを何を今さら言ってるの?問題は、教師を評価する方法でしょ?それに対する具体的なアイディアはあるの?あったとして、モラルハザード(良い教育を受けさせることよりも、生徒や親にウケることだけを最優先に考える先生ばかりになる)の問題まできちんと解決できるの?」と言いたかったり、

文科省にも共産党支持とみられる役人がいる。官邸機能の強化には、省庁の局長以上の人事については官僚ではなく政治が任用することが必要だ。

に対して、「思想の自由を公務員から奪うのですか?局長以上に絞っているとはいえ、当の局長は与党の顔色を見て末端の公務員を採用するでしょ。そうすると、最終的に与党に都合のいい人ばっかりになるし、政治的信条によって職業採用の機会が制限されることになるよ。それって、とんでもないことじゃない?」

とかいろいろ言いたいけれど、もうバカバカしくなってきたから、やめる。

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