松本清張『点と線』

 初めて松本清張を読んだ。

 彼の作品としては、映画化された『砂の器』だけはDVDで見たことがあった。胸を打つ作品だったし、見て良かったと思うし、名作だと信じる。ただし、未見の人にオススメするほどかと言われると、少々口ごもる。昭和中期が舞台で現代とは生活風俗が異なるし、疾病差別という重いテーマが背景にあるので、真剣に見ようと思ったらずいぶんと肩がこるのだ。
 このように、僕の唯一の「松本清張・経験」は『砂の器』に集約されており、松本清張は肩こりの固まりみたいな存在としてしか認識されていなかった。だから、有名作家であることは知っていながら、これまで一度も彼の作品は読んだことがなかった。

 ところが昨日、単なる暇つぶしのつもりで松本清張の『点と線』の文庫版を購入した。なんで松本清張を選んだのかはよく分からない。それでも、『点と線』をチョイスした理由は、彼の代表作であるという事を知っていたからだ。その上、「アリバイ崩し」もしくは「時刻表トリック」というミステリ・ジャンルにおいて、金字塔と目されていることも知っていたからだ。ミステリ方面に全く詳しくない当方ではあるが、一般常識としてこの作品は読んでおく必要があるかもしれないと、なんとなく思った次第なのだ。

 僕は本を読むスピードの早くない人間だが、ほんの2時間くらいで読み終えられた。初めの数パラグラフは、少々堅苦しい文体に面食らいもしたが、ペースを掴んでくるとスルスルと読める。

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NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』第19回

今朝8時頃、近鉄電車に乗っていたせいで、車内広告(ゆったり伊勢志摩)とワンセグから竹下景子の分身攻撃を受けた当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第19回めの放送を見ましたよ。

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 両家は結婚式場に入った。

 茂(向井理)は徹夜で仕事をしたせいで寝ぼけ眼である。穴の開いた靴下でやって来たり、神事や祝詞の意味を真剣に理解しようとしたり、相変わらず他人事のようであった。それでも、式は無事に完了した。

 その後、新郎新婦の記念撮影が行われた。ふたりが身を寄せた時、布美枝(松下奈緒)の扇子が茂の義手にぶつかった。響いた硬質な音に重ねて、布美枝はこれから彼と長く一緒に生きていくことを意識するのであった。

 宴席でも村井家の非常識さが次々に顕にされていった。
 茂の父(風間杜夫)は地元で初めて東京の大学に進学するなど神童扱いだったが、故郷に帰ってきてからは風変わりな生活に呆れられている。布美枝の両親が客に挨拶回りをしているのを尻目に、茂の父は、妻(竹下景子)の忠告も聞かず料理を食べてばかりいる。

 もちろん茂も料理を食べてばかりである。
 その上、茂は大きな屁をしてしまう。座敷の中は凍りつくのに、茂は少しも悪びれる様子がない。特に布美枝は大きな不安を抱えるのであった。

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MJの命日に『キング・オブ・ポップの素顔』公開予定

マイケル命日に映画「キング・オブ・ポップの素顔」日本で最速公開(eiga.com)

 ”キング・オブ・ポップ”と呼ばれた男の素顔が、世界に先駆けて一周忌となる当日に日本で公開される。同作は、元マネージャーのマーク・シャフェルが撮り続けた、10年間にわたるマイケルさんのプライベートな表情を本邦初公開する。

 プライベートフィルムとも呼べる同作は、シャフェルとオースティン・テイラーが共同で監督を務め、シェイ・サルウォルドとボブ・ニーマックがプロデュースを担当。マイケルさんの生まれ育った故郷への旅が収録されているほか、今まで公開されることのなかったネバーランドの深層部も明らかに。さらに、バースデイパーティで顔に生クリームを塗られて友人らと笑い合う姿など、限られた人間にしか見せることのなかった映像を通して、「マイケル・ジャクソン」というひとりの人間の素顔に迫る。

 「マイケル・ジャクソン キング・オブ・ポップの素顔」はスターサンズ配給で、6月25日から全国100スクリーン規模で公開。

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Peeping Life

 ヴィレッジヴァンガードをぶらぶらしていたら、『Peeping LIfe -The Perfect Emotion-』というDVDのデモが流されていた。
 無駄にCGで書かれたフツーの人々が、脱力系のやりとりをするという地味なアニメなんだけれど、ジワジワくる。思わず、口元をニヤケさせながら見入ってしまった。

 昨年のSIGGRAPH ASIA 2009でも上映されたらしいよ。

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NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』第18回

 「放送を見ていなくても、まとめ記事のおかげでパートのおばちゃんとの話題作りに重宝しています!」と言われたことに気を良くした当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第18回めの放送を見ましたよ。

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 結婚式前日。
 布美枝(松下奈緒)の幼馴染であるチヨ子(平岩紙)が会いに来てくれた。まだ実感のわかない布美枝に対して、チヨ子は自分の経験に照らし、親に挨拶をして初めて実感がわくのだと語る。そして、婚礼前日にするか、当日の朝にするか、そのタイミングが難しいのだとアドバイスする。
 母(古手川祐子)との別れは済ませていたが、父(大杉漣)に対してはうやむやになっている布美枝であったが、父は気配を察すると照れくさくて逃げてしまうのであった。

 夜、布美枝が自室で嫁入りの支度をしていると、兄(大下源一郎がやってきた。片腕の茂(向井理)はネクタイを結ぶのに苦労するだろう。それを手伝うのは妻の勤めであり、結び方を覚えておけと言うのだ。気の利く兄に感心する布美枝であったが、兄は父から言いつけられたのだと打ち明けた。

 その後、布美枝は店で作業をしている父のところへ出向いた。酒屋を営む彼は、娘の結婚式のために最上級の酒を振舞おうと張り切っているのだ。ところが、平素と様子の違う父は「茂とその父(風間杜夫)は下戸だから安い酒を出せば良い」などと柄にもない軽口を言い、布美枝を少し驚かせる。
 父は茂の食べっぷりをひどく気に入ったと話した。見合いの席で遠慮なくガツガツと食事に手を付ける者はそういるものではない。食事の仕方には、その人の本性が出る。食べるということは生きることであり、彼の貪欲な生きる力を何よりも評価しているのだと言う。慣れない生活で楽はできないかもしれないが、最後に良かったと言えるように生きていけと布美枝にエールを贈るのであった。
 これまでの感謝を述べる布美枝に対して、父は背中を向け、いつものように強情につっぱねる。しかし、頬には一筋の涙が伝っていたのであった。

 昭和36年1月30日。婚礼当日。
 慌ただしく着付けに出かけるはめになった。そのため、布美枝は家族に対して十分な挨拶もできなかったが、無事に布美枝はとても美しい花嫁姿となった。
 しかし、背の高すぎる布美枝に対して、一番大きな打ち掛けでも丈が足りなかった。

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NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』第17回

 時代劇俳優、性格俳優、喜劇役者などの区分に倣って、風間杜夫のことは「義手助演男優」(代表作『スチュワーデス物語』、『ゲゲゲの女房』)と呼んでも良いのではないかと思った当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第17回めの放送を見ましたよ。

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 見合いの翌日にして、結納の前日。布美枝(松下奈緒)の家では嫁入り道具の準備を進めようにも、時間が足りないことで大騒ぎになっている。そんな中、布美枝だけは却って落ち着き払っている。

 近くの農家に嫁いだ姉・ユキエ(星野真里)が様子を見に来た。あっという間の結婚をどう思うのかと心配する姉に対して、時間がなくてクヨクヨ悩む暇もない、相手のことはよく分からないがもう一度会いたいと思うだけの魅力があると説明する。ふたりの少女時代の思い出話になり、街を出て行きたがった姉、地元に根を張りたいと思っていた布美枝だったのに、今やそれが逆になったと感慨にふけるのだった。

 翌、1月28日大安、結納は無事終わった。
 村井家では結婚式の準備で、相変わらず母(竹下景子)が孤軍奮闘している。一方、全くやる気の無い茂(向井理)。茂が小さい頃に描いた絵を母が出してきたが、それを見た途端創作アイディアが浮かび、また机に向かってしまった。

 布美枝の母(古手川祐子)は着物を1枚差し出した。忙しい婚礼準備の中に時間を見つけ、リウマチで痛む体ながら徹夜で縫ったものらしい。そこには、平穏な生活が末永く続くようにという願いが込められているという。布美枝は、東京で茂の妻になることは楽しいことだけではなく、家族とはなかなか会えなくなってしまうことにもなるのだと初めて自覚するのであった。

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NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』第16回

 昨夜は日テレの『Mother』を視聴し、その興味深い内容のため来週以降も見ようと思ったのだが、一方で胸の悪くなるようなサスペンスドラマで寝起きの悪くなってしまった当方が、 NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第16回めの放送を見ましたよ。

 見合いの部屋に置いてあったストーブがいつの間にか消えていた。1月下旬の座敷は急に冷え込んできた。飯田家の父(大杉漣)らが慌てて着火させようとするが上手くいかない。普段やり慣れていないからである。じれったくなった布美枝(松下奈緒)は、自分で着けようとして思わず立ち上がってしまう。背の高さがバレないように工夫してきたのが無駄になってしまった。

 座敷の凍りついた雰囲気を打破するかのように、茂(向井理)がストーブに近づき、片手で器用にストーブを点火させた。その姿を見たとき、布美枝はなぜか幼い頃に林の中で「べとべとさん」に追いかけられたこと、その時見ず知らずの少年に助けてもらったことなどを思い出していた。

 茂の母(竹下景子)はブロックサインを決めていた。つまり、茂が相手のことを気に入った場合は吸い物に手を付けて知らせる事になっていたのだ。いよいよ膳に吸い物が出され、茂は躊躇すること無く食べた。それを見て、茂の家では結婚を進めることを決意した。そこで、見合いの席で異例の婚約申し込みが行われた。

 突然の事態に驚きながらも、その夜に家族会議が行われた。家族は、強く反対はしないが、常識はずれな展開に少々難色を示している。しかし、布美枝本人は祖母がめぐり合わせてくれた良縁だと思い、また、茂のことを気に入ってもいたので結婚を承諾することにした。話が本決まりになった。両家は、早急な結婚の準備に追われることとなった。

 後で聞いてみると、茂は布美枝のことを特別に気に入ったわけではなかった。吸い物を食べたのは、美味そうだったからつい食べてしまったというのだ。その夜、茂は布美枝の背の高さになぞらえて、まるで妖怪「一反木綿」のようだったと思い出すのであった。

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キャッシュレス生活7日目: 俺たちの戦いはこれからだ!

今日も朝食抜き。
昼は社食(給料天引き)で、天ぷらそば。

昼食後、「人は、紙幣を数えると感じる痛みが軽減される。本物の紙幣、もしくはただの紙を数えた後、冷水に手をつけさせる。すると、前者の方で報告される痛みが少ない」(Handling Money Could Bring Pain Relief: Discovery News)なんて記事を読んで、「はぁ、俺はキャッシュレスだから紙幣を数えることができない。ダメな人生だ・・・」などと、文章を読んだだけでショックを受けるというダメ人生を謳歌していました。

キャッシュカードと取り戻したその時、ケータイに着電。当方の取引銀行からだ。
ついに、キャッシュカードが戻ってきたらしい!届出の印鑑と本人確認用の身分証明証を携えて取りに来いとのこと。
即座に出かけていった(職場から車で数分)。

なんの書類だかちゃんと確認しなかったが(こういうところ、社会人としてダメ)、自宅住所と氏名、さらに届出印を押す書類が1枚。それに記入し、免許書と一緒に出したら、すぐにキャッシュカードを返してくれた。

その時、直近の口座資金の移動記録を見せてくれた。僕がキャッシュカードを失くした日の出金(ATM)と、ゆうちょ銀行の口座に振込をした記録(モバイルバンキング)のみが記されていて、それ以外の不審な記録はなかった。

また、窓口係のカウンターの上には、ATMを管理する銀行からの送り状が置かれていた。いくつかの項目のある表があり、どんなことが書かれているのか興味津々だったのだけれど、さすがにじっくり見せてくれと言うだけの勇気はなかった。

もうどれだけ現金を使っても大丈夫なので・・・、いや、給料日前でちょっと残高が気になるのでほどほどにお金を使おうと思い、すぐ隣のスーパーで300円くらいのキャンディーを買ってしまった。心置きなく現金の使える嬉しさよ。

借金1万円も返済した。利子に関しては、定期預金の金利と同じくらいで良いとのことだったので、年利0.1%とし日割り計算したところ 0.14円くらいだったので、丸めて0円ということにした。勝手に。

さらに晩飯は、国境食堂というところでとんかつ定食(大)1,280円を豪勢に現金で食べた。
美味しかった。腹パンパン。

(完)

—木公センセイの次回作にご期待ください。

NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』第15回

朝8時まで放送されている関西ローカルニュースのキャスターは、エンディングに「今日も一日、お元気で!」と声をかけるのが恒例だ。しかし、今朝は「今日は寒さにお気をつけて」という変化球が投げ込まれて、一瞬ビクッとなった当方が、 NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第15回めの放送を見ましたよ。

昭和36年1月25日、見合いの日の朝を迎えた。
布美枝(松下奈緒)の家で見合いが行われることになっており、一家は準備に大慌てである。

布美枝の父(大杉漣)は、彼女の背丈が目立ちすぎないように、また、場が暖まったところで効果的に布美枝が登場できるようにと、様々な策を練って家族に指示を出している。
布美枝は、祖母からもらった形見の簪を挿し、祖母の遺影を前に良い縁となるように祈るのであった。

相手の村井家が到着した。
気合の入っている母(竹下景子)に対して、相変わらず父(風間杜夫)と茂(向井理)はマイペースである。

いよいよ見合いが始まり、布美枝の緊張は頂点に達した。
座敷の襖の裏で、父から呼ばれるのを待っているのだが、なかなか声がかからない。焦れてしまった布美枝は、襖を少しだけ開けて中の様子を覗き見る。一瞬、茂と目が合ったような気がして、慌てて首を引いた。

ついに、布美枝が座敷に呼ばれた。
茂は、布美枝の目を見て、先ほど覗いていたのが彼女だったと確信した。「さっきの目玉だ」。
興が乗った茂は、突然、自転車に乗れるかを質問した。布美枝は実家の酒屋の配達の手伝いで自転車にはよく乗ると答える。それを聞いた茂は嬉しそうにほほ笑んだ。一方の布美枝も、彼の屈託のない笑顔に引き込まれるのであった。

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