根性試しに「ニュー・シネマ・パラダイス」

 映画『ニュー・シネマ・パラダイス』を見た。

 映画の時代設定は、第二次世界大戦終了直後あたりのイタリア。シチリア島の小さな村の映画館「シネマ・パラダイス」の中年映写技師と映画好きの少年の心の交流にかんする物語。やがて少年は成長し、映写技師の勧めもあって村を捨てる。中年になった少年が、自分の人生で得たものと失ったものを回想するという主題。

 古い映画の断片がたくさん出てくるので、映画フェチ垂涎の映画だろう。
 僕はそれほどの映画フェチではない。けれども、この映画は胸を張って良い映画だったと言える。たとえ上演時間が3時間(「完全オリジナル版」)あって、派手なシーンがないので油断すると寝そうになるという弱点はあるものの、この映画を観る前後で、僕は自分の人生に対する姿勢が軌道修正された。今まで右斜め方向(政治的意味ではない)に突き進んでいた僕の人生指針が、少なくとも3度位は正面方向に修正された気がする。




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 実は、それほど積極的に見たいと思ってこの映画を手にとったわけではない。
 僕は楽天レンタルと契約していて、月会費900円で4枚のDVDを借りることができる。借りたいDVDをwebで登録しておけば、順次郵送で送ってくれる。返却期限は定められておらず、見終わった時点で郵送で送り返せば良い。返却分がセンターに届いたところで、次のDVDが送られてくる仕組みだ。

 レンタル希望リストに登録しても、他の人に貸出中のものは送られてこない。だから、余裕を見て少し多めに登録しておくことがコツだ。そうしなければ、月会費を払っているのに1枚も借りられないといったことが起きるかもしれない。

 そういった、「それほど見たくはないけれど、元を取るためにとりあえず登録しておいた映画シリーズ」の中に、今回の『ニュー・シネマ・パラダイス』があった。内容はよくわからないが、タイトルは聞いたことがあるし、いい映画だという噂も聞いたような気がするので、一度くらい見てみるのもいいだろうという軽い気持ちで登録しておいた。
 しかし、届いてから知ったのだが、これ(完全オリジナル版)は3時間もある映画だった。さすがに気軽に観る気にはなれず、届いてから1週間半ほど放置していた。それを、この週末に思い切って見ることにしたのだ。

 本日19時30分ころから見始めて、当たり前のことだが、22時30分にやっと見終わった。
 いい映画だった。

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故郷とか、昔の恋人とか、人生の成功の意味とか。それらに対して抱いているアンビバレントな感情が全て掻き立てられて、思いが千々に乱れる。そんな映画だった。

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 映画を観る直前、今日の19時頃まで、片道6時間(予想)をかけて愛媛県松山市までドライブしようかと考えていた。明日未明、0時過ぎに現地に到着し、安宿に泊まり、翌朝から市内観光をするつもりだった。月曜日の午前にどうしても外せない仕事があるので、明日の午後早い時間に出発して帰ってくる計画であった。

 それを僕は「根性試しに走ってみる」とひとりでタイトルまで付けていた。

 実は、今日から9月6日までの会期で、松山市にある愛媛県美術館で「メカデザインFOR1/1 メカニックデザイナー大河原邦男展」が開催されている。大河原邦男とは、かのガンダムのデザインを手がけた人だ。昭和後期生まれの男の子の憧れの的だ。もちろん、当方も憧れている。

 大河原邦男は、ガンダムの他に「」という作品のメカデザインも手がけている。とても無骨な戦闘ロボなのだが、そのいかにも男臭い感じのデザインがカッコいい。

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 「
根性試しに作ってる。」というwebコンテンツがある。板金芸術家(?)の倉田光吾郎氏が、鉄板を人力ハンマーで人力で叩いて人力によって整形し、原寸大のボトムズを人力で作る(全高約4m)という人力プロジェクトである。
#なお、某鉄人を作るプロジェクトもあったのだが、兵庫県某市とバッティングして没になったらしい。

 昔から話題になっていて、一度実際に見てみたいと思っていた。普段は彼のアトリエに設置され、非公開らしい。ところが、大河原邦男展に合わせて愛媛県美術館に展示されているという(美術館侵攻: なんでも作るよ。)。愛媛には一度も足を踏み入れたことがないし、一度行ってみたいと思ったのだ。

 別に今日、明日でなくてもいいのだが、思い立ったらすぐに行きたくなるのが僕の悪い癖だ。
 「根性試しに走ってみる」というタイトルのもと、夜に愛媛まで移動して、朝っぱらに現地リポートすれば、blog ネタ的にも面白いかもしれないと思ったのだ。

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 しかし、結局は愛媛行きを取りやめた。
 自分の体力や運転技能を過信するのはよくないと思ったからだ。19時に出発して、夜を徹して愛媛まで行くというのは、少々危険な行為である。今日の昼は昼で、いろいろやったりしていたので、日中の疲労も蓄積していた。

 後先のことを考えて、ぐっと我慢するのもオトナの根性試しだろうと思い、ドライブはやめた。

 その代わり、浮いた時間で『ニュー・シネマ・パラダイス』を観た次第。

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 もし今夜、『ニュー・シネマ・パラダイス』を見ないで愛媛に行っていたとしたら、僕はまたひとつ人生の汚点を増やしていたかもしれない。

 映画好きの少年トトは、大人になってある行動に出る。見る人によっては、それは彼の純真さの反映であり、善き行動だと思うかもしれない。けれども、僕はそれを、人間の醜さのように感じた。それは、最近、自分が同じように考えていた行動でもあった。
 自分の姿を鏡で見せられたような気がして、恥ずかしくなって、思いとどまった。

 この映画を見ないで「根性試しに走ってみる。」をやってたら、マジやばかった。人生の軌道修正がなされて良かった。

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 松山へは、大河原邦男展の会期中に、余裕のあるスケジュールと根性のすわった心で、晴れ晴れと訪れたいと思います。

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