NHK『カーネーション』第82回

子供の頃、『パパはニュースキャスター』(田村正和主演)を見ていて、自分にも娘が生まれたら「愛(めぐみ)」という名前をつけようと思ったことのある当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第82回目の放送を見ましたよ。

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第15週「愛する力」

1946年(昭和21年)7月。
静子(柳生みゆ)の結婚の後、三女・清子(坂口あずさ)の縁談もトントンと決まった。
水玉ワンピースは飛ぶように売れ、糸子(尾野真千子)は朝から晩まで休むまもなくそればかり縫っていた。嫁に行ったふたりの妹が抜けたことも、店の忙しさに拍車をかけた。

そこで、新たに経理専門の人を雇うことにした。女ばかりの店なので、当然、女を雇うつもりでいた。しかし、店にやって来たのは、メガネをかけた小太りの男だった。
その男の名は、松田恵(六角精児)という。その名前から、いつも女に間違われるのだという。経歴を聞くと、心斎橋の大きな洋服店で、経理や社長秘書などとして務めていたという。男であることは予定外だったが、仕事の上では申し分のない人物なので、店で働いてもらうことになった。

松田は社長秘書の経験から、有益な人脈を持っているという。早速、泉州繊維商業組合の存在を教えてくれた。これは、泉州地方(岸和田などを含む、大阪南部)の繊維関係の商売人の組合だという。糸子はすぐに組合に連絡をとって、挨拶に行くことにした。

組合事務所を訪ねてみると、ちょうど月例会の日だった。まっすぐに料理屋に行くよう指示された。
料理屋の座敷に着くと、糸子は襖を少し開けて中を覗いてみた。おっさんばかりの組合だろうと予想はしていたものの、想像以上にむさくるしく、下品で、飲んで騒いでばかりいる連中だった。しかし、そこで帰るわけにも行かず、こっそりと場に紛れた。

すると、すぐに組合長の三浦(近藤正臣)が見つけて、みんなに紹介してくれた。三浦の紹介によれば、岸和田で洋裁店を開く「女傑」ということだった。糸子はそれに悪い気はしなかった。
続いて三浦は、糸子に組合員たちを次々に紹介していった。糸子が気になったのは、たまたま隣に座っていた周防(綾野剛)という青年だった。周防は長崎から出てきた職人だが、今は三浦のカバン持ちのような仕事をしているという。

紹介が終わると、周防は黙りこんで動かなくなった。糸子は彼に話しかけてみた。
しかし、周防の言葉は糸子にはなかなか聞き取れなかった。彼はきつい長崎弁を使うので、それを初めて聞く糸子には理解が難しかったのだ。時間をかけて話を聞いて、糸子は以下のことを知った。
周防は長崎で職人をやっていたが、原爆で焼かれてしまったので、親戚を頼って家族で岸和田に来た。不幸中の幸いで、妻子を含め全員原爆の被害はなかったという。周防も初めの頃は大阪弁を聞き取れずに苦労した思い出がある。
そういった話をするうちに、ふたりはすっかりと打ち解けた。

そこへ、北村(ほっしゃん。)という男が絡んできた。彼の仕事はよくわからないが、みんなが言うには「ヤリ手」なのだという。
北村は、女が来ると聞いて楽しみにしていたのに、糸子は美人ではないなどといきなり失礼なことを言い出した。そして、一升瓶を差し出して、糸子に酒を勧めた。

糸子はこれまで一度も酒を飲んだことがなかった。しかし、北村に挑発されたことに腹を立て、岸和田で有名な酒豪だなどと見栄を張ってしまった。北村からはおちょこではなく、より大きな湯のみになみなみと酒を注がれてしまった。後に引けなくなった糸子は、思い切ってその酒を一気飲みした。
初めて飲んだ酒はうまかった。そして、自分も酒が飲めるということを知って嬉しくなった。自ら北村に湯のみを差し出し、おかわりを要求した。いい気になってどんどん酒を飲んだ。

しかし、酒を飲み過ぎると酔っ払ってしまうということも、糸子は初めて知った。ついには、座敷で酔いつぶれてしまった。

次に気づくと、夜道を父(小林薫)に背負われて、眠りながら家に向かっている錯覚を覚えた。自分が33歳の大人だと理解する一方、それこそが幻覚で、自分は子供のままなのではないかという不思議だけれど心地よい気分になった。

翌朝、目を覚ますと自宅の店の中だった。昌子(玄覺悠子)や千代(麻生祐未)に起こされるが、ひどい二日酔いだった。
糸子の頭痛に構いもせず、昌子はガミガミと小言を言った。33歳にもなって、よその男に背負われて帰ってくるとは情けないというのだ。知らない男に頭を下げた自分たちの恥ずかしい気持ちを想像しろといって怒るのだった。

千代に聞いてみても、誰が糸子を送ってきたのか判然としなかった。ただし、千代が言うには、何を言っているかわからない言葉を使う人だったという。
それを聞いて、糸子は周防に思い至った。その瞬間、カッと恥ずかしくなった。もう二度と彼の顔は見れないし、できることなら一生会わずに済ませたいと思うのだった。

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今日は、終始コメディタッチで気持よかったです。
明るく愉快に、新しい登場人物たちの紹介が行われました。

女の名前なのに仕事のできるキレ者の松田(六角精児)、権力者だが威張るでもなく糸子を尊重する組合長・三浦(近藤正臣)、無礼でクセもあるが何かをやりそうな男・北村(ほっしゃん。)、朴訥としているが糸子の興味を引く周防(綾野剛)。
一気に4人出てきたのだが、それぞれの特徴がよくわかる回でしたし、それぞれがちゃんとドラマの世界観に馴染んで登場したのが良かったですね。

ところで、ラストの糸子のアップ(二日酔いでありながら、周防に世話になったことを知って恥じ入る表情)が、田中裕子のように見えましたね。あの、「ちょっと困った顔」系統。

あと、出演者のテロップに「要冷蔵」という役者さんが出てきて笑った(読みは「かなめれいぞう」)。組合事務職員の役かな?

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