NHK『カーネーション』第107回

明日(10日金曜日)のNHK『あさイチ』のプレミアムトークのゲストは尾野真千子であることをお知らせし、さすがにそっちのまとめ記事までは手が回らないので、各自に録画を推奨する当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第107回目の放送を見ましたよ。

* * *

第19週「自信」
糸子(尾野真千子)の自信は揺らいでいた。

糸子は自分のデザイン・センスが優れていると思い込んでいた。ウェストが締まっていて、スカートがフワリと広がるデザインこそ女性を一番美しく見せる型だと信じて疑わなかった。北村(ほっしゃん。)との共同事業でも、そのデザインの既製服を売ることを強行に主張した。結果、すでに大量の製品を作った。

しかし、糸子の思惑とは異なり、すでに岸和田にも新しい流行の波が押し寄せていた。
近頃では、オハラ洋裁店に来る客のほとんどがサック・ドレス(筒状で、腰のくびれがないデザイン。「袋」の意)を注文するようになった。みな、流行に乗り遅れないようにと、雑誌の切り抜きを持参してやってくる。糸子は客の注文には愛想よく応じるが、内心では完全に打ちのめされていた。

ある日、いつものように北村が夕食を食べに来た。
普段は自慢げに商売の話を吹聴する北村が、今日に限っては関係のない話ばかりしていた。糸子のデザインした洋服が冗談にもできないほど売れていない様子が伝わった。糸子はますます塞ぎこんでしまった。
食後、北村とふたりっきりになって、やっと仕事の話になった。北村によれば、幾つもの問屋を回ったが、流行遅れのデザインを引き取ってくれる所はほとんどなかったという。すでに作ってしまった洋服は丸損だという。糸子は自分の責任を感じ、全て買い取ることを申し出た。しかし、北村も男らしさを見せようとそれには応じなかった。糸子は生地代を負担していることもあるし、今回は互いの痛み分けにしようと言って断った。

糸子が辛かったことは、服が売れなくて経済的損失を受けたことではなかった。サック・ドレスの良さがわからないことが辛いのであり、流行に鈍感になっている自分をひどく恥じた。一から勉強して出直すから許してくれと言って、北村に対して深く頭を下げた。
いつもとは様子の違う糸子に北村も戸惑った。後は、ふたりとも無言で酒を飲み続けた。

夏休みになって、直子(川崎亜沙美)が帰省することになった。その時に、同級生の男の子3人(斎藤: 郭智博、吉村: ドヰタイジ、小沢: 野田裕成)を同伴すると連絡があった。良い意味で若い男が大好きな小原一家では、総出で歓迎の準備が始まった。特に千代(麻生祐未)が猛烈に張り切り、到底食べ切れなさそうな量の料理を作った。
到着した3人はいずれも好青年で、糸子をはじめ小原家一同に大歓迎された。

しかし、家族を驚かせたのは直子の豹変ぶりだった。
緑色のシャツに紫色のパンツを履き、顔には真っ赤な口紅と真っ黒なアイラインを引いたケバケバしいド派手なメイクをしていた。糸子にも一瞬誰だかわからなかったほどだ。食事する様子も、まるでお化けの食事といった風情だった。
あまりの奇抜さに、誰も直子の格好について口を挟むことができなかった。

男の子たちの話によれば、学校で最新技術として立体裁断を習っているという。立体裁断とは、人体に直接布を当てて採寸しながら裁断する方法であり、ピエール・カルダンなどパリのデザイナーの間では主流の手法だという。一方、日本ではほとんど誰も取り入れていないという。そういった情勢も言葉も知らない糸子が、我流で立体裁断を身に付けたと聞いて、彼らはそれを習いたいという。
自分の技術を褒められて、糸子はいい気分になった。すぐに実演してみせた。男の子たちは熱心にメモを取りながら見学した。

その時、直子だけは少し距離を起き、複雑な表情で母の様子を眺めていた。

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なんか面白い。何が面白かったのか具体的に言語化して上手に表現はできないけれど、面白かった。たたみかけるような勢いが戻ってきたという感じだろうか。

まとめ記事からはカットしたが、直子が一人でデッサンするシーン。
卵をモチーフにしながら、だんじりやミシンなどのイメージを重ねあわせて絵を書いていく。さらに様々なイメージが直子の頭の中に浮かび上がり、彼女が何かを掴みとる。
そして、次のシーンに登場するとき、直子の装いが完全に変化したわけです。

セリフや劇的な出来事などのない抽象的なシーンだったため、まとめ記事に書きにくくて割愛したのですが、印象深く象徴的なシーンでした。
そのシーンを見ている瞬間は、「なんだこの、ちょっと前衛芸術っぽいシーンは?」などとしらけてしまったのですが、放送が終わってふと振り返ると、そのシーンばかりが頭にこびりついているという不思議なシーン。

故にここに記しておく次第。

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