朝倉かすみ『少しだけ、おともだち』

短篇集。
そのうちのひとつ『C女魂』は、著者が「3.11小説」だと宣伝していた。

どれどれと思い、興味を持った。

朝倉かすみは今年知った中で最大のお気に入り作家なのだが、文庫化されたものしか買ってなかった。しかし、今回これをどうしても早く読みたくて、ついに単行本で買った。本棚で他の文庫と揃わなくなるのは残念だが。
あと、帯の応募券を貼って送ると抽選で手ぬぐいがもらえるとのことで、それも目当てだったわけだが。

書名にあるように、短篇集のテーマは「おともだち」。
その割には、仲がいいんだか悪いんだか微妙な関係や、表面上は親しく付き合っているけれど心の中ではちょっとウザったく思っている話やらのオンパレード。ひらがなで「おともだち」と記されたほのぼのムードとは若干距離がある。
それでいて、お友達のことをおともだちらしく思わないでいることを申し訳なく思い、心苦しく感じている人物たちがたくさん出てくる。そんな微妙な「少しだけ」遠い感じが主題。
そういう意味では、絶妙な書名。

さて、3.11小説である『C女魂』。
登場人物が震災の被害に遭うという内容ではなく、震災後に「自分にできる何かをしたくなった」少女たちの物語。はじめは善意で始めたことなのに、いつの間にか歯車が狂ってきて、目的と手段が入れ替わるというプロットが面白い。

僕はその言葉のオリジナルを詳しくは知らないのだが、「地獄への道は善意で敷き詰められている(The road to hell is paved with good intentions)」を思い出す。一人ひとりは本心から善いことをしているはずなのに、気付いたら酷い結果になっていたという悲劇を描写した言葉だ。たとえば、被災地では飲料水がなくて困っているそうだから他の地域からミネラルウォーターを送ってやろう!みたいな運動が起きたんだけど、そのせいで全国的に品不足になって難儀した例とか。
それを思い出せば、『C女魂』は確かに3.11小説。日本社会を風刺しているように読めて面白い。

ところが、面白かったはずなのに、どうもその話の着地点がうやむやで、いい子ちゃんすぎるように思えた。
もっとドロドロ書いてくれても良かったのに。冒頭作「たからばこ」くらいの後味の悪さがあっても良かったのに。

【追記】
「地獄への道は善意で敷き詰められている(The road to hell is paved with good intentions)」について。
Wikipedia 英語版によれば、12世紀のフランスの神学者ベルナルドゥス(日本語版wikipedia)の言葉にルーツがあるらしい。

あと、アンサイクロペディア(wikipedia のパロディサイトで、ジョークばかり書いてある)には「地獄への道は善意で舗装されている」という項目がちゃんとある。

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