今夜の飲み代は土間土間1000円、国境なき医師団1000円

今日、初めて会った人と土間土間 成城学園前店に行った。
初めて会った人とその場で意気投合して居酒屋に行くなど、若い女の子だったらフシダラだと後ろ指をさされるところであろうが、幸か不幸か、当方はおっさんであるのでそうなる心配はない。当方はオッサンだからいいとしても、問題は一緒に行った相手だ。相手が若い女の子だったら、その女の子はフシダラだと糾弾されるかもしれないし、若い女の子をたぶらかす当方もケシカランとお叱りを受けるのかもしれない。
しかし、安心して欲しい。当方の他には、オッサン2人と一緒に飲みに行ったに過ぎない。

僕は車で出かけていたので、アルコールは飲まなかった。残りの2人はビールに目がないということで、生中ジョッキをそれぞれ5杯ずつくらい飲んでいた。ふたりはビールさえあればツマミなどの固形物は特に必要がないとのことだった。僕は烏龍茶をチビチビとすすりながら、夕食として焼ホッケやら卵焼きやら野菜サラダやらをモリモリ食べていた。

僕は一人だけノン・アルコールだったけれど、つまらないとは思わなかった。今日はじめて知り合った3人というのが、一級建築士と文学博士と電話屋さんだという奇妙な組み合わせであり、仕事の話の噛みあわなさったらなかった。しかし、あまりの噛みあわなさってのが意外にも愉快であった。僕は少しも酔っていないのに終始笑っていたし、彼らも上機嫌だった。いい夜だった。

3人の飲み代は合計で5,880円だった(クーポン利用で1,000円割り引かれている)。ひとりあたり2,000円でなんの文句もない。僕は彼らより先に2枚の千円札をテーブルの上に置いた。

小さな騒動が起きたのは、その時である。

彼らは、烏龍茶の単価よりもビールの単価の方が高いと申し出た。しかも、僕は烏龍茶を2杯しか飲んでいないのに、彼らは高い飲み物であるビールを5杯も飲んでいる。当然、割り勘額に傾斜を付けるべきだと言うのだ。ビールを飲んだふたりが2,500円を負担し、僕は1,000円だけの支払いで良いという。僕の出した千円札のうち1枚が突き返されてきた。

「いやいやいやいや。飲み会の割り勘というのは、各人の摂取した飲食物の単価や量に比例するものではなく、共有した場所や時間、経験に対して対価を支払うものだ。3人とも同じように楽しんだんだから、その経験に対して均等に2,000円ずつ負担しよう」
当方はそう反論した。しばし押し問答。

結局、千円札は僕に押し戻されて決着した。
しかし、僕もその千円札をポケットにしまうにはどうもバツが悪かった。

「よーし、わかった。オマエらがその気なら、俺にも考えがある。俺は絶対にこの千円札を受け取らない。だから、この千円札はすぐさま募金箱に入れてやる!それでいいか?オマエたちふたりが500円ずつ取り戻すなら、今がラストチャンスだぞ。いいか?いいのか?募金しちゃうぞ?」

ところが、彼らは頑として受け取ろうとしなかった。そして、完全に引っ込みのつかなくなった僕は、指先で千円札をつまんで、彼らの目の前でユラユラさせながらレジに向かった。そこに募金箱があったら即座に突っ込もうと思った。
しかし、土間土間 成城学園前店のレジには募金箱がなかった。

3人で店を出て、駅に向かった。ふたりにはもう一度募金していいか確認した。良いという。それなら、途中でコンビニに寄ろう、コンビニならたいてい募金箱があるだろうという話になった。
しかし、我々の道中にコンビニはなかった。

そのまま小田急線の改札をくぐった。彼らと僕は電車の方向が逆だった。僕は千円札をつまんだ手を振って、ふたりに別れを告げた。
一人でホームに降り、さすがにいつまでも千円札を握っているのも奇妙な姿だろうと反省した。とりあえず、財布にしまった。

不思議なもので、さっきまでは自分のものではないと思っていた千円札が、財布に入れた途端に急に惜しくなった。あのふたりとは、たぶん一生会うこともないだろうし、たった千円のことなんて3日もすれば彼らは忘れてしまうだろうから、募金うんぬんはウヤムヤにしてしまおうかと思った。千円あったら、帰りにラーメンが食える。実はちょっと居酒屋で食い足りなかった。

そんな感じで、ラーメンの誘惑にクラクラと来た当方は、その1000円をこういう形で処理した。
一度取り出した千円札と、一旦口に出した約束は引っ込めるのが難しいものだ。

国境なき医師団へ1000円の寄付

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