誤算のおかげで楽しい一日

今日は、会社の美人人妻さんと新宿で飲んだ。というのも、その美人人妻さんが
「私の親友が山瀬まみに似てると思うんだよね。ぜひとも木公くんに引き合わせたい」
などとおっしゃってくれたわけです。そんなわけで、逆いきものがかり状態(古い人は、逆旧ドリカム状態などと言う)状態で面白おかしく飲んできたわけです。

しかし、その前後には色々な紆余曲折があった。

まず第一に「眼科休診事件」がある。

当方は、円錐角膜という目の病気を有している。どんな病気かということはwikipedia の解説を見ていただければ詳しいわけだが、そこに載っている写真があまりにキモすぎるので、閲覧することはお勧めしない。
まぁ、とにかく、当方が円錐角膜という特殊な目の疾患を有しているということで今後の話を読んでもらいたい。

この円錐角膜というやつはなかなか厄介で、視力回復をしようと思ったら角膜移植をするかハードコンタクトレンズを入れるしかない。当方は角膜移植するほどの勇気がないので、ハードコンタクトレンズでなんとかやりくりしている。しかし、今使っているレンズが8年物なので、さすがに交換しなくてはならない。そんな訳で、今週の頭に某眼科に行ってコンタクトレンズを新しく処方してもらった。ただし、レンズは特注になるので、後日取りに来いという話になった。そもそも、円錐角膜というやつは特殊なアレなのでそんじょそこらの病院でなんとかなる話ではない。そんなわけで当方は電車とバスで小一時間かかる病院に世話になっている。

今日は土曜日で仕事が休みだし、飲み会の約束があったし、幸いな事に飲み会に行く途中にその眼科があるので、今日の飲み会の前にコンタクトレンズを受け取りに行く事にした。その眼科は土曜日も診察していると知っていたので。
眼科でコンタクトレンズを受け取って、その後飲み会会場である新宿に出ればちょうどいい時間に調整して出かけた。新しいコンタクトレンズになれば視界がクリアになるし、ルンルンと出かけた。

さて、眼科の前に僕は立った。時刻は午後2時。その眼科は1時から2時まではお休みだが、この時間は診察を行なっているはずである。しかし、病院のドアは閉ざされたままだ。どういうことだろう。休み時間が長引いているのだろうか?時期に開くだろうと思い、僕は5分くらい病院の前に佇んでいた。
しかし、少しも病院が開く気配はない。病院に掲げられている看板をためつすがめつ眺めたのだけれど、確かに2時から診察が行われるはずである。おかしい、おかしすぎる。
でもって、看板の隅々まで見たら「祝日休診」と書いてある。あ、今日は文化の日で休診なんだ。ひでぶ。

失意のまま、僕は新宿の飲み会会場に向かった。
飲み会は楽しかった。楽しかったけれどオフレコの話のオンパレードだったので詳細は省く。

でもって、当方の最寄り駅の小田急・本厚木駅まで帰ってきたと思いねぇ。
本厚木行きの電車に乗りつつ、家まで行くバスの最終便の時刻をネットで調べた。電車が駅につくのが23:48で、バスの最終が土曜日の場合は23:50だ。ホームから猛ダッシュすればギリギリ間に合う時間だ。果たして、僕は23:49にバス停についた。待ち行列の2番めだ。無事に座席も確保できそうだ。

けれども、10分待ってもバスが来ない。バス停に並んでいる人たちもそわそわしだした。先頭に並んでいる人が僕に話しかけてきた。
「50分のバスを待ってるんですよね?こんなに遅れるなんてオカシクないですか?」
僕は、全くそのとおりだと答えた。三浦しをんの『まほろ駅前多田便利軒』でダイヤが乱れることをボロクソに書かれている某バス会社なのだが、ここまで遅れるのは異常事態だ。いったい何が起きたのだろう。

先頭に並んでいたおじさんと、もう一度時刻表を確認した。
僕がバス停に着いたのは23:49。土曜日の最終バスの時刻は23:50で間違いがない。
ふと日曜・祝日の終バスを見た。そこには、23:31が最終だと書いてある。

ふーん。ふーん・・・。あ!!!!
今日は文化の日だ!祝日ダイヤだ!僕がバス停に着いた時刻の(49分)の18分前(31分)に終バスが出ているではないか!

その瞬間、バス停に並んでいた8人の間に動揺が広がった。僕らは家に帰れない。

しかし、そこは困った者同士の結束だ。みんなでタクシーの相乗りをしようということになった。
僕が率先して声をかけたら、40代のサラリーマン風2人が応じてくれた。しかしタクシーにはもう一人乗れる。誰か割り勘にのってくる人はいないか。

ふと見ると、二十歳前後の学生風情が乗りたいような、遠慮するような素振りをしていた。そこで彼に声をかけた。家の場所を聞くと、僕の家から10分以内の地区に住んでいる。好都合だ。
しかし、彼は言う。
「僕は今日は持ち合わせがないんです。タクシー代が払えないので、2時間かかるけど歩いて帰ります。」

それを聞いて、僕たちアラフォー3人衆は情にほだされた。
「いいよ、いいよ。黄身が乗っても乗らなくても、僕たちの支払額は同じなのだから相乗りして行き給え。そのかわり、君がいつかお金を稼ぐようになって、今夜と同じような状況になったら、僕らにお金を返すと思って自分よりも若い人のタクシー代を払ってあげたまえ」
そういう風に話がまとまった。

家が一番遠いのは僕なので、僕が最終的に支払いをすることになった。しかし、僕も家までタクシーに乗るのは初めてなので、いったいいくら位かかるかわからない。けれども、「だいたい3000円くらいだろう」ということで話がまとまり、アラフォー3人で1000円ずつ負担することになった。

1人めの人が降りた時点でメーターは1250円くらいだった。彼が一人でタクシーに乗った場合に比べて、安上がりだった。よしよし。
2人めのアラフォーと学生風情は家が近所だとのことで、同じ所で降りた。その時点でメーターは3200円くらいだった。この時点で予想金額より高くなってしまったが、まぁ誤差の範囲である。僕はふたりを笑顔で手を振って送り出した。
彼らの家から僕の家は、実は近い。そんなわけで最終的な料金は3500円と相成った。当初の予算よりは500円オーバーだが、僕の負担額はたったの1500円だ。バスに乗れば(深夜料金で)660円かかることと比較すれば、タクシーでラクラク帰ってこれたのでそれだけの価値がある。喜んで支払った。

タクシーに乗りながら、ご近所さんとはいろいろな話をした。
そのおじさんはうちの近所をジョギングコースにしているという。
「いつかジョギング中に会えると楽しいですね。それを楽しみに今夜は別れましょう」
と約束した。

一期一会だけれども、とても楽しい夜であった。

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