フジ『北の国から』第13回

留守にしていたせいで放送に4日ほど遅れをとってしまい本作についてはもう追いつく見込みはなくてしょんぼりしているし、『おしん』の方に関してはもう全く余裕が無いので諦めようかとまで思いつめた当方が、BSフジ『北の国から』の第13回を見ましたよ。

* * *


1981年(昭和56年)5月。
螢(中嶋朋子)は山でフキノトウを採り、野鳥やキツネ、満開の桜の様子などを見て春の到来を感じた。

一方、その日の朝、純(吉岡秀隆)は雪子(竹下景子)と共に東京へ旅だった。令子(いしだあゆみ)が病気で入院したというので、見舞いに行くことにしたのだ。螢は学校があると言って来なかった。純は金曜日に東京に来て、翌火曜日に帰る予定であった。

令子は、純が突然現れたことに驚きつつも、大いに喜んだ。純の滞在が短いと聞きつつも、相好を崩した。

一方の雪子は、令子の入院している病院の雰囲気を訝しんだ。あまり大きくはない病院だからだ。その上、令子は胆石で入院したはずなのに、レントゲン検査してみると何も写らなかったのだという。令子は、神経性のもので心配はないと笑って答えるのだった。

美容室の従業員が、入院中の令子の身の回りの世話をしていた。彼女は雪子にこっそりと事情を話した。
令子の病気の原因は分からないが、ひどい痛みを伴っているという。苦しむとモルヒネを投与するという対処療法しか行われておらず、入院してからもひどくなる一方なのだという。もっと大きな病院で精密検査を受けた方が良いと勧める人もいるが、令子は聞く耳を持たないのだ。それというのも、令子の恋人・吉野(伊丹十三)が紹介した所だから。吉野の上司の親戚の病院であり、彼の立場が悪くなるのを懸念して転院しないらしいのだ。
雪子は、令子に転院を勧めた。しかし、やはり令子は何かと別の理由を述べて、ごまかすのだった。すると、薬の切れた令子は痛みに苦しみ始めた。すぐに医師が呼ばれ、注射を打たれると眠ってしまった。純は、そんな母の様子にショックを受けた。

その夜、雪子は東京の友人を訪ねた。彼女は元看護師で、夫は勤務医である。彼女に令子の状況を相談したところ、やはり転院を勧められた。砂のように小さい胆石は発見が難しいので、大きな病院できちんと検査した方が良いという意見だった。彼女の働いていた病院でも、似たようなケースがあり、その患者は痛みに苦しみながら死んでいったのだという。彼女の夫は、令子の受け入れ体制を整えてくれた。
令子の件が落着すると、話は雪子の恋人の方へ向かった。雪子が北海道で暮らし始めた理由は、現地に新しい恋人ができたせいであろうとカマをかけられた。雪子は何も答えなかったが、脳裏は草太(岩城滉一)のことでいっぱいになった。

純と雪子は、令子のアパートに滞在することとなった。そのアパートは、黒板家が以前に住んでいた場所から近かった。
雪子が知人を尋ねて留守の間、純は東京時代の同級生・恵子(永浜三千子)に会いに行った。彼女は英語塾に通っているというので、それが終わるまで教室を覗くことにした。ところが純は、恵子の姿が見れた喜びよりも、自分が取り残されてしまったショックに苦しめられた。以前、純よりも出来の悪かった友達が、今では見違えるようにスラスラと英語で受け答えしていた。たった半年の間で、自分がひどく遅れてしまったと思った。辛くなり、その日は恵子に会わずに帰ってしまった。

翌日の土曜日の朝、純は登校途中の恵子を待ちぶせた。恵子は純の姿を見るなり、再会を喜んでくれた。それが純には嬉しかった。放課後、恵子の他、懐かしい友だちが数人集まった。
けれども、純は彼らの話の輪に入れなかった。彼らは最新のテレビや音楽の話で盛り上がっているのだが、それらの情報から隔離されている純には何もわからないのだ。隅で一人でヘッドフォンをつけて音楽を聞かせてもらっていた。不意に、北海道の野生動物の話を聞かれた。純は、ここぞとばかりに、ホラを吹いた。リスやキツネはもちろん、クマを間近で見ることも日常茶飯事だなどと言ってしまったのだ。東京の友達たちは感心して聞いてくれたが、純は終始傷ついていた。自分がすでに東京の人間ではなくなってしまっていることが悲しかったのだ。

その後、純は令子の病室に向かった。そこでは雪子と令子が言い争いをしていた。勝手に転院の準備を進めた雪子に対して、令子が腹を立てているのだ。令子は決して承諾しなかったし、吉野に話したら許さないと声を荒げた。
その時、ちょうど吉野が見舞いに現れた。令子は、純に対しては吉野のことを高校時代の友人だと紹介するに止めた。吉野は気さくに馴れ馴れしく、純に話しかけた。純は、吉野のことが気に食わなかった。特に、自分の母のことを名前で呼び捨てにしていることが特に気に入らなかった。

翌日曜日。
病院に行こうとしていたら、アパートへ電話がかかって来た。吉野が純を映画に連れて行ってくれるという。純は吉野と一緒に出かけることなどごめんだと思ったが、子どもなりに気を使って大げさに喜んでみせた。純は渋々出かけていった。映画は『宇宙戦艦ヤマト』だった。昨日、東京の友達たちが見たいと言っていた映画だ。彼らより先に見れることで鼻が高い思いがした。ところが、アニメ映画に退屈した吉野は眠りに落ちてしまい、大きないびきをかきはじめた。いくら揺すっても起きないし、周囲の観客からは白い目で見られるので、純はいたたまれなくなり映画の途中で席を立ってしまった。

その後は、遊園地に連れて行ってもらった。吉野は、ジェットコースターなどに付き合って乗ってくれた。
遊園地には、パンチングマシンがあった。拳で殴りつけると、その威力に応じた評価がなされる遊具だ。純が挑戦するも、ほとんど最低の評価しか得られなかった。不良たちがやって来て、純をバカにして見せつけるように殴りつけた。すると、かなりの好成績が得られた。純は感心した。
その様子を見ていた吉野が、自分も挑戦しようと進み出た。不良たちからは、「おじさんがやっても怪我をするだけだ」などとバカにされるが、吉野は無言で挑んだ。すると、不良たちの成績を越えたのはもちろん、パンチングマシンの最高評価を獲得した。不良たちは目の色を変えて吉野を称えた。

はやし立てる不良たちを尻目に、吉野はほぼ無言で立ち去った。唯一、ボクシング経験があるのかと問われ、「真似だけな」と答えるに留まった。純は、吉野のその一言に惚れた。実力者なのに、クールに謙遜する態度がとてもかっこよく見えたのだ。たとえば、同じくボクシングの練習をしている草太なら、軽薄な表情で聞かれもしないことまでベラベラと話すことだろうと想像された。それとは全く違う吉野の様子が素敵に思えた。

それでも、純は自分が吉野のことを気に入り始めたことを表に出すことははばかられた。
食事をしながら、令子や純自身の今後の事を聞かれたが、素っ気ない喧嘩腰の口調で答えた。自分は数日のうちに北海道に帰るので、あとは吉野にすべて任せると言うのだった。
ところが吉野は引き下がらなかった。男が一人でいることと、女が一人でいることはそもそも意味合いが違う。そうであるにもかかわらず、黒板家では令子だけを一人ぼっちにして、父がふたりの子どもを連れて行ってしまった。それは不公平だと言い、純が東京で令子と共に暮らすべきだと説得した。
純は、母には吉野がいると指摘した。純は、令子と吉野の交際については知らんぷりをするつもりでいたが、つい勢いで口走ってしまった。吉野がもう二度と令子に会わないと約束するなら、自分は母と一緒に暮らすと言い加えた。吉野は、それについてはどうなるかわからないと答えた。わからないことについては約束できないと、理路整然と答えた。
純は、大人相手にすごい話をしていると思った。吉野が令子と結婚する気でいることもわかった。一方で、もう吉野のことは嫌いではなかった。

その後、純は一人で令子の病室に来た。吉野のことを聞かれ、純は楽しかったし、良い人だったと答えた。令子は純のためにガンダムのプラモデル(1/60; 当時2,500円)を用意しており、純は大喜びした。ただ、それと引き換えのように、令子は純が本当に北海道へ帰るつもりかと聞くのだった。純はプラモデルに熱中するふりをして何も答えなかった。

直後、恵子が見舞いに来てくれた。ふたりで外に遊びに出かけた。
恵子も純が北海道に帰ることを残念がった。一人ぼっちになる令子もかわいそうだと付け加えた。恵子と彼女の母は、純が自宅に下宿してもいいと相談していると打ち明けた。父は外国に単身赴任しているし、兄も大阪に下宿している。母子2人きりで寂しいので、純の居候は大歓迎なのだという。なんなら、令子が退院したら一緒に住んでも良いと言うのだ。令子は美容室の仕事で忙しいから、家事の負担が減るのは嬉しいはずだと述べた。

純は北海道に帰ることを迷い始めた。
夜、雪子に正直に相談した。母のことが心配になってきたこと、吉野に父だけが子どもを引き取ることは不公平だと言われたことなどだ。そして、自分は答えを保留しておきたいのだが、一度北海道に戻って五郎(田中邦衛)の管轄下に入ってしまうと、他の選択肢は全て奪われてしまうのではないかと心配しているのだ。もちろん、五郎や螢と話し合う必要はあることも理解しており、純一人ではどうしていいのかわからなくなってしまったのだ。
結局、雪子に思いを打ち明けても、結論は出なかった。

その頃、麓郷では中畑(地井武男)が五郎を訪ねてきていた。中畑は、東京に言った純のことを案じていた。母や東京に未練のある純のことだから、令子に東京に残ってくれと泣きつかれたら帰ってこないだろうと言うのだ。それに対して五郎は、その時は仕方ないと一言寂しそうに答えるだけだった。

道端で花を摘み、学校から機嫌よく帰ってきた螢は、戸外からふたりの話を盗み聞いてしまった。螢は楽しい気分がいっぺんで台無しになってしまった。
* * *


このドラマの主人公は誰か?って話だよね。
群像劇であり、家族の物語だから、特定の一人が主人公ってことはないのかもしれないけれど。けれども、全編を通して純(吉岡秀隆)のモノローグが出てくるから、彼が主人公だとみなすことはあながち間違っていないはずで。
それでもやっぱり、父である五郎(田中邦衛)が一番の影響力を持っているし、俳優としても吉岡秀隆よりは知名度もキャリアも上だし、出演者テロップでも一番最初に出てくるし、彼が主人公だと見るのが素直かと思われ。

ところが、今回の話では、ラストのワンシーンにしか五郎が出てこなくて、ちょっとびっくり。いや、東京での話がメインだからそれも必然なんだけど。ていうか、正直、出演シーンがなくても良かったくらいの展開。むしろ「えーっと、ほら、やっぱり、一応主人公は1話に1回くらい出てこないとアレじゃない?やっぱさぁ・・・」みたいなアリバイ的なシーンにしか感じられる、なかった方がよっぽどスッキリと後味が良かったと思うのに。

そして、吉野役の伊丹十三が初登場。彼のことは、しばらく前までは「『お葬式』とか『タンポポ』とか変な映画を撮るかわった映画監督だなー」くらいの認識しかなかったのだけれど、クールでダンディな良い俳優でもあったんだなぁと認識を新たにするわけです。



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