フジ『北の国から』第16回

「『おしん』の方はまとめ記事を書くどころか、録画を消化する余裕もありません」と弱音を吐くと同時に、「このドラマは俺の青春時代とかぶるから捨ててはおけないんだよ!」と強く主張する当方が、BSフジ『北の国から』の第16回を見ましたよ。

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杵次(大友柳太朗)が橋から転落死した。
孫の正吉(中澤佳仁)以外の親族はみな麓郷を離れ、札幌や旭川に暮らしている。集落の者達が総出で葬式の準備を手伝った。

正吉以外の子供たちはいつものように登校し、通常の授業が行われた。ただし、純(吉岡秀隆)は勉強が手につかず、杵次のことばかり思い出していた。昨日の杵次は一日中酔っていた。泥酔したまま父兄参観に現れ、夜に純の家にふらりと現れた時もかなり酔っていた。18年間飼っていた馬を手放したことが杵次にはかなり堪えたのだろうと想像できた。

放課後、純や螢(中嶋朋子)、凉子(原田美枝子)は正吉の家に行った。すると、しばらく前から正吉の姿が見えないと言って騒ぎになっていた。大人たちは葬儀の準備があるため、正吉を探してばかりもいられない。純と螢、涼子が探しに行くことになった。
手がかりは全くなかったが、螢には心当たりがあった。螢について行くと、森の奥に大きな木があり、その上に小屋が備え付けられていた。その中で正吉がうずくまっているのが見えた。涼子が登り、男の子なのだからしっかりしろと厳しく声をかけるのだった。

通夜の間、純と螢は家で留守番をしていた。
純は、木の上の小屋を螢が知っていた理由を問い詰めた。すると、純が東京に行っている間に杵次に連れてきてもらったことがあるのだという。寂しくなったら、ここで一人で泣くといいと言って教えてくれたのだ。それで、正吉がいると思ったのだという。ただし、杵次から秘密にしておくよう命じられていたので、今まで純には教えなかったのだという。

通夜は杵次の家で行われた。久しぶりに麓郷へ帰ってきた杵次の息子たちは、通夜というよりは同窓会にでも来たかのように、古い知り合い達と愉快に酒を酌み交わしていた。草太(岩城滉一)のボクシングの試合日程が決まったと聞くと、みなで応援し盛り上がった。会場の隅にいる草太の父・清吉(大滝秀治)に対しても、自慢の息子で羨ましいなどと声をかけるのだった。

しかし、清吉はその場の雰囲気に溶け込めず、居心地が悪かった。そっと母屋を抜けだして、馬小屋を見に行った。昨日の朝まで使われていた馬小屋には、売られた馬の痕跡があちらこちらに残っていた。五郎(田中邦衛)も馬小屋に現れ、前夜の杵次の様子を話した。そして、酔った杵次を自転車で一人で帰してしまったことを悔いた。
清吉は杵次の馬について話した。あの馬が最後に活躍したのは、遭難した純と雪子(竹下景子)の乗用車を見つけた事件だ(第10回)。家畜馬は機械や車に活躍の場を奪われたというのに、その車を助けることが最後の仕事だったとは皮肉なことだとつぶやくのだった。

そこへ、やっとみどり(林美智子)が帰ってきた。馬小屋にいた五郎と清吉が出迎えた。
みどりは、息子の正吉を杵次に預け、自分は旭川の飲み屋で働いているのだ。しばしばアパートに帰らないことがあり、居場所が掴めないことも多い。あいにくこの日もなかなか連絡がつかず、杵次の訃報を知らせるのが遅れたのだ。
みどりはサバサバした表情で、「いつかこうなると思っていた」と五郎に一言漏らすのだった。

翌日、杵次は焼かれた。杵次の家ではごちそうが振舞われ、弔問客が集まった。
純は生まれて初めて葬式に参列した。しかし、想像していた葬式とは全く様子が違うので面食らった。泣いている人はおらず、祭りの晩のように誰もが楽しそうに騒いでいるのだ。
純は正吉を話した。正吉によれば、杵次は五郎のことを良い奴だと言って褒めていたのだという。また、樹上の小屋は、みどりが家を出て行った時に杵次が作ってくれたということを教えてくれた。正吉が寂しがって泣くと、よく杵次が連れて行ってくれたのだという。

母屋では、杵次の息子たちが父の悪口を言い合っていた。杵次がみなに嫌われていたせいで、自分たちも散々苦労したというのだ。しかも、最近は土地の境界をごまかしたといって、裁判にもなっていた。大胆に奪うならまだしも、ほんの1尺(約30cm)ずつ杭を動かして徐々に侵食するというケチな盗み方だったという。みなでバカにして笑い合っていた。

それを隅で聞いていた清吉が口を挟んだ。
息子たちは杵次の気持ちを少しも分かっていないと言い、食って掛かった。杵次はこの辺りの土地の開墾を行った立役者だった。しかも、現代のような機械やエネルギーも無い時代にそれを行ったのだ。大きな石や木の根に阻まれ、ほんの少しの土地を拓くのにも多大な時間がかかった。そういう苦労をした人間の土地に対する執着心や大切さを分からない人間が軽々しい口を聞くなと言うのだ。
場がしらけた。

息子たちは話題を変えた。馬の話になった。いつまでも手元に置いて売りどきを逃したから、安く買い叩かれたに違いないなどと言って、またしても杵次をバカにした。
清吉はもちろん黙っていなかった。昔の杵次は「仏の杵次」と呼ばれるほど尊敬される人物だった。それが、晩年はケチでズルいと悪評ばかりになってしまった。その理由は、家族や集落の住人たちが杵次の多大な苦労や功績を忘れてしまい、尊重することをしなくなったからだと主張した。人はみな杵次の苦労を忘れたのに、馬だけは分かち合った苦労を忘れていなかった。そんな無二の相棒である馬を手放した杵次の気持ちを考えろ。そこまで言うと、清吉は涙を流し、言葉に詰まってしまった。
場は完全に冷えきってしまった。いたたまれなくなった草太は、清吉を抱えて家に帰ってしまった。

純と螢は五郎を残して先に帰った。純は、その晩ずっと清吉の言葉が脳裏に焼き付いていた。馬を手放した時の杵次の心情を思うと胸が苦しかった。

いつしか眠りについた順だったが、夜中に目を覚ました。2階の寝室から1階を覗くと五郎が帰宅していた。そして、純の隠し持っていたヌード写真集をストーブの火で焼いているのが見えた。純は自分の隠し事が全てバレてしまったことを悟った。
純は降りて行き、五郎に向き合った。そして自分が病気になったと告白した。女性が気になり、胸や足、尻などから目を話すことができなくなった。頭が狂う病気になったと真剣に話した。女性のことを考えたり、朝起きた時に陰茎が勃起しているという症状も訴えた。
五郎は一瞬驚き、次に微笑ましく思った。しかし、すぐに真剣な表情を浮かべ、純によく話して聞かせた。純の訴える症状は全て正常なことで、大人の男なら誰でもそうなると説明した。ついに純が一人前の男になったといって祝福した。そして、これからは純を一人前の男として扱うし、純も一人前の男として恥ずかしくない振る舞いや働きをしろと説いた。純は納得し、自分の成長を嬉しく思った。

五郎は、これまで純に秘密にしていた計画を打ち明けた。まず、畑を作って作物を作ることを説明した。純は手伝うことを約束した。
続いて、丸太小屋を自分たちで作ると話した。純には、荒唐無稽な話のように思えた。大工でもない自分たちに家など作れるはずがないと思うのだ。しかし、五郎は自信満々だった。その意気に圧され、純もその気になってきた。翌朝、螢にも話してやった。螢も大喜びした。

その日から、早速3人は畑作りを始めた。作業をしていると、夕方にみどりと正吉が食材を持って訪ねてきた。他の親族たちは帰ってしまい、ふたりで寂しいから一緒に夕食を食べようというのだ。楽しい団欒を終え、子供たちは連れ立って外に遊びに出かけた。残った五郎とみどりはふたりで酒を酌み交わした。

みどりと五郎、そして中畑(地井武男)は幼馴染みである。みどりは幼馴染みの存在は良いものだとしみじみ話した。中畑は葬式の準備から後片付けまで、親身になって手伝ってくれたのだという。材木店を営む中畑は、杵次が家に蓄えていた古ぼけた木材も全て買い取ってくれたのだという。みどりはそれにも随分と助けられたという。
五郎は、自分がその木材を譲り受け、丸太小屋を作る計画があると打ち明けた。みどりは、自分の実家にあった材料を使い、幼馴染みが自宅を作ると聞いて、心が暖かくなった。幼馴染みはありがたいと、改めて話すのだった。

みどりは、五郎の別れた妻・令子(いしだあゆみ)のことを聞いた。五郎は嫌がることなく、令子の現状を端的に説明した。原因不明の激しい腹痛で入院していること、五郎以外の恋人がすでにいること、その恋人の縁故の病院に入院しており、そこの評判は悪いのだが、恋人の立場が悪くなることを懸念して転院を断っていることまでを話した。
みどりは、令子のことをいい女だと評した。自分が苦しくても男を立てるいい女だという意味だ。そして、それだけのいい女なら五郎が惚れるのも当然だと付け加えた。

そこまで話すと、みどりは急に立ち上がり、何の前触れもなく帰ると言い出した。正吉を連れ、一目散に帰って行った。

翌日以降、喪中の正吉は学校を休んだ。葬式の後片付けで大変だからといって、純は正吉の家に遊びに行くことも禁じられた。純は素直に言いつけに従った。
そんなある日、涼子先生が正吉は転校したと発表した。前夜遅くに、遠くの町に向けて発ったのだという。涼子は、別れを言わずに去ることを謝るという正吉の伝言を皆に伝えた。
純は強いショックを受けた。慌てて螢と共に正吉の家へ向かったが、すでに戸には板が打ち付けられ、家は無人になっていた。馬小屋には清吉が様子を見に来ていた。清吉は、麓郷にまたひとつ廃屋が増えたと嘆いていた。

その晩、純は夢を見た。正吉と樹上の小屋で楽しく遊んでいる夢だった。夢は楽しいのに、目を覚ますと純の目は涙でいっぱいだった。

5月26日。畑に撒いた大根の種が一斉に芽を出した。8月には収穫できるという。純はとてもワクワクした。麓郷に来てから初めて感じるような高揚感だった。
夜には、中畑らの仲間が集まり、五郎の丸太小屋の計画を話し合った。誰も丸太小屋建築の経験はないが、外国の書物を取り寄せ、図を自分たちで解釈して組み立て方を議論した。大人たちは工作用の木材で模型を作りながら組み方を研究した。出来上がった模型はとても小さかったが、順や螢には夢の様な家に思えた。

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令子(いしだあゆみ)のことをいい女だと言えるみどり(林美智子)もすごくいい女。

幼馴染みっていいね、というみどりのセリフだが、スペシャルドラマまで含めて全て見ると、実はかなりロングパスな伏線というか、ひとつのテーマになってますね。この後、みどりは何度か幼馴染みの縁を頼って登場するし。
それに、何と言っても、純(吉岡秀隆)&螢(中嶋朋子)と正吉(中澤佳仁)も鉄壁の幼馴染み。

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