映画『草原の椅子』

雨にも負けず、『草原の椅子』を観てきた。佐藤浩市が主演だが、その娘を黒木華が演じているからだ。
アニメでおおかみこどもの声をやっていると知れば有楽町の映画館へ行って耳を澄まし、大物俳優ふたりの助演をしたと知ればそのDVDを購入し、演劇で学生運動の活動家として主演すると知れば下北沢の劇場へ行ってじっと目を凝らし、深夜ドラマにゲスト出演すると知ればHDDレコーダーを新調して万全の録画体制を構築する、そういうものである私は当然『草原の椅子』を映画館に観に行ったわけである。

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主人公・遠間憲太郎(佐藤浩市)は大手企業の営業局次長を務めるサラリーマン。妻(若村麻由美)と離婚し、今は大学生の娘(黒木華)とふたりで暮らしている。

遠間は仕事で面白くないことがいくつかあった。重役から主力商品の販売数低迷について責められていた。現場は細く長く売る定番商品と位置づけるべきだと判断していたのだが、上層部は期末ノルマの達成や短期的な売上増を迫るばかりだった。遠間はその板挟みというそんな役割だった。また、彼の部下が業務時間外に居眠り運転事故を起こし、下半身不随となってしまった。会社側は彼を解雇せず他の部署への配置転換する方針だ。彼には妻子があるので、温情をかけるつもりである。一方、本人はカメラの営業に愛着と誇りを持っており、その仕事が続けられないのなら仕事を辞める気でいる。また、彼の妻は、仕事がきつかったせいで疲労が蓄積し、それが居眠りの遠因となったとして会社を訴える勢いであった。会社、部下、部下の妻の3人の言い分を調整するのも遠間の役目だった。

遠間本人は、腹を割って話せる知人もおらず、唯一の家族である娘も大学やアルバイトに忙しくゆっくり話もできない。年頃の娘が心配なので、夜はなるべく家を空けないようにしている。勢い、一人で晩酌をする毎日である。

そんなある夜、取引先のカメラ・チェーン店の社長(西村雅彦)から珍しくプライベートの電話がかかってきた。彼が言うには、全身灯油まみれになって身動きがとれないので助けに来て欲しいというのだ。あまりに突拍子もない不可解なことなので警戒はするものの、遠間は彼のことを放っておくわけにもいかず、家に迎え入れて風呂と衣類を貸してやった。それに感激した社長は、興奮して「親友になってくれ」などとますます奇妙な願いを申し出た。初めは嫌がる遠間だったが、仕事上のトラブルを少しずつ打ち明けるにつれて、彼がとても気の合う友人となっていくのだった。

それと前後して、遠間は街で見かけた陶芸商の女主人(吉瀬美智子)に一目惚れしてしまった。陶芸には全く興味も知識もないのだけれど、彼女と親密になるために高価な作品をいくつか買った。特に男女の仲になろうというのではなく、彼女と会って取り留めのない話をしているだけで遠間は幸せだった。女主人の方も、遠間にとても親切だった。

さらに、遠間の娘が奇妙なトラブルを家に持ち込んだ。バイト先の中年男(中村靖日)の息子(貞光奏風)を数日間預かると言うのだ。ややこしいことに、その子は中年男の妻(小池栄子)の連れ子であり、血のつながりがないのだという。それにもかかわらず、妻は他の男と一緒に家を出て帰ってこないのだという。それに加えて、妻が育児放棄や虐待を繰り返したせいで、息子は発達遅延を生じさせている。
男は子供の世話に困ると職場に連れてくることがある。そこで遠間の娘と出会い、彼女には例外的によく懐いているのだという。男は1週間ほど出張で家を留守にしなくてはならなくなった。そこで、遠間の娘が預かることを買って出たのだ。

遠間は、大学生の娘がよその子供を預かることに賛成できるはずもなかった。しかし、娘の必至の説得に根負けしてしまった。さらに悪いことには、娘はゼミの合宿で留守にしなくてはならないので、遠間が全ての面倒を見る羽目になった。ちょうど連休の時期で、無趣味の遠間は毎日家にいるということまで娘の計算に入っていたのだ。

後に引けなくなった遠間は、親友になったカメラ店社長や陶芸商の女主人の協力を得ながら、トラウマを抱えた子供の世話に奮闘する。

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・・・そんなお話。

原作は宮本輝の同名小説らしい。僕は読んだことないけど。

悪い映画だとは思わなかったが、黒木華が出てなかったら、おそらく僕は見ていなかっただろうと思う、そういう位置づけの作品。
ただし、見たら見たで、退屈せずに楽しめた。

佐藤浩市演じるオッサンの、ゆっくりと進んでいく恋愛は見ていていろいろ参考になった。僕も完全にオッサン世代になったので、これから恋愛することがあったとしたら、ああいうふうに進めていけばいいのかとお手本にすることができる。
そして、相手役の吉瀬美智子の和服姿が清楚で上品で良かったです。この女優さんのことはこれまで完全スルーだったのですが、ちょっと認識を新たにしました。ラストの方で彼女の足の裏が見えるところも、足の裏フェチとしては嬉しいところ。
育児放棄をするほど精神的におかしくなっている母役の小池栄子の芝居もすごかった。目にクマを作って病んでいる表情のメイクがすごい。小池栄子だとは到底同定できない。

そして何と言っても黒木華。この女優さんは素晴らしい、素晴らしい女優は黒木華。ちょっとお芝居に力が入りすぎているような感じがしないでもなかったが、可愛らしい大学生の娘です。こんな娘ほしい。

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