NHK『あさが来た』第60回

昨夜はプッシュベアーズのギタボちゃんとLINEを使って初めて一緒に作詞を行い、僕が曲にのせて歌ったものを録画して送って確認してもらうなどということをしていた当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第60回めの放送を見ましたよ。

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第10週『お姉ちゃんの旅立ち』

炭鉱でみなと一緒に働くあさ(波瑠)は、近頃体調がすぐれない。あさに全く自覚は無かったが、妊娠していたのだ。

亀助(三宅弘城)は早速手紙を書いて大阪へ知らせた。その報せを受けて、家中は大騒ぎになった。あさには子供ができないと思っていた期待が、いい意味で裏切られたからだ。

亀助からの第一報ではすぐに大阪に帰ると書いてあったのに、あさはなかなか帰らなかった。
それどころか、宿舎に機織り機を導入し、外で働けない分を取り戻そうとしていた。亀助や親分の妻・カズ(富田靖子)は体に障ると心配したが、あさは聞く耳を持たなかった。

あさが大阪に帰らないことには理由があった。
反抗的な態度だったサトシ(長塚圭史)が従順になったが、どうやら裏でなにか企んでいる素振りがあるのだ。あさはそれが心配で炭鉱を離れるわけにいかないのだ。疑惑が晴れたら大阪に帰ろうと思っていた。
ただし、そのころは亀助以外には打ち明けなかった。大阪にも「仕事が片付いたら帰る」と一言ハガキを送るだけだった。

あさの妊娠は、女中・うめ(友近)からの手紙によって、はつ(宮﨑あおい)にも知らされた。
はつは和歌山に移住し、一家で助け合いながら幸せに暮らし始めていた。次男も無事に生まれ、子どもたちはすくすくと育っている。百姓になることを嫌がっていた姑・菊(萬田久子)も、はつと並んで働くようになった。

はつは、あさに近況報告と励ましの手紙を書いた。その手紙は大阪の家に送ったのだが、あさは不在のため読むことできなかった。その代わりに、新次郎が中を確認していた。
すると新次郎は気になる一節を見つけた。あさとはつの母・梨江(寺島しのぶ)は、つわりが重い質であったという。はつは幸い軽いつわりしか経験しなかったが、その分、母の性質はあさに受け継がれているかもしれないと書いてあったのだ。
新次郎は心配で居ても立ってもいられなくなった。

なかなか帰ってこないあさに業を煮やした正吉(近藤正臣)は、誰かを九州に派遣し、あさを連れ戻すことにした。
ただし、家のほとんどの者は仕事で忙しく、誰も九州にまで行こうとはしたがらない。そこで、正吉はうめに行くように命じた。あさは、幼い頃からうめの言うことだけは聞くので適任だと思われた。

そんなやり取りをしている所に、手紙を読んだ新次郎がやって来た。
いつになく男らしく、凛々しい表情で自分が迎えに行くと言うのだ。

こうして、新次郎はうめを伴って加野炭鉱へ向かった。

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NHK『あさが来た』第59回

今日は仕事をサボって、ザ・フォーク・クルセダーズの「コブのない駱駝」を口ずさんだりしている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第59回めの放送を見ましたよ。


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第10週『お姉ちゃんの旅立ち』

ふたりきりになった折、はつ(宮﨑あおい)は新次郎(玉木宏)があさ(波瑠)と結婚することを決めた理由を尋ねた。
本来、はつは新次郎の許嫁だったのだが、途中で相手が変えられることになったのだ。聞けば、新次郎は喜んでそれを受け入れたという。はつはそれが運命だと知りながらも、ずっと腑に落ちないでいたのだ。

新次郎は半分とぼけながら、ラクダの話を始めた。幼い時、父・正吉(近藤正臣)からラクダを見物した時の話を聞いた。ラクダは背中に大きなコブが2つも付いている珍しい動物だという。新次郎はラクダを一度見て見たいと願ったが、ついに叶えられなかった。
そんなある日、新次郎は父に連れられて京都の今井家へ行った。そこで、幼いあさが頭にカエルをのせて走り回っていた。それを見た時、一生ラクダを見れなかったとしても、この子を見ていたら楽しいだろうと思ったのがあさを選んだ主な理由だと説明した。

意外な答えに、はつは呆れた。
五代(ディーン・フジオカ)はあさのことをペンギンだと呼ぶし、新次郎はラクダと同類だとみなしていたからだ。

新次郎は続けた。
そもそもの発端はあさの奇妙な行動だったが、その後、あさのことを知る度に惚れなおしていると言う。むしろ、商才がありなんでもこなしていくあさを見ていると、何もできない自分は置いて行かれそうになるのではないかと不安になることもあると打ち明けた。
はつは、あさがのびのびと実力を発揮できるのは、新次郎が認めて自由にさせているからだと話した。もし別の男と結婚していたら、あさは家に閉じ込められ、その境遇に合わせて何もしない人間に変わるか、実家に逃げ帰るかしていたに違いないと言うのだ。新次郎あってこそのあさなのだから、自信を持つようにと励ました。特に、五代のような洋行帰り者には負けるなと発破をかけた。

その夜、あさとはつは布団を並べて床についた。
こうしていると、嫁入り前の実家でのことが思い出された。親の決めた許嫁と結婚する運命を嘆き、ふたりで抱き合って泣いたことが特に思い出された。
しかし、今はこれで良かったと思えた。あさは立派な女商人になっているし、はつは子供を産んで立派な母親となっている。
けれども、これでしばらく会えなくなるのかと思うと、まだまだ話は付きなかった。

はつは、自分があさに嫉妬していたことを打ち明けた。
あさにとっては寝耳に水だった。幼い時から、何でもそつ無くこなし、親からも可愛がられ、周囲からも優秀な娘だと褒められていたはつなのだから、おてんば娘の自分に嫉妬する理由など思いつかないからだ。

はつに言わせれば、あさは祖父・忠政(林与一)に特に目をかけられ、結婚前に新次郎から恋文を貰うなど幸せな幼少期を過ごした。結婚後も、立派な家の嫁となり、商売も常に上向きである。それが嫉妬の理由だったという。
しかし、今は全てを受け入れることができたという。あさが一人前になったのと同様に、自分の性根も変わったというのだ。心の底から今の暮らしで良いと思えるようになったし、あさの助けがなくても自信を持って生きていける。人が生きるということの本質がわかったような気がすると話した。

はつは、それぞれの生き方は変わってしまったが、これからが姉妹の本当の勝負の始まりだという。互いに精一杯幸せになれるように競い合おうと挑んだ。
負けず嫌いのあさは、絶対に負けないと意気込んだ。意気込みつつも、姉との別れが悲しかった。あさははつの胸で泣いた。

翌早朝、はつの家族が迎えに来た。まだ町が眠っている間に、人目につかないよう家財道具一式を持って和歌山へ旅立っていっ

時は流れて、大阪から神戸へ鉄道が開通した。
あさは九州の加野炭鉱で、女たちと一緒に炭だらけになって働いていた。あさはすっかり打ち解け、まるで母親のようにみなから慕われれていた。あさは大阪で見物した鉄道の話を聞かせ、あのように大きなものを動かす石炭の重要さを力説した。

さっきまで元気に働いていたあさだったが、急に気分が悪くなってしゃがみこんでしまった。
最近、いくら寝ても疲れが取れないのだという。

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NHK『あさが来た』第58回

今さらながら当ブログのデータベースのチューニングと記事のキャッシュ導入をしたので、少しでも表示が早くなるといいなと願う当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第58回めの放送を見ましたよ。

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第10週『お姉ちゃんの旅立ち』

大阪最後の日、はつ(宮﨑あおい)は藍之助(南岐佐)を連れて、あさ(波瑠)の家へ泊まりに来た。

姉妹がゆっくりと気兼ねなくおしゃべりするのは、ふたりが結婚してから初めてのことだった。いくら話しても話題が尽きることはなかった。

藍之助のことを自分の息子のようにかわいがり、一緒に遊んでいた新次郎(玉木宏)だったが、亀助(三宅弘城)が大慌てでやって来るなり、急いで家を出て行ってしまった。亀助が三味線がどうのと騒ぎ立てるのを押しとどめ、理由を一切言わなかった。

三味線と聞いて、あさは師匠・美和(野々すみ花)が関係していると思った。新次郎が昨晩も遅くまで返ってこなかったのは、美和が関係していると睨んでいるのだ。美和は艶っぽい素敵な女性であり、自分は敵わないと愚痴を言った。
はつは、そんなあさを、半分からかい、半分慰めた。あさの愚痴は、美和への単なるヤキモチだと言って笑うのだ。一方で、あさも十分にきれいな女性になったと褒めた。襲名披露でめかしこんだあさはきれいだったと話してやった。
ただし、あさもはつも、夫から直接きれいだと言われたことは無かった。そのことをふたりで笑い飛ばすのだった。

その頃、美和は、新次郎の紹介で五代(ディーン・フジオカ)と会っていた。ただし、新次郎は用事があると言って、同席していなかった。
美和は、五代が大阪商人たちが気さくに集まって話せる場を欲しがっているということを知っていた。以前、大久保利通(柏原収史)の頼みで三味線を披露した時に、大久保と五代の話を聞いていたからだ。
それで美和は、自分が商人たちのサロンを作りたいと申し出るのだった。

あさは、はつに琴を弾いて欲しいと頼み、自分の琴を出してきた。
しかし、はつは断った。長い間弾いていないし、野良仕事で手も荒れてしまったので、琴を弾くことはできないというのだ。あさがどんなに頼んでも応じなかった。

そこへ、新次郎が大急ぎで帰ってきた。手には大きな荷物を抱えており、その風呂敷を解くと、はつの琴が収められていた。
はつの琴は、山王寺屋が倒産する時の金策のために売られてしまっていた。惣兵衛(柄本佑)はそのことを激しく後悔しており、取り戻すよう新次郎に頼んでいたのだ。新次郎は大阪中の楽器店を探しまわったが、なかなか見つからなかった。それが先ほど、町外れの店で売りに出ていると聞いて、すぐに買いに行ったのだという。
新次郎も、はつの琴の腕前の評判は知っていた。それで、どうしても聞いてみたかったのだと話した。

はつは、自分の大切な琴と再会できたことをたいそう喜んだ。あさとはつは琴の合奏をした。それはとてもよい演奏だった。
惣兵衛はこっそりと加野屋のそばまで来て、漏れ聞こえてくる音色を家の外から聞いた。惣兵衛も満足だった。

演奏を終え、琴を片付けた。部屋にははつと新次郎のふたりだけがいた。
はつは、琴を置いていこうとした。琴の値打ちは知っていて、それほど高価なものを無償で貰うわけにはいかないからだ。しかし、新次郎の熱心な説得で、やっとはつは応じた。

琴の一件が片付くと、はつは話題を変えた。
はつは新次郎に、なぜあさと結婚する気になったのか尋ねた。

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NHK『あさが来た』第57回

「はる」は「はる」でも、波瑠よりも黒木華が大好きなので、損保ジャパン日本興亜のCMに黒木華が出演してると知って小躍りした当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第57回めの放送を見ましたよ。
損保ジャパン興亜 黒木華

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第10週『お姉ちゃんの旅立ち』

榮三郎(桐山照史)の八代目加野屋久左衛門・襲名披露が始まった。
正吉(近藤正臣)の命令であさ(波瑠)も襲名の列に並んだ。

女が襲名披露の場に出るなど非常識なことで、招待客たちは騒然とした。
そんな中、五代(ディーン・フジオカ)はあさは加野屋の立派な重役であり、何らおかしいことはないと声を上げ、他の者たちを恫喝した。新次郎(玉木宏)と仲の良い山屋与平(南条好輝)は、あさに向かって別嬪だと声をかけた。山屋の一言で、場の空気は明るく一変し、和気あいあいと式が始まった。

正吉は口上において、加野屋は三代将軍・家光の時代から250年に渡って米の商いや両替商で栄えてきたことを述べた。この伝統ある商家をまだ18歳の若さである榮三郎に任せることになった。後見人となる新次郎だけでなく、招待客らからの援助も必要だと訴えた。
さらに、正吉はあさのことも紹介し、新たに石炭の扱いも始めたことを説明した。加野屋は良いと思ったものは何でも取り入れていく家風であり、あさが女であることも、石炭に手を出すことも何らおかしなことではないと話した。

こうして、榮三郎の襲名披露は無事に終わった。

後片付けをしていたあさは、女中・うめ(友近)から、はつ(宮﨑あおい)が来ていたことを聞かされた。襲名披露の日だとは知らず、和歌山行きのことを報告しようと思って偶然訪ねてきたのだという。しかし、大事な日なので、物陰からあさの姿を見るだけで、帰ってしまったのだという。

しかも、うめに託した伝言によれば、はつは3日後に和歌山へ向けて旅立つという。あまりに急なことであり、もうはつと頻繁に会うことができなくなるかと思うと、あさはとても悲しくなった。

そのやり取りを聞いていた正吉は、はつが出発する前に泊まりに来てもらえば良いと提案した。
襲名披露を終えて肩の荷が下りた正吉は、妻・よの(風吹ジュン)と奈良へゆっくりと旅行に行くことに決めたのだという。九州の鉱山を購入する際、奈良の馴染みの豪商・玉利(笑福亭鶴瓶)に借金をしたが、それを返済する目処もついたからだ。
ちょうど正吉たちの旅立つ日が、はつの出発の前日に当たる。そこで、正吉たちに気兼ねなく、はつを招待すればよいと言うのだ。あさは喜んでそうすることにした。

はつが泊まりにくる前日、新次郎はいつもよりめかしこんで、楽しそうにどこかへ出かけていった。あさが行き先を訪ねても、男同士で飲んでくると言うばかりで、具体的な行き先や相手を話そうとはしなかった。あさは、新次郎が芸姑とお座敷遊びをするのだろうと拗ねてみせたが、新次郎は適当にごまかすばかりだった。

新次郎は、あさの嫁入り道具の琴に目をつけた。あさは鉱山の購入費用の助けにするため、嫁入り道具のほとんどを売ってしまったが、家から持ってきた琴だけは売らなかったのだ。
あさは、琴の思い出を語った。自分は琴の腕前は無かったが、姉・はつと一緒に琴を演奏するのが楽しかったのだという。その琴を手放してしまうと、姉との思い出まで手放してしまうような気がして売れなかったのだと説明した。

その夜、新次郎が会っていた相手は惣兵衛(柄本佑)だった。あさとはつと同じように、新次郎と惣兵衛も別れを惜しんでいたのだ。
惣兵衛は、新次郎と自分を比べ、自分の家が潰れてしまったことを嘆いた。一方、新次郎は、商家の若旦那をやっていた時よりも、今の惣兵衛の方が活き活きしていると指摘した。今の惣兵衛の方が幸せそうであり、何が本当に良いかはわからないものだと話した。

惣兵衛も新次郎も、惣兵衛が住んでいた山王寺屋跡をたまに見に行くことがあるという。立派だった屋敷は解体され、今は空き地になっているという。妙に広い土地の中に、井戸の跡だけがポツンとさみしげに残っているだけなのだ。
そんな話をしながら、惣兵衛ははつがその井戸に転落した時のことを思い出していた。あの時、自分がはつを助けに行ったとばかり思っていたが、実は自分の方こそがはつに救われたのかもしれないと思うのだった。あの時、はつを愛おしく思った気持ちと、彼女の屈託のない笑顔が今でもありありと思い出されるのだった。

ふたりは安酒場でしみじみと飲んでいた。
すると、そこの主人(桂文珍)が紅白のかまぼこを差し入れてくれた。ふたりが新たな門出に立っていると漏れ聞こえてきたので、その祝だという。二人は喜んだ。

惣兵衛は大阪に一つだけ心残りがあると打ち明けた。新次郎ならばそれを見つけられるかもしれないと言うのだ。

翌日、正吉とよのは奈良へ旅立っていった。
入れ替わりに、はつと息子・藍之助があさの家へ泊まりにきた。

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NHK『あさが来た』第56回

NHKオンデマンドが7周年記念で7日間限定で日替わりの無料配信などをやっており、たとえば12月2日の正午まで『あまちゃん特別編』(紅白歌合戦で放送されたもの)などを見ることができますよとお知らせする当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第56回めの放送を見ましたよ。

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第10週『お姉ちゃんの旅立ち』

惣兵衛(柄本佑)は、和歌山に移住してみかんの栽培をすることを提案した。
しかし、大阪で両替商を復興することを夢見る菊(萬田久子)は応じなかった。そればかりか、惣兵衛(柄本佑)の人格を否定した。失敗したからといって大阪を逃げ出すような根性無しだから、店も潰したのだと言って詰った。

そんな菊に対して、いつも大人しいはつ(宮﨑あおい)が珍しく大声を出した。惣兵衛はそのような何じゃなくな男ではないと言って、はつは彼を弁護した。
確かに、昔は頼りないところもあったが、今では完全に人が変わっているという。太陽の下で毎日誰よりも懸命に働いている。彼は正直で優しい人物であり、ズルいことは考えず、家族思いである。そんな彼が、一家のためにと選んだ道なので、彼を信じて一緒に和歌山へ行こうと話した。

菊は家の外に飛び出した。
彼女も本心では惣兵衛を評価しており、彼に従うべきだと思っている。しかし、菊はプライドのせいで素直になれなかったのだ。後を追ってきた夫・栄達(辰巳琢郎)に本心を打ち明けた。栄達は菊に優しく声をかけ、彼女の本心を後押しした。

こうして、一家の和歌山へ移住が決まった。
はつは心が晴れやかになった。ある時期は、惣兵衛と結婚したことを後悔し、新次郎(玉木宏)と結ばれていたらどうなっていただろうかと考えたこともあったが、今はそんなことはどうでもよくなった。そのような迷いごとを考えていた自分を自嘲するのだった。

加野屋では、榮三郎(桐山照史)の襲名披露の準備が着々と進められていた。
しかし、榮三郎も完璧な人間ではない。正吉(近藤正臣)は、榮三郎の真面目さと、新次郎の人の良さと、あさの踏ん張りが合わさったらどんなに良かっただろうかと夢想するのだった。

そして、襲名披露の当日となった。

裏方として忙しく立ちまわっていたあさ(波瑠)は、姑・よの(風吹ジュン)に呼ばれた。部屋に行ってみると、豪華な留袖が用意されていた。それはよのが嫁入りの時に持ってきたものであり、加野屋の大事な場面で必ず着用したものだという。
よのは、その留袖を着て、あさが襲名披露へ参列するよう命じた。しかも、榮三郎らと並んで、披露側として出席しろというのだ。

あさはひどく驚いた。襲名披露に女が並ぶことなど、前代未聞のことだからだ。あさは自分が出席する道理はないと思った。
しかし、それは正吉の意向だという。しかも、榮三郎、新次郎、正吉の3人のためだと説得されると、あさには断る理由がなかった。
あさは念入りにめかしこみ、披露会場へ向かった。

あさが座敷に入ってくると、あまりの美しさに参列客達は息を呑んだ。

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