NHK『あまちゃん』第4回

故・伊丹十三宮本信子にベタ惚れだったようだけれど、彼女はそんなに美人でもないしどこがそんなに良かったんだろうかと常々思っていたわけだが、よく考えたら僕も死後に「木公は山瀬まみにベタ惚れだったようだけれど、彼女はそんなに美人でもない」などと言われてはかなわないので、この話はほどほどにしておこうと思った当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』の第4回目の放送を見ましたよ。

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第1週「おら、この海が好きだ!」
東京に帰ると言いつつ、グズグズと北三陸市に残っていた春子(小泉今日子)は行くあてもなく実家の方へ来てしまった。袖ヶ浜の漁港に足を向けると、停泊した船の上で娘・アキ(能年玲奈)と母・夏(宮本信子)が話しているのを見つけた。

その瞬間、春子の脳裏に忌まわしい記憶が蘇った。昔、夏は幼い春子(田附未衣愛)を船に乗せ、無理やり海に落として潜りの特訓をさせたのだ。

その時と全く同じように、夏はアキを海に突き落とした。春子は悲鳴を上げた。

しかし、当のアキは海の意外な気持ちよさを知った。海に浮かびながら満面の笑みを浮かべた。

夏も一緒に笑っている。夏によれば、海に入るときにはあれこれ考えてもどうせ思い通りにならない。それならば、何も考えずに飛び込むのが一番だと話した。水が冷たいことや、足がつかないことを心配しても始まらない。先のことを案じても仕方ないのだ。アキはやはり自分の孫だと言って高笑いした。

春子が駆けつけてきた。夏に対して、アキに変なことを教えないでほしいと食ってかかった。海が好きになったアキに対しても、自分が嫌いなものばかり好きにならないでほしいと吐き捨てた。そして、春子は怒って立ち去った。

アキは体を乾かすために漁協事務所へ行った。そこには海女たち(渡辺えり木野花美保純片桐はいり)が集まっていた。

アキは、春子は海が嫌いなのではないか、だから海女にならずに東京に行ったのではないかと疑問をぶつけた。しかし、古くから春子を知る海女たちの意見は必ずしもそうではなかった。もっと複雑な事情があるが、一言で言えば反抗期だったと言うのだ。髪にパーマをあてるなど、当時の春子はグレていたと言うのだ。

では、そうまでして故郷を捨てた春子なのに、今回はなかなか東京へ帰らないのはなぜなのかという疑問が持ち上がった。夏は、春子の夫婦仲がうまくいってないのではないかと、ズケズケと言った。一方、アキは自分のせいではないかと打ち明けた。アキは春子から、地味で暗くて向上心も協調性も個性も華もないパッとしない娘だと言われている。そのような子のいる家庭に帰りたくないのではないかと言うのだった。

春子は東京に帰るでもなく、まだ街中をぶらぶらしていた。パチンコ店に入り、隣に座った見ず知らずの男・ヒロシ(小池徹平)に「居場所がない」などと脈絡もなく愚痴る程だった。ついに行き場所がなくなり、幼馴染で駅長の大向(杉本哲太)に家まで送ってもらうことにした。

車中でふたりは昔の話をした。大向は街の活性化をライフワークにしている。市民の足である北三陸鉄道の運営に尽力しているし、観光客を誘致することに躍起になっている。

春子は、過去に大向が言っていた言葉を思い出した。1984年の北三陸鉄道リアス線の開業日、家出する春子(有村架純)に向かって大向(東出昌大)は、これからは地方の時代だと豪語した。鉄道によって人々の移動が活発化し、北三陸市も活性化すると予言したのだ。しかし、その目論見は失敗に終わり、未だに街はくすぶったままである。

春子は、大向には東京や仙台など活気のある街へ出て働くことも可能だったと指摘した。そうせずに、なぜ寂れた田舎にとどまり続けるのか、皮肉交じりに訪ねた。すると大向は真剣な表情を浮かべて、春子が帰ってくるのを待っていたのだと、告白まがいのセリフを吐いた。しかし、その時、列車車庫の横に車を停めて話していたふたりのそばへ、列車が迫ってきた。ぶつかることはないけれど、巨大な列車が迫ってくる様子に春子は驚いてしまった。それで話は有耶無耶になった。

その夜、結局春子は実家に泊まることになった。夏は東京に帰れない理由でもあるのかなどと皮肉を言うのだった。また、春子が大きな荷物を持って街中をウロウロし、パチンコ店に入り浸っているなどと噂になっていて恥ずかしい思いをしているなどときつく言うのだった。

それを口火に、春子と夏の口げんかが始まった。夏は、春子が結婚や出産を一切知らせなかったことを指摘し、もう娘でもなんでもないと言うのだった。対する春子は、父・忠兵衛(蟹江敬三)が死んだことについて何も言わないし、帰ってきても歓迎もされない。親ではないと罵った。

アキは喧嘩するふたりをオロオロと見ることしかできなかった。ついには、春子は家を飛び出した。春子は港の灯台へ向かった。そこは、昔から隠れ家にしていたところだ。少女時代、パーマをあて聖子ちゃんカットにしたことを夏に叱られた。その時も逃げてきた。当時書いた落書きが今でも残っていた。「海死ね 東京 原宿 表参道」などと、東京へ憧れを抱いていた10代の自分を思い出すのだった。その日は夜中にこっそりと家に帰って眠った。

翌日。今日は夏は海に潜らない。その代わり、大量にウニを仕入れ、それをウニ丼にして売ることにした。アキに手伝わせ、いつもよりも多く売ろうという魂胆だ。売り子にしては声の小さいアキは夏に注意された。それで頑張って大声を張った。

車内販売をしていると、列車は畑野駅に着いた。そこから一人の美少女・ユイ(橋本愛)が乗り込んできた。アキは彼女の雰囲気にただならぬものを感じた。

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NHK『あまちゃん』第3回

アイドル時代の小泉今日子は僕の頭では処理しきれないほど美人だったのでむしろ嫌いだったのだけれど、彼女が結婚→離婚していい感じに枯れてきてからはとても好ましく思うようになり、これが「わびさびってことか」などと勝手に納得している当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』の第3回目の放送を見ましたよ。

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第1週「おら、この海が好きだ!」
春子(小泉今日子)は、自分が騙されて帰省させられたことや母・夏(宮本信子)とのわだかまりが残っていることに腹を立て、東京へ帰ることにした。

しかし、アキ(能年玲奈)は帰りたくないと言って座り込んでしまった。一刻も早く立ち去りたい春子は、アキを残して一人で駅へ向かった。夏は、春子の気性が昔を変わってないことに呆れるのだった。

その場にいた大向(杉本哲太)がすぐに春子を追いかけた。高速バスで帰ろうとしている春子を捕まえ、鉄道に乗るべきだと強引に荷物を掴み去った。そして列車の時間まで駅の喫茶店で時間を潰した。

春子は大向にアキのことを話した。アキは中学から私立の進学校に入ったが、勉強に付いて行くのがやっとなのだという。それで学校が嫌いになり、東京に帰りたくないと言っているのに違いないのだ。その上、アキは性格が暗い。家族と一緒に居間にいても、一言も喋らずケータイでゲームばかりしている。春子の夫・正宗(尾美としのり)も読書ばかりしていて喋らない、暗い性格だ。アキは彼の性格を受け継いだというのが春子の意見だ。

その喫茶店リアスにいた海女の弥生(渡辺えり)や美寿々(美保純)は春子の話がにわかには信じられなかった。彼女らが会ったアキは美味しそうにうにを食べ、よく笑う快活な少女だったからだ。

喫茶店リアスは小さな店で、カウンターが数席あるのみだ。地元の常連客でいっぱいである。経営も緩やかで、手の空いているものが交代で店番をしている。今日は海女の美寿々と副駅長の吉田(荒川良々)が担当している。

するとそこへ、夏がカウンターに姿を現した。そもそもここは、夏の店だったのだ。家での仕事を終えた夏がやって来たのだ。

春子が話に夢中になっている間に最終列車が出発してしまった。今日はもう東京へ帰る手段がない。しかも、夏が喫茶店にやって来たものだから、居心地が悪くなった。夏の家に世話になる気はこれっぽっちもない春子は、ビジネスホテルに泊まると言って店を出た。

そんな春子を大向が慌てて追いかけてきた。そして、ビジネスホテルにチェックインする前に、春子をスナックに案内した。ところが、確かにさっきとは違うドアをくぐったのに、そのスナックはさっきの喫茶店と同じ店だった。なんと、その店には入口が2つあり、内部が可動式パーティションで区切られていたのだ。昼はカウンターのみの喫茶店なのだが、19時半からはパーティションを開放してスナック営業を始めるのだった。春子は頭を抱えた。

夜が明けて7月1日となった。袖が浜海岸の海女漁解禁である。アキが目を覚ますと、夏はすでに準備万端整えていた。アキは伝統的な絣半纏の海女装を身につけた夏の格好の良さにますます惚れ込んだ。見物客も集まり、盛大に海開きが行われた。アキは夏が潜る姿を夢中で見ていた。

その日の漁が終わった。アキは夏に海女漁を行う理由を聞いた。夏の第一の理由は、面白いからというものだった。しかも、海に沈むウニが金に見えてくるという。他人に拾われる前に自分が拾わなくてはならないと思い、夢中になるのだという。アキは笑顔で楽しそうに話を聞いていた。

夏はアキにも海に潜ることを勧めた。しかし、引っ込み思案なアキは、自分には無理だと言って強く否定した。
その時、夏がアキの背中を強く押した。海に突き落とされたのである。アキは落ちながら
「なにすんだ、このババア」
と思っていた。

その一部始終は、どういうわけかまだ東京に帰る気にならず、辺りをぶらぶらしていた春子が目撃していた。

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NHK『あまちゃん』第2回

どこかで「能年玲奈には『機動警察パトレイバー』の主人公・泉野明を演じて欲しい(参考: PATLABOR実写版プロジェクト)」というコメントを見て「それいいね!」と思ったりした、泉野明と同郷(北海道苫小牧市)の当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』の第2回目の放送を見ましたよ。

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第1週「おら、この海が好きだ!」
初めて海女・夏(宮本信子)を見たアキ(能年玲奈)は、彼女がとてもかっこよく見え、大感激した。獲りたてのウニをその場で割って食べさせてくれた。その美味さにも感激した。

そこへ海女(渡辺えり木野花美保純)たちが集まってきた。さっき、漁協で会った女たちだった。彼女たちの紹介で、アキと夏は互いに孫と祖母だということを知った。初めての対面ではあったが、アキはウニを食べるのに夢中で感動の出会いという様子ではなかった。矢継早に8個ものウニを平らげてしまった。夏の孫であるという事実を抜きにして、その食べっぷりでアキは海女たちにすっかり気に入られてしまった。

その頃、夏の家では、春子(小泉今日子)が、駅長・大向(杉本哲太)と漁協職員・安部(片桐はいり)から経緯の説明を受けていた。

北三陸市の主な産業は遠洋漁業だ。男たちは1年の大半を船に乗ったままで過ごす。留守を守るのは女たちであり、素潜りで海産物の採集を行なっている。特に、北三陸の海女は世界的に見てもっとも北方の海女であり「北の海女」として観光資源にもなっている。その中のリーダー格が夏である。夏は獲りたてのウニで丼を作り、それを北三陸鉄道の車内で販売もしている。海女漁の見学、鉄道から見る風景、そして夏のうに丼が観光の目玉なのだ。

しかし、海女は深刻な後継者不足に陥っており、夏を含めて5人しかいない。その上、高齢化問題も切実だ。夏は64歳、一番若い海女の安部ですら42歳である。最近、夏は高齢を理由に引退をほのめかしているという。さらに悪いことには、夏を慕う海女たちは、安倍を除いて、全員それに同調して引退しようとしているのだという。

このままでは重要な観光資源が失われてしまう。そこで大向と安倍は、夏の娘であり、街でも評判の美人だった春子を呼び戻して海女にしようとしている。夏が危篤だと嘘をついてまで、春子を北三陸に来させたのだ。ふたりは土間に土下座をして海女になってくれるよう頼み込んだ。

もちろん、そのような頼みに応じる春子ではなかった。そもそも24年前に家出したのも、田舎で海女になるのが嫌だったからだ。それから実家とは絶縁状態である。仏壇に飾られた父・忠兵衛(蟹江敬三)の遺影を見て、今日初めて父が亡くなったらしいことを知ったほどである。北三陸に帰って来て、母・夏の跡を継ぐなど、春子には考えられないことだった。

そこへ、夏とアキが帰ってきた。24年ぶりの母子の再会であるが、ふたりは睨み合うだけで言葉を交わそうとはしなかった。夏に付いて来た海女たちは、その険悪な雰囲気に恐れをなして逃げていってしまった。アキは事情がわからずきょとんとしていた。大向がふたりを仲裁したが無駄だった。

大向は、引退する夏の代わりに春子に海女になってもらうという計画を話した。それを聞いた夏は、自分は引退しないと言い切った。自分の食い扶持は自分で稼ぐつもりであるし、ましてや絶対に春子の世話にはなるつもりはないと言うのだった。

売り言葉に買い言葉で、春子も腹を立てて東京へ帰ると言い出した。荷物を持って家を出ようとするが、アキが付いてこない。

アキは座り込んで
「帰りたくない」
と動かなくなった。

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NHK『あまちゃん』第1回

エイプリールフールネタは明らかに失敗であり、妙に早朝に目が覚めてしまい、その恥ずかしさと情けなさを思い出してベッドの中でのたうち回ってしまった当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』の第1回目の放送を見ましたよ。

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第1週「おら、この海が好きだ!」

1984年(昭和59年)7月1日、松田聖子やチェッカーズの歌と並んで、吉幾三の「俺ら東京さ行ぐだ」が流行していた。

その日、北三陸鉄道リアス線の開通式が行われていた。ここ岩手県北三陸市にはこれまで鉄道がなかった。地元の悲願がついに成就したのだ。市民が大勢集まって大賑わいだった。

ごった返す人々をかき分け、18歳の天野春子(有村架純)は始発電車に飛び乗った。ひとりで故郷を捨て、東京へ旅立つためだ。それから24年、春子は一度も北三陸市に帰ってくることがなかった。

2008年(平成20年)夏。
42歳となった春子(小泉今日子)に、母・夏(宮本信子)が危篤であるという連絡が入った。意識がなく、最悪の事態だという。その報せを受けて、春子は一人娘のアキ(能年玲奈)を連れて帰郷した。アキにとっては、母の故郷を尋ねるのも、親族に会うのも初めてのことであった。

母子が北三陸駅に到着すると、駅長の大向大吉(杉本哲太)が出迎えてくれた。春子に危篤の報せをしたのも大向である。

ところが、大向は病院に直行しようとはしなかった。待合室で列車を待つ地元市民に春子を見せたり、観光協会へ案内したり、海沿いの漁業組合に案内したりするばかりだ。春子は大向の行動に不信感を抱きつつも、他の交通手段がないので彼の運転する車で連れ回されるのに任せた。

漁業組合では、特に人々の言動がおかしかった。そこに集まる人々は夏と親しい者ばかりなのに、危篤であるはずの夏を心配する者は一人もいないのだ。むしろ、夏は風邪すらひくことのない健康体だと言って笑い飛ばすほどだった。

大向はやっとふたりを春子の実家に連れて行った。
家は無人だった。しかし、ついさっきまで誰かがいた様子が見て取れた。しかも、鍋を火にかけたままであった。住人が昼食の準備中に何かを思いついて、ちょっとだけ家を出たという感じであった。

それを見て、春子は全てを悟った。夏が危篤だというのは大向の狂言であると確信した。夏は病気などしていない。今だって、味噌汁に入れるワカメが切れているのに気づいて、海へ取りに行ったのだろうと予想した。春子はアキに海を見に行くよう命じた。

アキは道もわからないまま、海が見える方へ歩いて行った。春子の実家は漁業集落の中にあり、軒先で干されている魚や東北独特のリアス式海岸など、東京育ちのアキにとっては見るもの全てが物珍しかった。

やっと海にたどり着くと、アキは初めて本物の海女を見た。その海女は浮上するとアキの姿を見つけた。海女は採ってきたばかりのウニを食べろと言って放り投げてきた。
それがアキと夏の初めての出会いだった。

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