NHK『ブギウギ』第89回

某あいこちゃんが夢に出てきて目覚めの良かった当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第89回めの放送を見ましたよ。

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第19週『東京ブギウギ』

香川から父・梅吉(柳葉敏郎)がやってきた。
彼は鈴子(趣里)を休ませるためだと言って、愛子の子守りを始めた。ところが、梅吉はろくにオシメも替えられない。鈴子は愛子から解放されて楽になるどころではなく、梅吉の世話まで増えてしまってイライラするのだった。

その夜、愛子を寝かしつけると、鈴子と梅吉はゆっくりと語り合った。鈴子は、昔の梅吉にも今日の梅吉にも散々迷惑をかけられっぱなしであったが、やはり自分にとって大切な父親である。いつしか鈴子の態度もやわらくなっていた。
梅吉は、確かに愛子もかわいいが、自分にとっては鈴子の方がよりかわいく思うのだと話した。それが親というものであるという。
さらに、配偶者を早くに亡くした者同志として鈴子に同情した。梅吉は妻・ツヤ(水川あさみ)を失って何年も経つのに、いまだに彼女のことを思い出し、立ち直れないと話した。鈴子は黙って聞いているだけだったが、その気持ちがよくわかった。

現在の梅吉は香川で写真館をやっているという。持参したカメラで鈴子と愛子の写真を撮ってくれた。鈴子には愛助(水上恒司)の写真を持たせ、親子三人が収まるようにしてくれた。
こうして、一泊だけすると梅吉は香川に帰って行った。

その頃、羽鳥(草彅剛)はピアノの前にじっと座っているばかりだった。鈴子から新曲の依頼を受けたものの、彼女の復帰第一作として最高のものを作ろうとすればするほど、なにも浮かんでこなくなってしまった。ぼんやりとこれまでの鈴子との付き合いを思い返すばかりだった。

出かける用事のあった羽鳥は汽車に乗った。
車内は復員兵や父を亡くしたらしき家族などでごった返し、満員だった。羽鳥は吊り革に掴まりながら人々の様子を見るともなく眺めていた。どの顔も疲れ切っているように見えた。
羽鳥は、今再起しなければならないのは鈴子だけではなく、日本中の人々も同じだとぼんやり考えた。

羽鳥は列車の走行音に合わせて、なんとなく足でリズムをとった。その時、我知らずに鼻歌も歌った。その瞬間、一気に新曲のメロディが浮かんできた。慌ててメモを取ろうとしたが、あいにく紙を持っていなかった。列車が駅に停まると喫茶店に駆け込み、注文を聞きにきた店員を無視して、店の紙ナプキンに一心不乱に楽譜を書きつけた。

書き終えると、羽鳥は大急ぎで鈴子の家に来た。
紙ナプキンの新曲を鈴子に渡し、これからすぐに作詞家を探しに行くと言って慌てて出て行った。

羽鳥によれば、この曲は鈴子の復興ソングだけでなく、日本の復興ソングだという。
まだ歌詞のない曲ではあるが、タイトルだけは「東京ブギウギ」と記されていた。

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NHK『ブギウギ』第88回

読者には全く関係のないことだけれど、ていうか今までも記事のマクラが読者に関係のあったことはほとんどないのだけれど、今朝はいつもと朝のルーティンが違っていていろいろヒーヒー言っている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第88回めの放送を見ましたよ。

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第19週『東京ブギウギ』

鈴子(趣里)は羽鳥善一(草彅剛)の家を訪ねた。

そこで、自分のために新曲を書いてほしいと依頼した。
鈴子はいつも羽鳥の歌に助けられたという。東京に出てきてすぐの時、梅丸楽劇団が解散になった時、弟・六郎(黒崎煌代)が戦死した時など、いつも羽鳥の曲を歌うことで危機を乗り越えてきた。今、歌に復帰したいという気持ちが高まっており、どうしても羽鳥に助けてもらいたいと話した。

羽鳥は言葉を失うほど驚いた。今まで鈴子から直接曲作りを頼まれたことはなかったからだ。当然のように依頼を引き受けた。
羽鳥はそれ以上何も言わなかったが、実は鈴子が自分から歌いたいと言うまで何もしないと決めていた。ようやく鈴子がその気になり、自分のところへ来てくれたことが何より嬉しかった。全力で歌を作ると密かに誓った。

羽鳥の妻・麻里(市川実和子)は鈴子の体調のことをひどく心配した。ひとりで子育てをしている鈴子を案じ、いつでも助けに行くと約束した。鈴子はその気持ちをありがたく頂戴したものの、具体的な助けは求めなかった。

その晩、愛子が高熱を出した。
村西医師(中川浩三)の病院に駆け込んだが、それほど心配はいらないという。赤ん坊は元々平熱が高く、体温調節もまだうまくできず、このようなことはよくあると言うのだ。鈴子はひとまず安心した。
連絡を受けた麻里も病院に駆けつけてきた。鈴子が一人で抱え込んでいる姿を見てますます心配になった麻里は、翌日に鈴子の家に手伝いに行くと一方的に決めた。

あくる日、麻里は本当に鈴子の家に押しかけてきた。愛子の世話をしようとする鈴子を押し留め、愛子を奪った。そして、鈴子にはゆっくり休めと言うのだった。鈴子が昼寝をしている間、麻里は愛子の世話のみならず、掃除や食事の支度など手際よく行った。これまで3人の子どもを産み育てている麻里にとっては簡単なことだったのだ。

鈴子は麻里のおかげで久しぶりにぐっすり眠ることができた。実家で飼っていた亀をめぐって亡き母・ツヤ(水川あさみ)と愛助(水上恒司)の母・トミ(小雪)が喧嘩をし、周囲の人々も巻き込んだ大騒動になる夢を見た。
鈴子は、まるでコメディ映画を見たような楽しい気分で目を覚ました。いい匂いにつられて台所へ行くと、麻里が夕食の支度をしていた。その後ろ姿はまるで自分の母親かのようだった。鈴子は夢の続きを見ているようで、ますますいい気分に浸った。

鈴子と一緒に夕食を摂りながら、麻里は母乳に良いとされる食事や赤ん坊の寝かしつけについてアドバイスした。そして、子育ての最大のコツは自分一人で抱え込まないことだと話した。鈴子は元来、自分一人で頑張らなくてはいけないと思うタイプだ。しかし、一人でこなすことなどそもそも無理なのである。いつでも自分を頼ってほしいと改めて言った。むしろ、曜日を決めて定期的に手伝いに来るとまで言い出した。
鈴子は、麻里が自分の母親のように思えると話し深く感謝した。

麻里は羽鳥の様子も話した。羽鳥は楽譜に一音も書けずに唸っている。あんな姿を見るのは初めてだという。本人も、今では目の前にパーっと音符が広がってきたのだけれど、今回は違うと言っているという。どうすれば鈴子を最高に輝かせることができるのか、そればかり考えているとなかなか進まないのだという。
その羽鳥の姿は、麻里が鈴子に嫉妬させるほどのものだという。自分は音楽にまったく興味がないとはいえ、これまで羽鳥は自分のために1曲も書いてくれたことがない。羽鳥があんなに苦しむほどの曲を書く相手である鈴子が羨ましいと冗談混じりに話した。

鈴子は、羽鳥がどんな歌を作ってくれるかこれ以上なく楽しみになった。

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NHK『ブギウギ』第87回

昨夜は鳥水炊き鍋を食べた当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第87回めの放送を見ましたよ。

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第19週『東京ブギウギ』

愛助(水上恒司)がこの世を去り、愛子が生まれてから3ヶ月が経った。
鈴子(趣里)は一人で子育てに奮闘していた。愛子はきっかり3時間ごとに泣き出し、鈴子はすっかり疲弊してしまっていた。時にはひとりで涙を流すこともあった。それでも、前向きに元気に母子で生きると愛助に誓ったことを事あるたびに思い出し、自分を奮い立たせた。

ただし、仕事はまったくできる状態ではなかった。
マネージャー・山下(近藤芳正)も鈴子の収入が心配になったが、鈴子の様子を目の当たりにすると無理に仕事をさせる気にもなれなかった。鈴子自身も今は仕事ができる状態ではないと断り続けていた。

そんなある日、村山興業の坂口(黒田有)から会社に出向いてほしいと頼まれた。トミ(小雪)が大阪からやって来て、鈴子に話があるのだと言う。
鈴子はそれに応じることにしたが、出がけに愛子が泣き出してしまい、なかなか家を出ることができなかった。

すると、逆にトミが鈴子の家にやってきた。トミは、同行している坂口を叱った。母親とはとかく忙しいものであり、鈴子を会社に呼びつけるなんてあってはならないことだと言うのだ。この日のトミは、会社の部下に向かってはいつも通り厳しい態度だったが、鈴子と愛子には優しい表情を向けた。こうして鈴子はトミと二人きりで話をすることになった。

トミはしばし愛助の思い出を語った。愛助は最期まで鈴子との結婚を望んでいた。しかし、愛助と鈴子の結婚はトミの考える夫婦観や家族観とは異なっている。だから許さなかった。それは間違いだったかもしれないと話した。
鈴子は、トミを否定しなかった。愛助も間違ってはいなかったと答えた。家族や夫婦の在り方はそれぞれで、正解も不正解もないというのが鈴子の意見だと話した。

トミは居住まいを正すと、愛子を引き取りたいと申し出た。愛助の子だから手元に置いておきたいと言うのだ。
鈴子は即座にきっぱりと断った。

トミには鈴子が断ることは初めからわかっていた。鈴子に拒絶されても顔色を変えなかった。むしろ、鈴子自身のことを心配した。
トミは、鈴子と同じく、夫を早くに亡くし女手一つで愛助を育てたのだ。しかも、村山興業の社長として働きながらである。父のいない親子に対して世間がどんなに冷たいのか身に染みているという。だから鈴子のことが心配だと言うのだ。

そこまで言って、トミは笑い出した。鈴子はトミに匹敵するほどの負けず嫌いだから、そもそも心配する必要はなかったと冗談を言った。もし鈴子に困ったことがあればいつでも助けると約束した。自分と鈴子は、愛助という同じ男を愛した仲だから助けは惜しまないと言うのだ。
そして最後に、鈴子にまた歌ってほしいと願った。今まで黙っていたが、自分も福来スズ子の歌のファンなのだと言う。ただし、あくまで歌のファンであって、鈴子本人に対してはそれほどでもないなどと再び冗談を言った。
こうして、トミは機嫌良く帰っていった。

鈴子は、そろそろ仕事を再開して歌わなければならないと思った。それが愛助の願いでもあるからだ。

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NHK『ブギウギ』第86回

ドラマ『パパはニュースキャスター』で田村正和が演じていた、あちこちの女に子どもを産ませながら必ず「”愛”と書いて”めぐみ”」と名づけさせる男を思い出した当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第86回めの放送を見ましたよ。

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第18週『あんたと一緒に生きるで』

鈴子(趣里)が女の子を生んで2日が経った。
鈴子はずっと赤ん坊を抱き、幸せの頂点だった。あとの望みは、早く愛助(水上恒司)が帰ってきて、彼に娘の名前をつけてもらうことだった。

しかし、鈴子の出産とほぼ同じ頃、愛助は大阪の病院で事切れていた。
そのことを知っている坂口(黒田有)と山下(近藤芳正)であったが、なかなか鈴子に言い出せずにいた。

坂口と山下は病院で鈴子に付き添っている。赤ん坊と一緒で有頂天の鈴子であったが、さすがにふたりの様子がおかしいことに気づき始めた。ついに山下は意を決して愛助が亡くなったことを伝えた。
鈴子は一気に不幸のどん底へと突き落とされた。ベッドに座って窓の外を見つめたまま、一昼夜をこえても動かなくなってしまった。食事も一切摂ろうとしない。赤ん坊は別室で看護師・東(友近)らが面倒をみた。

大阪から社長秘書・矢崎(三浦誠己)が報告に来た。鈴子は相変わらず窓の外を見るばかりで、矢崎が喋っても背を向けたままだった。
矢崎は通帳と手紙を持ってきた。通帳は鈴子の名義になっており、将来の結婚生活のために愛助が貯金していたものだという。手紙は愛助が最後に書いたものである。それだけ伝えると矢崎は帰っていった。

それからさらに一夜が過ぎたが、鈴子は同じ姿勢のまま沈み込んだままだった。やっと口を開いたかと思えば、自分の大切な人はみんな早くに亡くなる、自分も死にたいと口走るようになった。
山下は鈴子を激しく叱った。愛助は多くの人に愛されており、辛いのは鈴子だけではない。山下自身もそうだし、坂口、矢崎も同様である。そして何より、彼を溺愛していた母・トミ(小雪)の悲しみは想像を絶する。残された者にできることは、彼の分まで生きることだと話した。愛助の分まで生きられるのは鈴子の他にいないのだから、軽々しく死ぬなどと言ったら許さないと怒鳴った。
坂口は興奮した山下を連れて部屋を出ていった。

再び一人きりになった鈴子は、愛助の手紙を開いた。そこには、元気になって帰るという約束が守れなくなったことへの謝罪が記されていた。
さらに、子どもの名前の案が書かれていた。男の子だったら愛助のような弱い子にならないよう力強い「カブト」という名前、女の子だったら「愛子」にしてほしいと書いてあった。娘の場合、自分の名前から一字取るのは気恥ずかしいが、愛に溢れる子になってほしいという願いを込めてつけられた名だと説明してあった。
それから、鈴子に辛いことがあったら歌うようにと書いてあった。また、生まれてきた子は自分たちの宝であり、その子がいれば何があっても生きていけるはずだと書かれていた。

部屋の外から、赤ん坊の鳴き声が聞こえてきた。
鈴子は早速「愛子!」と呼んだ。東から愛子を受け取ると、鈴子はその子を抱きしめた。
そして、一緒に生きていくと愛子に言って聞かせた。

鈴子は愛子を横に寝かせ、久しぶりに眠った。
夢の中では、愛助が愛子を抱いていて、3人で仲良く暮らしていた。

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NHK『ブギウギ』第85回

とある知人(周囲では「画伯」と呼ばれている)に鹿児島で似顔絵を描いてもらったのがちょうど10年前だと気づいて、もうそんなに前のことなのかと気が遠くなった当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第85回めの放送を見ましたよ。

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第18週『あんたと一緒に生きるで』

出産予定日までもう何日もない鈴子(趣里)は、愛助(水上恒司)の病気のことを心配しないことにした。安心して出産に集中することが彼の願いだと悟ったからだ。
愛助からのハガキは相変わらず届く。鈴子は愛助が無理をして良いことしか書いてないとわかっていたが、それを受け入れて前向きな気持ちで返事を書いた。

その頃、実際の愛助の病状はかなり悪化していた。トミ(小雪)はきっと良くなると励ましたが、愛助本人はもう長くはないと悟っていた。
愛助はこれまで生んで育ててくれたことをトミに感謝した。その上で、自分は絶対に鈴子と結婚すると訴えた。病気に悩んでいた自分の人生を明るくしてくれたのは鈴子である。だから絶対に一緒になると言うのだ。
トミは、病気さえ治れば、愛助の願いはなんでも聞くと約束した。

数日後、愛助は危篤に陥った。
すぐさま村山興業東京支社長・坂口(黒田有)とマネージャー・山下(近藤芳正)に連絡があったが、ふたりは鈴子には黙っておくことにした。鈴子がなんの心配もなく出産することが愛助の願いであるのだからだ。
何も知らせないつもりであるが、ふたりは鈴子の様子を見に行くことにした。

ふたりが家に着くと、鈴子はちょうど陣痛で苦しんでいた。自分で産院に向かおうと準備をしていたが、途中で動けなくなっていた。鈴子は、坂口と山下に付き添われて産院へ向かった。
こうして鈴子は無事に元気な女の子を産んだ。鈴子はその子のかわいらしさに見惚れた。

坂口はすぐさま大阪に連絡した。
電話に出た村山興業社長秘書・矢崎(三浦誠己)は、ほぼ同じ時に愛助が亡くなったことを知らせた。

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NHK『ブギウギ』第84回

異性を好きになるきっかけとして「今まで意識してなかったのだけれど、夢に出てきたから好きになった」みたいな話をちらほら聞くわけだけれど、昨夜の僕の夢の中にも今まで異性として意識していなかった女性が出てきたりして、ここはひとつこれをきっかけに告白してみようかなと思ったわけなんだけれど、問題は3人出てきたので誰にしようか、どう選ぼうかがわかんなくて困っている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第84回めの放送を見ましたよ。

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第18週『あんたと一緒に生きるで』

1947年(昭和22年)5月。
『ジャズカルメン』公演が終わって3ヶ月が過ぎた。そして、鈴子(趣里)の出産予定日まであと10日ほどとなった。
いつもどおり村西医師(中川浩三)の診察を受け、母子ともに順調であることが確認された。

しかし、鈴子は気が沈んでいた。
『ジャズカルメン』を必ず見に来ると言っていた愛助(水上恒司)は一向に東京へ戻ってこない。相変わらず頻繁にハガキは届くが、たいてい一言二言しか書かれていない。いつも同じように「具合は良くなってきた。もうすぐ帰れる」などと書いてあるのみである。

実のところ、愛助の病状はほぼ末期状態だった。ベッドから体を起こすのも一苦労で、母・トミ(小雪)が見舞いにきてもうわ言のように鈴子の名を呼ぶばかりだった。
秘書・矢崎(三浦誠己)は、愛助と鈴子を会わせるべきだとトミに進言した。鈴子に会うことで愛助の体調が持ち直すかもしれないというのだ。

トミもそれを仕方ないと思いかけたが、当の愛助が猛反対した。
今の自分の姿を見たら鈴子は心配のあまり気がおかしくなってしまうかもしれない。鈴子には安心して出産してほしいというのが愛助の願いだった。だから、くれぐれも自分の病状の一切を鈴子には知らせないよう頼んだ。その様子は息も絶え絶えだった。

そのことを知らない鈴子は、大阪へ行って愛助に会うと言い出した。しかし、いつ陣痛が始まってもおかしくない時期なので、担当医・村西は許可しなかった。
そこで鈴子は、村山興業東京支社長・坂口(黒田有)とマネージャー・山下(近藤芳正)を問い詰めた。しかし、ふたりはのらりくらりと言い逃れるばかりだった。『ジャズカルメン』の時にこじらせた風邪が長引いて帰ってこれないなどと言うのだ。

ふたりの態度がおかしいことは一目瞭然だった。鈴子が実力行使で大阪へ旅立とうとすると、ついに山下は愛助の病状が悪いことを白状した。そして、愛助の気持ちをくんでやり、大阪行きは取りやめてほしいと頼んだ。愛助は自分の弱っている姿を鈴子にだけは見せたくないのだ。
鈴子は一度はそれを受け入れた。しかし、愛助が心配で会いたい自分の気持ちと、鈴子に弱っている姿を見せたくない愛助の気持ちとの間で板挟みになってしまった。

一人では抱えきれなくなった鈴子は、羽鳥(草彅剛)の家を尋ねた。しかし、彼は留守で妻の麻里(市川実和子)だけが在宅だった。麻里は、鈴子の話を親身に聞いてくれた。夫はどんな時も自分勝手に音楽の話をするだけなので、留守だったことは好都合だと笑って見せた。

その上で、麻里は鈴子に自分の経験を話した。
麻里が初めて妊娠した時、出産までの間、夫は何もしてくれなかった。麻里がどんなにつわりで苦しんでいても知らんぷりで音楽に没頭していた。麻里は彼と一緒に子どもを育てていけるのか不安になったという。
その時、唯一の支えとなったのはお腹の中の赤ん坊だったと話した。麻里が不安になるたびに、胎児が自分の存在感をアピールするかのように動いたという。それで、この子のためにも頑張ろうと勇気づけられたという。

鈴子は蒙が啓かれる思いがした。確かに、自分が不安になっていたら、お腹の子も不安になるはずである。そして、自分が安心して元気な赤ん坊を産むことこそが愛助の希望である。その通り、安心して出産に臨もうと決意した。

帰宅した鈴子は、愛助の背広を抱きしめ、彼がそこにいるかのように話しかけた。
愛助が病気を治そうと頑張っている時に、自分が落ち込んでいてはいけないと悟った。お腹の子は今動いていて、愛助に会いたいと言っている。絶対に病気を治して、戻ってきてほしい。

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NHK『ブギウギ』第83回

寒すぎて井上陽水の『氷の世界』を口ずさんでいるわけだけれど、おかげさまでテレビが画期的な色になるほどではなくてよかったと思っている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第83回めの放送を見ましたよ。

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第18週『あんたと一緒に生きるで』

鈴子(趣里)の主演する『ジャスカルメン』は雑誌などでも好意的に取り上げられ、大好評で公演を続けていた。
妊娠6ヶ月の鈴子の体調もすこぶるよかった。

一方、大阪で療養生活を続けている愛助(水上恒司)はどんどん咳がひどくなっていた。『ジャズカルメン』の公演を見るために東京に戻りたいと医者に懇願したが許可されなかった。
愛助は、鈴子に詫びの手紙を書いた。結核がひどくなっているとは書かず、ちょっと風邪をこじらせてしまい大事をとって諦めるとだけ書いた。
その手紙を受け取った鈴子は、約束を破ったことに怒りながらも、愛助に会えないことをこの上なく寂しく思った。

そして、『ジャズカルメン』の千秋楽の日を迎えた。
楽屋に茨田りつ子(菊地凛子)が突然現れ、鈴子は驚いた。りつ子は妊婦がどんな踊りをするか見に来た、みっともなかったら舞台から引きづり下ろすと脅した。対して鈴子は大きな腹が人気なのだと答えた。
出会った頃は犬猿の仲だったふたりだが、今ではきつい冗談を言って笑い合える仲になっているのだ。

りつ子は、妊娠中よりも出産後の方が大変だと助言した。独身のりつ子がなぜ知ったような口を利くのかと鈴子が訝しんでいると、りつ子は子どもを産んだことがあると打ち明けた。鈴子と出会うちょっと前に出産し、そのまま故郷の母に預けたままなのだという。相手の男は出産前に蒸発した。
りつ子は、歌を諦めることができず、子どもを母に預ける決断をしたと言う。何も後ろめたいことのない生き方をしてきたが、その子ことだけは唯一の後ろめたさである。だから、その後ろめたさを解消するためにも、りつ子は歌に命をかけているのだと話した。

鈴子は、りつ子の覚悟に感心した。自分にはそこまでのことはできないと思った。
それと同時に、りつ子はりつ子の言い方で鈴子のことを励ましてくれたのだと感じた。少し気が軽くなった。

こうして『ジャズカルメン』の千秋楽も無事終わった。

後日、マネージャー・山下(近藤芳正)が今後の仕事の方針を相談するために鈴子の家を訪れた。出産までは仕事を休むとして、その後いつから復帰するか決めるためである。
しかし、鈴子は仕事の話よりも先に、山下に愛助の様子を尋ねた。鈴子は違和感を抱いていると言う。というのも、愛助からは便箋にしたためた手紙が届くのが常なのに、急にハガキ1枚だけが届いたのだ。長い手紙を書けないほど病状が悪化しているのではないかと心配で不安だと話した。
山下は大阪に聞いてみると答えた。

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NHK『ブギウギ』第82回

鈴子(趣里)両親(柳葉敏郎水川あさみ)は香川出身という設定であり、別にそれに因んだわけではないけれど来月香川県に行く用事のできた当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第82回めの放送を見ましたよ。

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第18週『あんたと一緒に生きるで』

1947年(昭和22年)が明けた。
鈴子(趣里)は地味な元旦を迎えていた。鈴子の家に年始の挨拶に来たのもマネージャー・山下(近藤芳正)くらいのものだった。彼に酒を勧めるものの、妊婦の鈴子は茶を飲むだけだった。
そんな中、愛助の羽織だけを壁にかけ、離れ離れになっている彼と少しでも一緒にいる気分を出そうとした。

大阪で結核の療養中の愛助は、鈴子に手紙を書いた。
2月から始まる『ジャズカルメン』の公演中に必ず東京に帰るつもりで、それだけが目下の楽しみだという。もちろん、母・トミ(小雪)を説得して、ふたりの結婚も認めさせるとの決意も記した。ふたりの赤ん坊を絶対に父無し子にしないつもりだ。何も心配せず、安心していてほしいと書いた。

そして『ジャズカルメン』の稽古が始まった。稽古は順調で、関係者一同は公演の成功を確信した。
看護師・東(友近)は必ず稽古に付き添ってくれた。ところが、東の出番はほとんどないほど、鈴子は妊婦だとは思えない歌と踊りをこなした。

ある日、稽古場に忍び込んできた雑誌記者・鮫島(みのすけ)によって腹の大きくなった鈴子の写真が撮られた。公演プロデューサーの小島(田村裕)が捕まえようとするも逃げられてしまった。
こうして、写真が雑誌に掲載され、鈴子の妊娠は世間に知られることになった。しかも、妊娠のため『ジャズカルメン』は中止になるかもしれない、父親は不明だなどと面白おかしく書き立てられた。
しかし、鈴子は全く意に介さなかった。

その雑誌は、大阪の愛助も見ることとなった。彼も彼で、久しく会っていない鈴子の姿を写真で見れて喜ぶほどだった。
一方、母・トミの説得は難航していた。鈴子との結婚を認めるよういくら話しても、トミは歌手をやめない鈴子を村山家に迎え入れることはできないというばかりだった。

そして、2月20日、いよいよ『ジャズカルメン』の公演が始まった。妊娠写真が雑誌に掲載されたのがむしろ宣伝になったのか、客席は満員だった。
そして、公演自体も客の期待を裏切らないものだった。確かに舞台衣装を着ても腹が大きいのは目立った。しかし、それが気にならないほどの歌と踊りだった。
公演は大成功だった

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NHK『ブギウギ』第81回

今日も起きれなかったら本作とは縁がなかったものだと思ってまとめ記事をやめようと思っていたのだけれど、ちゃんと起きれたから継続することにした当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第81回めの放送を見ましたよ。

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第17週『ほんまに離れとうない』

妊娠した鈴子(趣里)と愛助(水上恒司)の結婚を許してもらうため、マネージャー・山下(近藤芳正)が大阪のトミ(小雪)を訪ねた。山下は村山興業の元社員でトミとは古い付き合いである。しかし、トミは山下のことを嫌っていた。愛助の父がわりだったが、愛助のことを甘やかすばかりで、世間の常識をしらない人間に育てた張本人だと思っているからだ。

トミの態度は変わらなかった。堕胎費用が必要ならこちらが出すと切り出した。それを断って産むのは勝手だが、その場合は村山家はもちろん、愛助との関係はないものと思えと告げた。
トミによれば、家族というものに対する考えが合わないと言う。家族とはみなが同じ方向を向いていなければならない。村山興業も家族であり、それは同じだ。その中にあって、鈴子は異質な存在である。ゆえに家族に迎え入れることはできないというのだ。

話し合いは全くの無駄に終わった。

山下はその足で愛助の病室を見舞った。
愛助は、身重の鈴子のことをひどく心配していた。そのような時に自分の病気や結婚のことでさらに心配させたくないと望んだ。赤ん坊は必ず自分の子にするから、鈴子は何も心配せずに信じて待っていてほしいと伝言を頼んだ。
東京に戻った山下はそれを鈴子に伝えた。鈴子は勇気づけられ、愛助を心の底から信じることにした。

鈴子は、羽鳥(草彅剛)の家を訪ね、妊娠の報告をした。妊娠していても羽鳥の『ジャズカルメン』だけはどうしてもやりたいと相談した。
羽鳥は腹の大きくなった妊婦がカルメンを演じるのは例がないと面白がった。

しかし、妻・麻里(市川実和子)は妊婦が歌ったり踊ったりするのは危険が伴うと嗜めた。そして、自分が3人の子どもを産んだ信頼できる病院を紹介すると申し出た。そこでちゃんと相談するべきだというのだ。

鈴子は、麻里らと共に村西病院を訪ねた。
村西医師(中川浩三)と看護師の東(友近)は本物の福来スズ子の登場に大感激した。ふたりはスズ子の大ファンだという。戦後の日帝劇場の再開公演もなんとかチケットを手に入れて見に行ったという。

『ジャズカルメン』が上演されるころ、鈴子は妊娠6ヶ月になっている計算である。それでも、村西は鈴子の出演は可能であると太鼓判を押した。古今、妊娠しながら働き、子どもを産んだ例はたくさんある。出産直前まで村西医師の母は旅館の女中として働いていたし、東看護婦の母も農家として働き続けていたという。
そして何よりも、村西も東も福来スズ子の大ファンである。全力で支援すると約束してくれた。

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NHK『ブギウギ』第80回

ほんと今週はどーしょーもないくらい朝起きれない当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第80回めの放送を見ましたよ。

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第17週『ほんまに離れとうない』

愛助(水上恒司)は結核療養のため、母・トミの意向に沿って大阪に帰ることになった。鈴子(趣里)と一瞬たりとも離れたくはなかったが、当の鈴子から親孝行をするつもりで帰阪するよう諭されて承諾した。
その代わり、ふたりは道中の箱根へ小旅行をした。箱根の芦ノ湖は、愛助が小さい時に何度も訪れた思い出の場所だという。愛助は大いにはしゃぎ、まるで病気が完治したかのようだった。鈴子も心から幸せな時間を楽しんだ。

愛助は、自分たちに子どもができたら、家族で再訪したいと話し始めた。さらに、自分は兄弟を早くに亡くしたので、子どもは少なくとも4人は欲しいと言う。その子らと共に家族楽団や劇団を作るのも面白そうだなどと夢を語った。
鈴子は何かを言いかけて止めた。

愛助と分かれた鈴子は東京に戻った。
そして、病院に行くと妊娠していることがわかった。

鈴子は、はじめにマネージャー・山下(近藤芳正)と村山興業東京支社長・坂口(黒田有)に妊娠報告をした。鈴子の新しい目玉として、羽鳥(草彅剛)の『ジャズカルメン』に出演させるつもりで話を進めていたふたりは大いに驚いた。
そして、ふたりはトミに知られたら大変なことになると恐れ慄いた。ただでさえ愛助と鈴子の結婚に何色を示していたところへ、愛助は結核まで再発した。さらに鈴子の妊娠とあってはただではすまないと言うのだ。

鈴子は、愛助には手紙で妊娠の報告をすると話した。手紙の中で、トミには秘密にするよう口止めすると約束した。
大阪で手紙を受け取った愛助は大喜びした。喜びのあまり、鈴子からの口止めを無視してトミに話してしまった。

トミの秘書・矢崎(三浦誠己)からすぐさま東京の坂口に電話連絡があった。矢崎によればトミは怒髪天を衝くほど怒り狂っていると言う。愛助は、子どもができたからには何があっても鈴子と結婚すると言っていると言う。

それを伝え聞いた鈴子は、大阪に行くと言い出した。
子どもは必ず産むつもりであるが、その子を父無し子にはしたくないというのだ。鈴子は自分が養子であることを告白した。自分はたまたま良い両親に恵まれ幸せに育ったが、自分の子が同じようになるとは限らない。鈴子がどんなに愛情深く育てたところで、父親がいないというだけで第三者から後ろ指をさされることがあるかもしれない。自分の子は、少しも傷つかず、辛い思いをせずに生きて欲しいのだ。
そのためには、トミを説得して正式に愛助との結婚を認めてもらう必要がある。だから大阪に行きたいのだ。

マネージャー・山下は鈴子の大阪行きに難色を示した。身重である鈴子の体のことも心配だし、実際に妊娠している鈴子を見た時のトミの激情も予想される。そこでまずは山下自身が大阪でトミと話をつけてくるという。トミが山下のことを激しく嫌っていることはわかっているが、先代から会社に尽くし、トミとは古い付き合いでもある。よく話せばわかってもらえるはずだと自信満々だった。

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