痛恨: 「ヘイ! 彼女、乗ってかない?」が言えなかった

新幹線で東国に出かけており、自宅の最寄り駅に帰り着いたのが0時ころ。
駅から家に向かうバスはすでに終わっていた。
20分歩けば帰れる距離だけれど、7:30に家を出たのでヘロヘロだったし、シュウマイで有名な崎陽軒のある街で終電間際まで呑んだ上に新幹線でもビールを飲んだので酔いが回って倦怠感にさいなまれていたし、帰宅路は登坂なのでうんざりだし、寒いしで、タクシー乗り場へ向かった。

ところが、今日は金曜日の夜だし、バスが無いのはみんな一緒だし、忘年会シーズンだしで、タクシー乗り場には長蛇の列。
今まで、この駅で経験したタクシーの待ち行列はせいぜい3人くらいで、営業車も5-6台待機しているので、1分以上待ったことは無かった。
しかし、今日は、僕が乗り場に着くとすでに15人くらい待ってる。あっという間に、僕の後ろにも20人くらいの人が並んだ。
タクシーも出払っている。戻ってくるには戻ってくるのだが、平均1分に1台くらいか。

しかも、みんな1人でタクシーに乗って去っていく。

なんてムダなんだ

僕の家は、いわゆる新興住宅街の中にある。
家が密集している地域は2箇所に限られていて、いずれも同じ方角にあり、ちょっと距離が前後するくらいの位置関係だ(うちのシマは駅から1km、他方のシマは 3km くらいのところにある)。
みんな同じ方向なんだから、相乗りすりゃ良いじゃんねぇ。

割り勘にすれば運賃が安く上がるし、寒い中いつまでも待っている必要も無いし。客にとって、特にデメリットは無い(強いてあげれば、窮屈になるくらいか?)。
排ガスによる環境汚染も、なんとなく避けようという風潮なのだし、1人ずつ載せて4往復するよりも、4人乗せて1往復する方が地球に優しいし。
あえて言えば、タクシー運転手の売り上げが目減りするので、運転手にとってのインセンティブがないことくらいがデメリットか(このことは後でもう一度触れる)。

そんなわけで、よっぽど、「○○台方面に行く人、相乗りしませんか?」と待ち人たちに声をかけようと思った。

でも、たったその一言が言えなかったんだなぁ。

こんな単純な”助け合い”なんて、誰でもすぐに思いつくだろうに、その場では誰も声をあげていなかった。
その事実から、「こういう助け合いは、おせっかいであり、マナーとしてはしてはいけないのかもしれない」と想像したから。
自分の考えが正論だとわかっていても、人々の”沈黙”ってものすごいプレッシャーになるものだよね。

また、「僕が恥ずかしいのと同様に、他の人も恥ずかしくて声が上げられないのかもしれない。ここで僕が言い出せば、きっとのってくる人もいるだろうし、感謝もされるだろう」と考えもした。
しかし、同時に周りを見渡し、自分の風貌を省みて、つい口をつぐんでしまった。
周りには何故か妙齢の女性が多かった。そんな女性たちに向かって相乗りを持ちかけるなんて、なんだか下心がある人だと思われて、激しく警戒されるのではないかとビビってしまった。

それに加えて、本日の当方は、かなりトンガッたナリをしていた。修学旅行に出かけるヤンキー学生よろしく、出張に出かけるときは髪の毛ツンツンにしてキバって出かける当方である。今日も今日とて、出張でかなりアヤシイ風貌をしていた。こんなにーちゃんに声をかけられるなんて、周りの人も困ってしまうよねぇ。

そんなことを3分くらい逡巡して、タクシーを待つのもイヤになったので、諦めて歩くことにした。
寒いところでじっと立っているよりも、歩いた方が体も温まるだろうと思って。

20分の道のり、案の定僕と同じ方向にたった1人の客を乗せて走り去るタクシーを10台弱見送りながら、
「タクシー運転手が、『○○方面のお客さん、一緒にどうぞ』って声をかけてくれりゃいいのに。しかし、運転手の稼ぎを減らさずに相乗りするにはどうすればいいか」
ということをツラツラ考えた。

合理的プレイヤーを仮定した均衡分析で「相乗りさせた方がタクシー運転手も得をする」ということを照明しようと思って頭をひねったけれど、残念ながらひねるほどの頭脳を持ち合わせていなかった。

ていうか、話は簡単だ。
タクシー運転手は、相乗りした客全員から、「一人で乗ったものとして料金を徴収する」ということにすればいいんじゃん。

つまり、客Aと客Bを載せたとして、客Aをおろした時点でメーターが1000円だったら、客Aから1000円もらう。
そこで、メーターをリセットせずに、客Bの目的地へ向かう。そこでメーターが2000円だったら、客Bから2000円もらう。
運転手にとっては、客A、客Bを相乗りさせても、別々に載せても、得られる運賃は同じなわけだ。同じどころか、駅まで戻る手間が省けるので嬉しい。
両客にとっても、1人で乗ったときと料金こそ一緒だが、乗り場で待つ時間がはるかに少なくなるので、悪いところは無い。
でもって、環境に優しい。

一挙鼎得。

厳密には、客Aがいることで、客Bにとっては遠回りになり、余計に運賃がかさむ可能性があるが、そこは多分、もうちょっと考えたら簡単に解決できそう。
運転手がその分を見積もって、客A,B から等しく徴収しても良いし、運転手が「相乗り割引」として徴収しないことにしてもいいわけだ。

こういう文化、根付かないかなぁ。

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コメント (6)

  1. YURA

    私の実家の最寄り駅では相乗りタクシー文化がありますよ。
    バス通り沿いに運転します。
    ただし、家の目の前までは行ってくれないですが。
    1人で乗車したら深夜料金で1400円のところ
    800円で乗れます。
    客がMAXで5人(前2人、後ろ3人)乗るので
    かなり窮屈だけど。安さにはかえられない。
    ということで、愛用者は多い。
    それ以上に、家族に迎えに来てもらっている人の方が多いですが。

  2. 木公

    やっぱ、あるところにはあるんですね、相乗りタクシー文化。
    最初にどうやって形成されたのかが気になりますね。
    客同士で自発的に作られたのか、タクシー会社が提供し始めたのか。

    自家用車で迎えに来るというところは、うちのところも一緒ですね。
    本文には書かなかったけれど、実は、ヒッチハイクとか白タクのお願いとかもしようかと思っていたり、いなかったり。
    特に、白タクは違法だけれど、便乗目的では規制緩和しても良いんじゃないかと思っている、今日この頃。

  3. せおぴ

    乗り合いタクシーの免許がないと違法だからじゃないですかね?

  4. ユキ

    私もあれば良いのになぁ。。。って思います。
    ただ、雪の日の例の駅(恐らく木公さん最寄駅)だと遅刻するのは止むに止まれず、こういうの形成されてるのを見かけます。
    私も例の駅で雪の日にバスは当然来ないのでタクシー待ちしてたのですが、あまりにタクシーが来ないのに困って、知らない人(近くの研究所の人だった)と相乗りしたことありますよ。
    夜ってのはちょっと警戒感があるのかも、それに仕事のほうが時間厳守でみんな必死なので止むに止まれず!!って感じになるのかもしれません。

  5. 木公

    せおぴさん:
    ありゃ、そんな規制があるんですね。
    しかし、利用者の不利益は少ないだろうし、排ガスのこともあるし、本当に規制緩和してくれればいいのに。

    ユキさん:
    なるほど、あの駅でも場合によっては自発的に相乗りが行われるんですね。
    勇気を持って、今度は声かけてみますです、ハイ。

  6. alm-ore

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