百人一首

今年の正月に、テレビで百人一首の競技を見ていたわけだが。

しかし、百人一首にはとんと縁のなかった当方。
日本人の教養として、ある程度は知っておかないと恥ずかしいかもしれないと思って、『一冊でわかる 百人一首』という本を買ってきて、勉強してみた。


ていうか、そもそも道産子にとっては、百人一首っつーものは、全国的なそれとは扱いが異なる。

普通、百人一首カルタと言えば、読み手が上の句を読み、場に並べられた下の句を取るというのが普通の遊び方だ。取り札には下の句しか書かれていないため、上の句を聞いてすぐに下の句を連想して札を取るという、かなり教養を必要とするゲームだ。100首ある和歌を全部覚えていないと、まともにプレイできないわけだから。

しかし、北海道版の百人一首は、一般的な百人一首カルタと微妙に異なる。
まず、読み手は下の句を読み上げる。要するに、読まれた通りの札を取ればいいので、いろはカルタとほとんど同じゲームである。和歌を暗記する必要はまったくない。
そんな文化圏で育った当方なので、もちろん百人一首の和歌にはぜんぜんなじみがない。

さらに、北海道の百人一首がおかしな点は、取り札が全て木の札である。
任天堂のサイトを見ても「北海道地域限定」として、別枠扱い。
そんなわけで、僕は京都・嵐山の百人一首博物館時雨殿に見学に行ったときも「なんで紙でできた札なの?」とかなり不思議に思ったくらいだ。

つーか、木の札でできているだけなら、「おやおや珍しいねぇ」ですむわけだが、北海道版の百人一首の取り札はあまりに達筆すぎて、素人には字が読めない。

北海道の百人一首を紹介しているLARCRIMEというサイトでは

・・・その木の札が読めないんです。
まずは取り札を読めるようにならないと、北海道の百人一首はできないのです。

とまで言われる始末(どれだけ読めないかは、同サイトに掲載されている取り札一覧を見るとよい)。

もう、字が読めないので、僕は百人一首にはまったく興味が持てなかった。
しかし、本州に住み始めて、北海道のヤツが特殊で、一般的には読みやすい字で書かれていることを知ったのだ。
知ったからには、日本人の教養として、百人一首くらい一通り知っておこうと思った。
そんなわけで、本を見て勉強したのだ。

僕が読んだ『一冊でわかる百人一首』は、各歌の現代語訳がついているのは当たり前として、作者の経歴や和歌の文法、歌の情景を示すカラー写真、歌にまつわるコラムなどが充実していてかなりお勧めの書。索引もきっちりと作りこまれていて、レファレンスとしても有効に使えると思う。

平安貴族は和歌を贈って恋を語ったわけだが、僕もチャンスがあったら百人一首から引用してラブレターでもしたためてみようと思う。

ちなみに、一通り歌を見て、一番気に入ったのはこれ。

君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな

–藤原義孝

・・・とか書いてたら、うちの飼い猫のあるにゃんに爪を立てられた。
どこの女に現を抜かしてるにゃ?
と言われた気がした。
ちゃうがな、ちゃうがな。あるにゃんのために、長生きしようと思うのですがな。
一応ね・・・。

コメント (4)

  1. flyingbird424

    百人一首って恋の歌が多いですよね。
    私は「忘れじの ゆく末までは かたければ
    今日をかぎりの いのちともがな」が一番好きです。

    競技カルタはなかなか体力と記憶力を使うスポーツで
    ちゃんと部活として成立しているところは、体力強化でランニングから始まります。
    札を取るための素振り・イメージトレーニングなんかも。。

    100種のうち「むすめふさほせ」で始まる7首は、はじめの1文字を読んだ瞬間に札を獲らないといけないのです。
    ちなみに木公さんが好きな歌は「きみがため お」まで
    読まれたところで札を取りにいきます。
    (「きみがため」まで同じ歌がもうひとつあるので。こちらの歌、私大好きです)

    私も久しぶりに百人一首の本、買ってみようかなと思いました。

  2. 木公

    「忘れじの・・・」は “私のことを忘れないとの言葉も永遠とは限らないから、いっそのこと今日死んでしまいたい(そして、その言葉を永遠にしたい)”って感じの意味ですね(今、本で調べた)。
    僕もこういう恋の歌、大好き。

    “君がため・・”で始まるのは、僕が本文にあげたやつと、もうひとつは
    「君がため 春の野に出でて 若菜つむ
     わが衣手に 雪は降りつつ」
    ですね。
    上の句も似てるのですが、下の句だけ見ると
    「秋の田の かりほの庵の とまをあらみ
     我が衣手は 露にぬれつつ」
    に似てるそうで。
    下の句がそっくりでお手つきしやすいから
    「秋の田の かりほの庵の 歌がるた
     取りそこなって 雪はふりつつ」
    という歌も作られたそうで(by 大田南畝)。
    今回買った本にはそういうことまで書いてあって、楽しげです。

    ちなみに、僕は次の1冊は「QED: 百人一首の呪」(高田崇史)に進みました。
    flyingbird さんに年初に薦めてもらったやつ。
    https://alm-ore.com/alm-ore/archives/2008/01/post_816.html#comments

  3. flyingbird424

    たしかに!間違えやすい下の句で、ボーっとしていると間違えやすかった気がします。
    源平合戦するときに、自分の陣地にこの2枚が来たときは
    あえて隣同士において、間違えないようにしてました。

    「忘れじの・・・」は一見先の見えない不安を歌っているようでもあるのですが
    今死んじゃってもいいくらい幸せなんだろうなあ、という
    詠み人の気持ちが伝わってくるような気がします。
    未来に不吉なことをおいてある分、今の幸せが際立つというか。
    そんな個人的見解。

    「きみがため 春の野に・・・」は
    恋人が喜んでくれるだろうかと
    wktkしながら若菜を摘んでいる詠み人の姿が
    恋人にプレゼントを選んでいるときの自分の気持ちそのままなので好き。

    QEDの百人一首は
    これまたディープなお話なのですが
    百人一首のかるたを実際に見ながら、置きながら
    読んだらこれまた面白いんだろうなと思っています。

  4. 木公

    「QED: 百人一首の呪」読み終わりました。
    普通に楽しめました。
    しかし、百人一首をもうちょっときちんと覚えてから読めばよりいっそう楽しめただろうに・・・とちょっと悔しい。

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