『やまなし』読書感想文 by 海石榴

 海石榴さんより、読書感想文大会への投稿がありました。
 【自由図書部門】 にエントリー、『やまなし』(宮澤賢治)の読書感想文です。

 宮沢賢治の『やまなし』を読んで

『小さな谷川の底を写した二枚の青い幻燈です』
で、始まる宮沢賢治の『やまなし』は私が小学生の時、国語の教科書で初めて読みました
それからこの物語が好きになって、子供の頃から今まで何度も読み返してきました

5月、
二匹の兄弟蟹が、川の底にいてクラムボンについてお話をしてるこの物語、
2匹の蟹がいる川底の描写が見事に描かれてて、読んでるうちに私はいつもなぜかこの蟹の兄弟の弟のほうになって、この物語の中に入りこんでいってしまうのです

『クラムボンはわらつてゐたよ。』
『クラムボンはかぷかぷわらつたよ。』
『それならなぜクラムボンはわらつたの。』
『知らない。』

兄弟蟹の会話はクラムボンのうわさばかり
弟蟹になった私だけど、クラムボンの正体が何なのか、残念なことにはっきりと浮かびません

クラムボンのうわさをしていると、今度は魚がやってきて、その描写をこの物語は
『魚がこんどはそこら中の黄金の光をまるつきりくちやくちやにしておまけに自分は鉄いろに変に底びかりして、又上流の方へのぼりました。』
と、色も用いて表しています
だから、川底から見た景色が色鮮やかに私には想像できました
そして、その魚をとる鳥の様子も、
『その時です。俄(にはか)に天井に白い泡がたつて、青びかりのまるでぎらぎらする鉄砲弾(だま)のやうなものが、いきなり飛込んで来ました。』
と、また色を用いて表現していて美しく思えました

12月になると、この兄弟の蟹たちも成長して、子供の頃のことを忘れてしまったのか
クラムボンのうわさはせず、川底で自分たちが吐く泡の大きさを競ってたりします
そこにやまなしが川の中に落ちてきて、『かわせみ』だとびっくりします
お父さん蟹が
『さうぢやない、あれはやまなしだ、流れて行くぞ、ついて行つて見よう、あゝいゝ匂(にほ)ひだな』
と、兄弟蟹に教えます
物語のタイトルの『やまなし』がここでやっとでてきます
そして、その流れていくやまなしを追って歩く三匹の蟹たちの様子を描いて物語は終わります
この物語の終わりも、川底からみた風景に色を用いた描写で幕が下りてて、私の想像は色鮮やかなこの物語を記憶し、いつまでも残りました

でも・・・
私は弟蟹にまで変身するのに、クラムボンの正体が何なのか、今でもはっきりとわかりません
魚のことでしょ?・・・なんて思いますが、それも曖昧模糊で断定できないのです

私は人に『クラムボンってなんだと思う?』って訊いてみたりします
『この人はなんて答えてくるんだろう・・・』
その答えがなんであれ、答えてもらえるとその人の想像する世界をそっと覗くことができるみたいに思えて私はとてもワクワクします
その時、
ひょっとしたら私の口からブツブツ泡がでて、両手ははさみ化してるかもしれません・・・
私は弟蟹になってお兄ちゃん蟹が答えてくれるのを待ってる・・・
そんな感じだと思います

読むと言うより、見るような『やまなし』の物語
それはやはり青い幻燈なのでしょう

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コメント (2)

  1. sterai

     映画『サヨナラCOLOR』(竹中直人(監督・主演) 2004年)の音楽を担当している3つのグループのうちの1つの名が「クラムボン」なんです。「こういうバンド名(?)ってどうやってつけるんだろう? そもそも何語?」と思っていたのですが、宮沢ワールド語だったんですね。

  2. 木公

    えー!宮沢賢治はほとんど読んだことのない僕ですら、クラムボンの由来は知ってましたよ。

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