NHK『あさが来た』第115回

いくらしたたかに酔ったからといってヘイトスピーチは絶対に許されるべきではないと強く思うような事件が身近で起きたわけだけれど、後になってその事件を少し冷静になって思い出した時、「いくらしたたかに酔ったからといって女性の肩を抱いたり、『2000円払うから胸を触らせてくれ』って迫ったりする自分はどうなのよ?大いに反省すべきだ」と自問自答した当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第115回めの放送を見ましたよ。

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第20週『今、話したい事』

あさ(波瑠)は、成澤泉(瀬戸康史)から女子大学を作りたいという話を持ちかけられた時、現実味のない絵空事だと思った。
あさが銀行を開業してからというもの、荒唐無稽な事業計画を語るばかりで成功や返済の見込みのない融資希望者を何人も見てきた。成澤の話し方や振る舞いは大げさで軽薄であった。無理な融資を頼みに来る者たちにいかにもそっくりだったのだ。

あさは成澤を体よく追い払ったつもりだったが、彼の夢に共感する部分もあった。あさ自身、幼い時から勉強をしたかったのに、男子と女子は別だと言われ叶わなかった過去があるからだ。それで、成澤から押し付けられた彼の女子教育に関する論文原稿だけは読んでみることにした。

その原稿は、あさの想像を絶する素晴らしさだった。
女子を教育し、人として、婦人として、そして国民として育成する必要性が主張されていた。女子にも高等教育を行うことで生きがいを育み、技術や能力の開発を行い、独立し自立した生活ができるようにするべきだと記されていた。社会の様々な側面で役に立つ人材として女子を教育するとともに、彼女らの能力を活かせる場や環境の整備も説かれていた。さらには、100年先の社会を見据え、将来にわたって女性が自活できるための教育方針を打ち立てる必要があるとも書かれていた。

いずれも具体的な方針が示されており、成澤が全身全霊をかけて女子教育のことを考えていることがひしひしと伝わってきた。
そして、成澤は男であるにもかかわらず、これほどまで真剣に女性の将来のことを考えているということに感激した。
あさは泣きながら原稿を読み、また、人に成澤の論考を説明する際にも涙無くしては話せなくなった。

早速あさは成澤にもう一度会って、よく話しあおうとした。
しかし、どういうわけか成澤の姿が町から消えた。成澤の家に毎日通ったり、町中を探したりしたが、成澤に会うことができなかった。
成澤は栄養失調になるほどの貧困ぶりである。どこかで行き倒れたのではないかと、あさはひどく心配した。

なんでもあさの自由にさせる新次郎(玉木宏)であったが、今回のことだけはどうにも面白くなかった。

もちろん、女子教育の充実は新次郎も望むところではあった。
男であれ女であれ、学びたいと思う者が望みのままに学べることはいいことだと思っている。あさの強い願いにも協力したいと考えている。

しかし、新次郎は成澤個人に嫉妬していた。
新次郎は成澤の姿を見たことはないのだが、成澤は若くて色男だという。そんな男にあさが執心するので、新次郎は妬いているのだ。
そろそろあさは九州の炭鉱に出張しなければならない。あさは、自分の留守中に新次郎が成澤を探すよう頼んだ。しかし、新次郎は断るのだった。

そのころ京都の女学校では、千代(小芝風花)と田村宣(吉岡里帆)が休暇中の過ごし方について話をしていた。

宣は実家に一切帰ろうとしない。
宣の説明によれば、親から卒業後の進路を聞かれるのが嫌なのだという。その面倒を避けるために、実家には帰らないのだ。

一方の千代は、休みのたびに大阪に帰省する。
千代によれば、祖母・よの(風吹ジュン)が寂しがっており、自分の帰りを楽しみにしているから頻繁に帰るのだと話した。

あさに憧れる宣は、一度千代の実家に遊びに行きたいと話した。そこであさに会って見たいというのだ。千代は歓迎し、いつでも迎え入れると約束した。
ただし、あさに会える保証はないと説明した。あさはいつも忙しく飛び回っているからだ。
さらに千代は、あさが家にいない方が気が楽だと軽口を叩いた。自分が小さい時からあさは家にいなかったので、なまじ家にいると気づまりするというのだ。

その話を聞いた宣は、あさの本に書いてあったというエピソードを話して聞かせた。
九州の炭鉱で大きな落盤事故が起きた時、あさは大阪にいたのだという。通常なら九州に詰めていたはずだが、その時は出産のために大阪にいる時間が長かったと書いてあったという。事故の後始末に関しても、子供の世話があったので現地で十分な働きができなかったと言っているという。事故の責任の多くは自分にあると反省していたと言うのだ。

千代は胸を詰まらせた。
自分のことは放っておくばかりだと思っていた母・あさであったが、家が潰れるかどうかの瀬戸際の時に全てを投げ打って自分と一緒にいてくれたと知ったからだ。

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NHK『あさが来た』第114回

オトナ扱いされているのか、コドモ扱いされているのかよくわからない当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第114回めの放送を見ましたよ。
2016-02-13 09.27.42

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第19週『みかんの季節』

成澤泉(瀬戸康史)は、強引にあさ(波瑠)との面会を取り付けると、一方的に自分の意見をまくし立てた。

成澤はアメリカに留学していたことがあるという。加野銀行が女子行員を雇っている噂はアメリカにまで伝わっていたという。現金の取り扱いを女子にやらせるなど、これまでは常識はずれなことである。成澤は、どうせ客寄せに過ぎず、店の中で掃除でもさせているのだろうと思ったという。
しかし、帰国して様子を見に来たところ、成澤の予想はいい意味で裏切られたのだという。女子行員たちは接客の礼儀作法のみならず、計算も間違いなく行っている。店を華やかに見せる効果があるが、決して目立ちすぎることなく、各自が人格を持ち業務を遂行している。

成澤は、誰がここまで教育したのかが気になり調べた。すると、教育者はあさであることがわかり、ここでも女性が活躍していることに感銘を受けたのだという。

そこまで一方的に話すと、成澤は倒れてしまった。貧乏で3日間何も食べておらず、栄養失調になっていたのだ。店でしばらく休ませた後、行員に家まで送らせた。
その後調べてみたところ、成澤は女子行員・ハト(加藤千果)の通っていた女学校で教師をしていたことがあると判明した。その後、自身の夢をかなえる為、留学等で金を使い果たし、妻に愛想を尽かされ、今は貧し家で暮らしているという。

加野銀行でそんな騒動があったとき、新次郎(玉木宏)はひとりで京都の千代(小芝風花)に会いに来ていた。
千代はすっかり女学校に馴染み、寄宿舎で同室の田村宣(吉岡里帆)とはすっかり親友になっていた。今や互いに冗談を言い合って笑い合う仲だ。宣は新次郎に会うのは初めてだ。宣は、あさについて書かれた記事や千代からの話で新次郎のことはおおよそ知っていたが、実際に会って見ると想像以上に素敵な男性であり父親だと思った。宣はすっかり新次郎のことも気に入った。

新次郎は、千代にあさのことを話した。
新次郎はあさのことを尊敬し、彼女の生き方を認めているという。しかし、全ての女性があさのようになるべきであるとまでは考えていないという。ましてや、あさ自身も自分の生き方に迷っている節があると話した。あさは、千代と同じように、はつ(宮﨑あおい)のような女性になることに憧れている部分があるという。しかし、今の自分にはこの道しかないと思って前を向いて進んでいるのだと話した。
あさは、千代に家業の手伝いをして欲しいと考えているが、それも確固とした意見ではなく、今でも迷っているのだと明かした。
千代は、あさの意外な一面を知った気がして驚いた。

それからしばらくして、成澤がまたしてもやって来た。
成澤は女子教育を普及したいと考えていると語った。そのためにあさに力を貸して欲しいというのだ。

成澤はアメリカで女子教育について学び、日本の女子教育の歴史についても詳しかった。
明治維新後、女性の地位向上が語られるようになった。明治3年には横浜のヘボン療養所で日本初の女子教育が行われた。その翌年には、5人の女子がアメリカに留学した。東京や京都に女学校が作られ、明治8年には官立女子師範学校が開校した。
女子教育はめまぐるしく発展している。

しかし、成澤によれば、日本では女子に対して門戸が開かれていない物がある。それは女子大学校だ。
成澤は女子大学を作りたいと思っている。その設立のため、あさに賛同して欲しいというのだ。

あさは成澤の言うことはもっともだと思った。
しかし、成澤の身なりのみすぼらしさを見ると、単なる妄想に過ぎないと切り捨てた。彼のみすぼらしい身なりを見るにつけ、彼に理想を実現する実力はないと判断したのだ。あさは成澤を追い払おうとした。

食い下がる成澤は、自分が書いたという女子教育に関する論文原稿をあさに手渡した。それを押し付けると、成澤は帰っていった。

その夜、あさはとりあえず原稿を読んでみた。
すると、想像以上に立派な意見が述べられていた。あさは何度も読み返した。読み返すたびに涙があふれた。
この世にはなんと素晴らしいことを考える人がいるのかと感動したのだ。

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NHK『あさが来た』第113回

道産子のところには道産品が集まるのだなぁとしみじみ郷愁が湧き上がっている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第113回めの放送を見ましたよ。
2016-02-11 15.44.44

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第19週『みかんの季節』

加野銀行支配人の山崎(辻本茂雄)は、迷惑な客の名前と似顔絵を書き出して、行員たちの机に貼っていた。業務遂行の妨げになるので、来店したら追い返すように指示していたのだ。

それには4人の男が記されていた。
1人目は、萬谷与左衛門(ラサール石井)だった。昔は立派な商家だったが、維新後は没落して困窮している。今では酒ばかり飲んで、泥酔しては加野銀行へやってくる。いくら断っても、担保無しで金を貸せと喚くのだ。

2人目は山屋与平(南条好輝)だった。山屋はあさ(波瑠)や新次郎(玉木宏)と親しい知人であり、大阪を代表する商人の一人である。あさは驚いて山崎に事情を聞いた。
山屋は近頃代替わりして、隠居したのだという。隠居した途端、跡取りの妻が山屋のことを邪険に扱うようになったのだという。家に居づらくなり、かと言って他に行く所もないので暇さえあれば加野銀行に顔を出すのだという。そして、顔見知りの行員に声をかけて話し込むため、業務の妨げになっているという。そのため、要注意人物として閻魔帳に載せたのだという。

3人目は、大口顧客の工藤(曾我廼家八十吉)だった。工藤の娘・サカエ(横田美紀)は職業婦人になることを希望しており、縁あって今では加野銀行で働いている。
工藤は娘が可愛くて仕方がなく、娘の働きぶりを頻繁に見に来るのだ。特に他人に迷惑をかけるわけでもないが、当のサカエがやりにくくて仕方ないのだという。そのようなわけで要注意人物にした。

最後の1人は氏名不詳の男だった。名前は分からないが、ワカメがふやけたような染みのついた羽織を着た、汚い身なりの男だという。
何をするわけでもなく、店の中でニタニタと女子行員を眺めてばかりいるのだという。そして、しきりに女子行員への指導方法について尋ねてくる気持ちの悪い男だった。気味が悪いので、この男も要注意人物とした。

そして、1894年(明治27年)の夏となった。
親の許しを得て和歌山からやってきた藍之助(森下大地)は行員見習いとして加野銀行で働いていた。女子行員よりも序列は下で、掃除などの雑用しかさせてもらえていなかったが、藍之助は誰よりもいきいきと働いていた。

また、この頃、日清戦争も始まった。
戦争前の世論では戦争に反対する論調が多かったが、いざ開戦してみると戦争に賛成する声が大きくなった。江戸時代までは戦は武士のみが行うものだったが、近年の戦争では国民が誰でも兵隊になることができた。暴力を好まないあさは、どこか気分が暗くなるのだった。
一方、戦争による好景気で日本の経済は加熱していた。たとえば、東京では缶詰工場が繁盛しているという。

好景気による需要の増加と労働者需要の増加で人手不足となり、新次郎が社長を務めていた尼崎の阪神紡績は工員不足が深刻化してきているという。
そのような重要な時期にもかかわらず、新次郎は突然、阪神紡績の社長を辞任したと打ち明けた。自分のこれからの人生を考えなおした時、紡績業は自分のやるべきことではないと思い至ったのだという。
自分に向いていることは、経済や経営のことを考えることではなく、身近な人の悩みを聞くことだと思いだしたのだという。これからは、弟・榮三郎(桐山照史)やあさの愚痴を聞く「相談役」としてやっていくと勝手に決めた。
あさは落胆し、呆れた。抗議したが新次郎は全く聞く耳を持たなかった。

そんなある日、閻魔帳の「ワカメ男」(瀬戸康史)がまたしてもやって来た。行員たちは彼を追い払おうとするが、その男はあさに面会することを要求し、一歩も動こうとはしなかった。
彼の態度に気圧され、あさは彼を面会室に通してしまった。

その男は、成澤泉と名乗った。

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NHK『あさが来た』第112回

Goose houseの男子チームが「365日の紙飛行機」をカバーしている映像を見た当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第112回めの放送を見ましたよ。

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第19週『みかんの季節』

女学校の寄宿舎で千代(小芝風花)と同室の田村宣(吉岡里帆)は田村宣はあさ(波瑠)に憧れている。
あさのことを紹介した新聞記事を大事に保管しており、あさについて書かれた書物も全て読んでいるという。千代があさの娘だと知らない宣は、あさがどんなに立派な女性であるかを説明し始めた。

宣の説明:

  • 加野屋には遊んでばかりの頼りない跡取りしかいなかったが、あさが嫁入りして実権を握り、商売を立て直した
  • 加野銀行の頭取と加野商会の社長を兼任している
  • 言うことを聞かない鉱夫たちを常にピストルで脅し、従わせている
  • 洋装と化粧でいつも美しい姿でいる
  • 座右の銘は「七転び八起き」

千代は宣の言っていることが全て間違いだと指摘した。

千代によるあさの説明:

  • 加野屋の跡取りは遊び人ではなく、今では立派な経営者となっている
  • 加野銀行の頭取は榮三郎(桐山照史)、加野商会の社長は新次郎(玉木宏)であり、いずれもあさではない
  • あさは一度だけ誤って銃を暴発させた。それ以来は恐ろしくなって拳銃に触れようともしなくなった
  • 身なりを整えるのは写真撮影の時だけ。いつも髪を振り乱し、スカートを履いても大股で歩き回っている
  • 座右の銘は「九転び十起き」

一気にまくし立てた千代であったが、どうしてあさのことでムキになったのか自分でもわからなかった。

その週末、千代は大阪の実家に帰省した。
その日は、ちょうどあさが和歌山から帰ってきた日でもあった。

はつ(宮﨑あおい)たち一家を見て親子のあり方を考えなおしたあさは、優しく千代に話しかけた。
あさの豹変ぶりに戸惑う千代であったが、千代自身も宣とのやり取りを通じてあさに対する態度に変化の兆しが見えていた。

千代は、寄宿舎で宣と友だちになったことを話した。
ただし、宣があさに憧れているということは話さなかった。その代わり、宣が巴御前に憧れていると紹介した。良妻賢母を理想とする千代とは気が合わず、初めは喧嘩ばかりしていたが、いつの間にか仲良くなってしまったと話した。
あさは、自分の娘に友だちができたことを素直に喜んだ。

ある日、加野銀行に萬谷与左衛門(ラサール石井)がまたやって来た。泥酔しており、店の中で「金を貸せ」と言って騒いだ。
あさは前回と同じように、担保や返済の見込みのない者には融資できないと言ってきっぱりと断った。男たちに指示を出し、萬谷を抱えて店から追い払った。
萬谷はあさを恨んだ。

騒ぎが起きたことで支配人・山崎(辻本茂雄)は行員たちを叱った。
彼は事前に、問題のある客の名前と似顔絵を記した閻魔帳を作り、行員たちの机に貼っておいた。そのリストには萬谷も掲載されている。それなのに萬谷を応接間にまで通してしまったことを叱ったのだ。

あさはその閻魔帳のことを知らなかった。山崎の手腕に感心した。
そして、閻魔帳を確認していると意外な人物が掲載されていることに驚いた。

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NHK『あさが来た』第110回

田村宣役の吉岡里帆さんについては、劇中のメイク・衣装はもっさりしていて全然魅力的ではないのだけれど、googleで画像検索すると水着の刺激的な写真がいっぱい出てきて鼻の下の長さがが20%増量(当社比)してしまった当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第110回めの放送を見ましたよ。

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第19週『みかんの季節』

和歌山県有田のはつ(宮﨑あおい)を訪ねたあさ(波瑠)は、みかんの収穫を見学した。
一家総出で収穫に当たらねばならず、それは大変そうであった。

藍之助(森下大地)も不平を言わず、まじめに働いている。
藍之助の本心は、商売で身を立てることであり、みかん農家で一生を終えたくはないと思っている。その希望を知っているあさは、複雑な思いで藍之助が働く様子を見ていた。

畑での収穫が一段落すると、はつはみかんの出荷準備にとりかかった。あさはその様子を見物しながら、はつとふたりきりで話をしていた。

するとそこへ菊(萬田久子)がやって来た。そして、藍之助を加野銀行で正式に雇ってくれるようあさに頼むのだった。
藍之助は学業優秀で、商売の才能も希望も持っている。庄屋の息子たちよりも優秀なのに、彼らばかりが村を出て勉強を続け、藍之助が村に残るのはおかしいというのだ。また、藍之助に村の将来を背負わせるのも筋違いだと主張した。藍之助は有田のために生まれてきた子ではなく、山王寺屋のために生まれてきた子だというのだ。本人もそのつもりだ。周囲の期待を過度に背負わせ、一生をみかん農家として埋もれさせるべきではないと訴えた。

しかし、あさは自分の一存では決められないと言って、やんわりと断った。
すると菊は怒って出て行ってしまった。

はつは、藍之助が家出する直前の出来事を語った。
藍之助は、惣兵衛(柄本佑)が大阪での両替商を廃業し、和歌山でみかん農家になったことを惣兵衛本人に対して詰ったのだという。惣兵衛は黙って聞いていたが、はつが叱ったのだという。
はつの考えは、惣兵衛は軽い気持ちで両替商を辞めたのではなく、熟考の末の決断だった。みかん農家になった後も、苦労して山を開墾してきたのだ。そのような惣兵衛を侮辱するのは許せないというのだ。
はつが藍之助を殴ろうとしたら、惣兵衛が止めに入った。その直後に藍之助は家出をしたのだ。

その時のことを思い出すと、はつは今でも悔しいのだという。今の暮らしは惣兵衛がやっとの思いで選んだ道である。それを我が子がバカにすることが悔しくてならないのだ。藍之助が実業家に憧れるのは、幼い時から菊に山王寺屋の栄華を聞かされて育ったせいもある。はつは、母親である自分が藍之助へ十分な影響力を与えられなかったことも悔しいのだ。

藍之助は、あさにも憧れているのだという。明治維新期の危機を乗り越えて家を守っただけではなく、その後は事業を次々に拡張していった。その手腕は素晴らしいし、はつも認めるところだ。
しかし、はつは、自分たちの暮らしもあさに負けず劣らずだと自信を持っているのだという。特に、一家総出で収穫するのが何より楽しみなのだという。1年間手塩にかけて育ててきたみかんが立派に実り、1年間の苦労をみんなで語り合いながら出荷する。家族としてこれほど楽しいことはないのだという。
その気持を藍之助にも理解してほしいのに、藍之助はわかろうとしない。それも悔しいことであると話した。

あさとはつは、自分の心に起きることは自分でどうにでも変えることはできるが、人の心を動かすのはどんなに難しいことかと話し合うのだった。

その頃、外出していた新次郎(玉木宏)と惣兵衛も藍之助のことを話題にしていた。

藍之助から、みかん農家になった自分をバカにされた時、惣兵衛自身はなんとも思っていなかったのだという。むしろ、はつの剣幕に驚いてしまったのだという。
惣兵衛は、親の引いた道から自ら外れて楽になった身分である。親から自由になることの楽しさを人一倍知っているのだ。だから、藍之助の気持ちがよく分かるのだという。
惣兵衛自身は、金の貸し借りで身を削る苦労よりも、畑で体を動かして汗を流す苦労のほうがよほどマシだと思っている。しかし、藍之助も同じように思うという道理はないのだ。だから、藍之助の自由にさせてやる必要があると思っている。
ただし、頭では藍之助を自由にさせた方がいいとわかっていても、みかん栽培の日常を思うと藍之助には村に残って欲しいと思っていると話した。父・栄達(辰巳琢郎)は年をとって体の自由が効かなくなってきた。次男・養之助(西畑大吾)はまだ幼く、働き手としては心もとない。貴重な男手として藍之助が手放せないというのだ。
惣兵衛は、子を思う親心と農家の世帯主として板挟みになっているのだった。

同じ頃、京都白川高等女学校の寄宿舎に入った千代(小芝風花)は、同室の田村宣(吉岡里帆)に頭を痛めていた。
宣は一日中本ばかり読んでいて、部屋に千代がいても全く口を利こうとはしない。おしゃべり好きの千代はつまらない思いをしていた。

宣がやっと口を開いたかと思えば、堅苦しい話しかしなかった。
宣は、女の新しい生き方を身につけるために学校に入ったと話し始めた。これまでの女性は男に頼らなければ生きていられなかったが、これからの女性は学問を身につけ、独立する必要があると話した。そうして、国家に尽くす人物になる必要があるというのだ。

そして、いつも着物や髪型にばかり気を配り、花嫁修業のために学校に来たと言う千代のことをバカにした。
女らしいものが好きな千代ではあるが、負けず嫌いな点だけは母親譲りである。すぐさま宣に反論した。天下国家のために働く中心は今も昔も男であり、女はそれに従い支えるための淑女の徳を身につけることが最優先だと反論した。

宣は自分の理想の女性像を語り始めた。
彼女のあこがれは、新聞記事に掲載されていた女性実業家なのだという。
千代がその切り抜きを見てみると、それはあさの記事だった。

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NHK『あさが来た』第109回

今日の『スタジオパークからこんにちは』のゲストシシド・カフカだったわけで、生放送でのドラム演奏が披露されたわけだが、彼女はいつも裸足でドラムを演奏するという話題になり、実際にシシド・カフカの足の裏が画面に大写しになったりして、「シシド・カフカは顔も髪型もプロポーションも声も動きも何もかも好みだけれど、足の裏も綺麗だし、足の指もスラリとしているし、非の打ち所がねぇな」と大興奮した当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第109回めの放送を見ましたよ。
2016-02-08 18.19.25

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第19週『みかんの季節』

あさ(波瑠)と新次郎(玉木宏)は休暇を取り、ふたりきりで和歌山へ旅行することにした。有田に住む姉・はつ(宮﨑あおい)の一家に会うためである。
あさにとっては、仕事以外の旅行は初めてのことであり、新次郎とふたりきりの旅行も初めてである。洋服でめかしこんで嬉しそうに出かけた。

有田に到着すると、あたり一面みかん畑だった。
村の子どもたちは洋服を初めて見た。あさのスカートを「ミノムシ」のようだと囃し立てた。
子どもたちが騒ぎ立てるのを聞きつけて、惣兵衛(柄本佑)がやって来た。惣兵衛は幼なじみである新次郎との再会をとても懐かしがった。昔は色白だった惣兵衛だが、今や農作業で日焼けをしてとても健康的だった。性格的にも陰気なところはなくなり、子どもたちと同じようにあさのスカートのことを「ミノムシ」のようだと冗談を言うのだった。

惣兵衛の両親・栄達(辰巳琢郎)と菊(萬田久子)も元気だった。大阪随一の両替商だった頃の栄華はなくなってしまっていたが、すっかり人のよい農家になっていた。新次郎とあさの到着を満面の笑顔で迎えた。

一時、家出をして加野屋に転がり込んでいた藍之助(森下大地)も更正して、家族と仲良く暮らしていた。あさや新次郎との再会を喜び、商売の様子を興味深く尋ねるのだった。
一方、次男の養之助(西畑大吾)は藍之助に比べれば行儀が悪かった。それでも、はつたちがしっかりと育てていることが伺われるほど、屈折したところのない子どもだった。

洋装のあさがくつろげないことに配慮して、はつはあさに自分の着物を貸してやった。はつは、大実業家のあさに粗末な衣類を着せることを恥ずかしく思ったが、あさはそんなことは気にしなかった。はつの着物を借りられることだけで嬉しかった。
ふたりで着替えをしながら、はつはあさの来訪の本心を尋ねた。はつは、あさが藍之助の様子を伺いに来たと思っていたのだ。家出した子供を母親が大阪まで迎えに行くという無様な様子を見せたことをはつは恥じていたのだ。
しかし、あさはその予想を否定した。純粋にはつたちの家族に会いたかったのだと説明した。それを聞いて、はつはやっと胸のつかえが取れた。

夕食ははつが腕によりをかけて拵えた和歌山風のちらし寿司だった。
子どもたちは、いつもより具が多いと言って大喜びしていた。新次郎とあさは、はつが精一杯のもてなしをしてくれたのだと思って嬉しかった。そして、実際、とても美味しい食事だった。
食事同様、話も弾んだ。笑いの絶えない楽しい夕食となった。

その時、村の庄屋・倉掛(中村育二)が家にやって来た。はつに頼まれていた、客用の布団を持ってきたというのだ。
倉掛は、あさと新次郎に会えたことに感激した。村のほとんどの家では新聞を取っていないが、彼の家では購読をしており、あさの紹介記事も読んだことがあるのだという。そして、惣兵衛の家が加野屋と親戚であるということに驚いたのだという。それで自ら布団を貸し出すのと一緒に、挨拶に来たのだ。

倉掛は、惣兵衛たちが和歌山に移住してきた時のことを話した。
初めは、大阪から落ちぶれてきた奇妙な家族だと思って警戒していたという。しかし、一家の男たちは頼りになるし、女たちは学があって美しいことから、立派な家族だとわかったという。それからは村の一員として迎え入れた。今では菊やはつには琴の師匠として、倉掛の家で教室を開いてもらっているのだという。

それから倉掛は、みかん農家の境遇についても説明した。
江戸時代には、徳川御三家が紀州にあったため、紀州みかんはもてはやされていた。しかし、明治維新後は徳川家の威光がなくなり、紀州のみかんも人気がなくなってきたという。今では東京の問屋に安く買い叩かれるばかりだと言って嘆いた。

このような状況を改善するため、これからの農家には学問が必要だと痛感しているのだという。
それで、倉掛は自分の子どもたちを東京の学校に行かせており、将来は和歌山に帰らせてみかん農家の発展のために働かせるつもりでいるという。
その時には、藍之助にも村を支えて欲しいという願いを語った。藍之助は、学校の先生も太鼓判を押す秀才だったという。和歌山の寒村にいるのがもったいないくらいで、江戸時代ならばどこかの藩に仕えていてもおかしくなかったほどだったという。
それだけの能力があるので、ぜひ有田のために尽力して欲しいと語った。

その話を聞きながら、あさははつが藍之助のことを本当はどう思っているのかが気にかかった。

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NHK『あさが来た』第108回

今日は横浜にいたはずなのに、手元にはなぜか北海道品のある当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第108回めの放送を見ましたよ。
2016-02-06 22.50.54

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第18週『ようこそ!銀行へ』

新次郎(玉木宏)は、千代(小芝風花)を京都の寄宿女学校に進学させる考えをあさ(波瑠)に話した。
あさは、資料を見る限り良い学校のように思った。しかし、喧嘩ばかりしているとはいえ、一人娘の千代と離れて暮らすことを寂しく思い、躊躇した。

そんなあさに、新次郎は、千代には千代自身で将来を決めさせる必要があると説得した。親として子の将来を決めたい気持ちも当然であるが、それを抑えて本人が決めるべきだというのだ。親の役割は、子が自由に進路を決める手助けをすることだと話した。
その考えにはあさも賛成である。それで、あさも千代を京都に送り出すことを承諾した。

加えて新次郎は、あさはあさ自身の将来を考えるべき時だと諭した。あさの夢だった銀行が開業し、炭鉱業も発展を遂げた。この次にあさは何をやりたいのか考えるべきだというのだ。
その問いかけに、あさはうまく答えられなかった。あさは、自分の手がけた事業がどれも目標通りに進みきってしまって、その先が見えなくなってしまっていたのだ。
自分が迷っていることを認め、新次郎にそばで支えて欲しいと頼んだ。新次郎はそれを受け入れ、あさの肩を抱いて勇気づけるのだった。

千代はよの(風吹ジュン)の部屋で奇妙なからくり人形を見つけた。それは新選組の侍を模したもので、、紐を引っ張ると刀を振るう仕組みになっていた。
よのの説明によれば、千代が小さい時にあさが作って与えたものだという。千代はまったく興味を示さず、あさも諦めて捨てるつもりだったという。しかし、よのはなんとなくもったいない気がして、今まで残しておいたのだという。
千代はまったく記憶になかった。

よのは話を続けた。
あさは実業家としては一流だが、母親としては不器用なのだという。
それでも、千代に対する愛情は人並みにあったという。小さい千代が泣いたり笑ったりするたびに、あさは千代を愛おしそうに抱きしめていたと言うのだ。

千代は、両親から京都の女学校に進学するよう言われていることが気に入らなかった。自分を邪魔者扱いして、追い払おうとしていると感じていたのだ。
しかし、よのの話を聞くと、自分の認識を少しだけ疑うようになった。

よのから京都見物に誘われた。よのは、京都の女学校がどのようなところか、自分の目で確かめてから断っても遅くないというのだ。それで千代は渋々ながら、よのと二人で京都に出掛けた。
ところが、初めて見る京都の町は千代にとってとても興味深いものだった。一度の訪問ですっかり京都が気に入ってしまった。
それで、京都の女学校行きをついに承諾した。

そんなある日、加野銀行に萬屋与左衛門(ラサール石井)がやって来た。
萬屋は、江戸時代までは羽振りよく商売をやっていて、先代・正吉(近藤正臣)の世話もしていたことがあるという。
ところが、明治維新後は時代の波に乗れず、今や完全に落ちぶれてしまった。財産をほとんど失い、彼を助けようとする者もほとんどいない。萬屋本人も昼間から酒を飲み、周囲に当たり散らしてばかりいると噂になっている。

そんな萬屋は、頭取の榮三郎(桐山照史)に会わせろと言って店先で騒いだ。
揉め事を避けるべく、栄三郎と新次郎は彼を応接間に案内して対応した。

萬屋は資金援助を申し出たが、栄三郎は担保がないと金は貸せないと断った。
もちろん萬屋には担保に入れるものは何も持っていなかった。すると、昔よしみの付き合いを引き合いに出し、泣き落とそうと下手に出た。

栄三郎が情にほだされかかったところで、あさが出てきた。
あさは自分が融資担当だと自己紹介し、改めて担保がなければ融資できないという仕組みを説明しようとした。
すると萬屋は激昂した。女のあさが出てきたことで、自分がバカにされたと思ったのだ。捨て台詞を吐いて帰っていった。

そんな事件から数カ月後、いよいよ千代が京都の寄宿女学校に出発する日が気た。
あさと新次郎、そして千代も別れを寂しがったが、互いに弱音は吐かず、気丈に見送られ旅立っていった。

寄宿舎で自分に割り当てられて部屋に到着した千代は、そこにいた少女(吉岡里帆)に挨拶をした。
少女はメガネを掛け、一心不乱に本を読んでいた。千代に声をかけられても、一瞥するだけで何も言わず、すぐに本に戻ってしまった。
彼女の愛想の無さに、千代は気分を悪くした。

大阪に残された新次郎は、あさに旅行へ行こうと誘った。
結婚してから一度もふたりで休暇旅行に行ったことがなかったからだ。仕事が一段落し、千代も京都に旅だった機会に骨休めをしようと言うのだ。
渋るあさだったが、新次郎から和歌山のはつ(宮﨑あおい)に会いに行こうと言われると、すぐに賛成した。

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NHK『あさが来た』第107回

伊藤理佐『おかあさんの扉5 なにそれ! ?五歳児』を読んでいたら、夫・吉田戦車のコラムの中で彼が仮面ライダーシリーズが大好きだという話が出ており、彼はとある仮面ライダーシリーズがどうしても気に入らず見るのをやめようとした時に、伊藤理佐から「だめだよ。45年間見続けているものを見るのやめちゃ。それはヨシダさんの財産なのだから」と言われたというエピソードが紹介されており、何か思うところのあったらしい当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第107回めの放送を見ましたよ。

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第18週『ようこそ!銀行へ』

加野屋の朝。
あさ(波瑠)はみなより早く朝食を摂り、新しく雇い入れた女子工員たちの訓練にあたっていた。
新次郎(玉木宏)と千代(小芝風花)、よの(風吹ジュン)が一緒に食卓にいた。

高等小学校卒業後は花嫁修業をしたいと希望する千代に対して、新次郎は京都の女学校へ進学することを提案した。千代は、自分の希望が受け入れられないと思って腹を立てた。
しかし、新次郎によれば、女学校は職業婦人の育成だけではなく、花嫁修業としても適していると話した。女学校は忠節や礼節の教育も手がけており、特に新次郎が選んだ女学校は京都の中でも家事や裁縫に力を入れているのだという。故に、千代の希望にも沿うのだという。
加えて、千代は大阪の狭い世界しか知らずに育ってきた。一度家を離れて、見聞を広めることも重要だというのだ。

よのは千代と離れて暮らすことを寂しがったが、新次郎は続けた。
あさと千代を比較した場合、確かにあさは学問や商売はできるが、女性らしい点や母親らしいところはない。
しかし、あさは決して人の陰口を言わない。それだけで尊敬に値するというのだ。
対して、千代はいつもあさの悪口ばかり言っている。それは、千代が人間としての器がなっていないことを意味する。だから、家を離れ、京都の女学校で人間として成長する必要があるというのだ。

千代はますます腹を立て、イライラしながら高等小学校へ向かった。

それと入れ替わりに、はつ(宮﨑あおい)が訪ねてきた。あさからの手紙を受け取り、藍之助(森下大地)を迎えに来たのだ。

藍之助が両親に無断で家出してきたのであって、家族の了承を得たということが嘘であることが判明した。
藍之助の言い分は、祖母・菊(萬田久子)が応援してくれたということだけは事実だというものだった。商売の勉強をしたいと菊に相談したところ、世が世なら藍之助は大阪一の両替商であった山王寺屋の跡取りだったのだから、行って来るべきだと言ってくれたのだという。学校で商売の初歩は学んだが、話を聞くのと実際に働くのとでは大違いで、様々なことが学べたと話した。

藍之助は、どうしても商売を学びたいという。和歌山の山奥で一生みかんを育てて暮らすなど御免だと言い切った。
黙って聞いていたはつだったが、みかん農家を愚弄したことで激昂した。惣兵衛(柄本佑)の前で同じことを言ったら、はつは二度と藍之助を許さないと叱るのだった。

そこへ、よのがやって来た。
よのは藍之助のことをかわいく思っており、はつや藍之助のことを家族の一員だと思っていると話した。なぜなら、妊娠中のはつが急に産気付き、この家で藍之助を産んだからだ。だから、よのは藍之助とならば一緒に暮らしても良いと考えている。先ほど、新次郎が千代を京都の女学校に送り込むという話を聞いたばかりである。その寂しさを紛らわせるためにも、藍之助がそばに居てくれたら嬉しいと話した。

けれども、よのは、あさが藍之助を家に置くことを許さないだろうと話した。
あさは、銀行家として信用を何よりも重要視している。ところが、藍之助は両親の承諾を得ているという嘘をついて加野屋に潜り込んだ。あさは嘘をつく人間を銀行で働かせることは絶対にないだろうと言うのだ。
一度和歌山に帰って、家族ともう一度よく話し合い、正式な承諾を得てから出直すよう藍之助を諭した。

そう言われると、藍之助は反論できなかった。
素直にはつと一緒に帰っていった。

あさが朝の銀行業務を終え戻ってくると、すでにはつたちは帰った後だった。みかんの繁忙期なので、はつは一刻も早く帰りたかったのだ。
あさは、はつと話ができなかったことを残念がった。

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NHK『あさが来た』第106回

明日か明後日あたりがまとめ記事のXデーかもしれないと言っておく当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第106回めの放送を見ましたよ。

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第18週『ようこそ!銀行へ』

加野銀行の大口顧客である工藤(曾我廼家八十吉)が頭取・榮三郎(桐山照史)を訪ね、私的な相談を持ちかけた。
工藤の娘・サカエ(横田美紀)の縁談を紹介して欲しいと言うのだ。サカエは女学校を卒業して2年経つが、嫁入り先がなかなか見つからないという。それというのも、本人が嫁に行きたくないと言っているのだ。家に入ってしまっては、女学校でせっかく身につけた学問が無駄になってしまうと言っているのだ。かといって、女を雇ってくれるところもなく、サカエは何もしていない状態だという。そこで、工藤はなんとかサカエ本人も納得する嫁ぎ先を見つけようと栄三郎に相談に来たのだ。

その話を聞いたあさ(波瑠)は、加野銀行でサカエを雇うことを発案した。
これからの世は、女であっても男と同じように働くのが当然となる世の中になるべきだと思うからだ。世間ではまだまだ女は働くのに向いていないと思われているが、あさはそんなことはないと思っている。古来、女は炭鉱や田畑で働いてきた例もあり、そこでは男に引けを取らなかった。働くのに向いているかどうかは、性別の問題ではなく、個人の適性の問題だと あさは考えるのだ。
近頃、美和(野々すみ花)の晴花亭でも女性給仕が働いている。募集広告を出したところ、応募者が殺到したという。その話を聞いて、働きたいと思っている女性は多いはずだという確信を得た。

それであさは、栄三郎たちに加野銀行で女子行員を雇うことを提案した。
しかし、栄三郎や頭取・山崎(辻本茂雄)に加え、新次郎までもが難色を示した。

山崎の意見は、女は数字に弱く、金を間違いなく扱うことができないというものだった。
それに対してあさは、これまでは女が学ぶ機会がなかったからだと反論した。女子教育も普及しつつあり、計算のできる女も増えていると主張した。

栄三郎は、女が銀行で働いている前提のないことを挙げた。実際に仕事ができるかどうかは別として、世間の人々は女には仕事ができないと決めてかかっている。仕事ができないと信じられている女たちが銀行にいると、顧客の信用を失ってしまうというのだ。
あさは、世間の思い込みを逆手に取ると説明した。これまで前例のない事だからこそ、うまく行った時に加野銀行の特色となって差別化できると主張した。

もちろん、そのためには仕事をきちんとこなす者を雇用しなくてはならない。そこで、厳しい選抜試験を行い、優秀で根性のある者だけを選び出すと約束した。
加えて、女子行員の責任を全てあさ個人が引き受けると申し出た。女子行員が一人前になるまでは、あさのポケットマネーから給料を出すと言う。

新次郎が反対する理由は、女子行員が痴漢に遭うのではないかという心配であった。一同は呆れた。
あさは、女子行員たちの尻が触られないよう、自分が守ると力強く話した。その決意を聞いて、新次郎は安心した。
むしろ、女性がいると店が華やかになると言って賛成した。

加えて新次郎は、栄三郎と山崎に あさも女であることを思い出させた。
あさは女であるが、一度も計算を間違ったことがないし、きちんと金を扱うことができた。女であるからといって、仕事ができないと決めつけるのは誤りであると諭した。
そう言われると、もう反対はできなかった。

こうして、女子行員の募集が始まった。
新聞広告や口コミで噂が広まり、100人もの応募があった。
学科試験、接客試験が課され、遊び半分で応募した者や能力が満たない者は容赦なく落とされた。特に、魅力的で知性のある女性たちが選抜された。

試験を通過した者を対象に、最後はあさがひとりひとりを面接した。
面接では、器量や愛嬌の良さよりも、根性があって打たれ強そうな者を選んだ。

こうして、高木ツル(村崎真彩)、末松すず(三宅唯真)、中川ハト(加藤千果)、そして工藤の娘・サカエの4人が合格した。

あさは4人に訓示を行った。
この世は男尊女卑である。どんなに小さなものであれ、女が失敗するとケチを付けたくてウズウズしている男が大勢いる。だから、失敗はしないようにと注意を行った。ただし、それは失敗をしたら解雇するという意味ではなく、失敗しない女性になるよう研鑽に励もうという意味だった。
あさは女子行員は見習いとして、男子行員より1時間早く出社するよう命じた。そして、その1時間の間にあさが自ら訓練を行った。あさは家族と朝食をともにする時間を失ったが、意に介さなかった。

あさは、自分たちがこれからの女性たちの道を切り拓くのだという矜持があったのだ。
女子行員たちもその思いを共有した。

その頃、あさからの手紙で、はつ(宮﨑あおい)は長男・藍之助(森下大地)が加野銀行にいると知った。
実は藍之助は、惣兵衛(柄本佑)を罵倒して家を飛び出したのだ。
惣兵衛本人は、自分たちが藍之助の話をきちんと聞いてやれなかったのが悪かったと言い、怒ってはいなかった。しかし、はつは、父にひどい言葉を投げつけた藍之助のことを許していなかった。

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NHK『あさが来た』第105回

会社で昼飯を食べながらドラクエの話になり、「くわた きよはら しのずか なかはた はら いしい」という復活の呪文が話題になったのもうなずける当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第105回めの放送を見ましたよ。

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第18週『ようこそ!銀行へ』

千代(小芝風花)はもうすぐ高等小学校を卒業する。卒業後の進路をどうするか考え始めなければならない時期に差し掛かっていた。
新次郎(玉木宏)は、初めにあさ(波瑠)の意見を聞いてみることにした。

あさは、千代に銀行や商社の社員として一緒に働いて欲しいのが本心だと答えた。
その一方で、親が勝手に子の将来を決めることは良くないとも話した。昔は、女は嫁として家を守るか、家業の手伝いをするか、芸で身を立てるか、女中奉公するくらいしか選択肢がなかった。しかし、文明開化によって新たな産業が興り、今では男女を問わず誰にでも自由に働く機会がある。だから、千代本人が自分で進路を決めることが重要だと述べた。

自分で進路を決めるためには、より学ぶことが必要である。学べば、より多くの選択肢のあることがわかるし、それに適した能力も身につけることができる。そこで、千代には女学校に進学させて、学問を身につけさせたいのだと話した。
特にあさは、自分の少女時代が不自由だっただけに、娘の千代にはもっと自由に生きて欲しいと思っていたのだ。

あさと新次郎の会話を立ち聞きしていた千代が怒りながら部屋に入ってきた。
あさは自分の夢を語っているだけで、それは自分の希望とは全く違うと反論した。あさの会社で働きたくもないし、女学校に行きたくないと断言した。
そして、自分の部屋に閉じこもってしまった。

千代をなだめるために、新次郎と藍之助(森下大地)が追いかけた。
藍之助は、高等小学校では成績優秀だったという。本人も中学校に進学して、もっと勉強をしたいと思っていた。けれども、家の経済状況もあって進学を断念したのだという。だから、進学できる境遇にある者が羨ましいと話した。

その話を聞いても千代は納得できなかった。
男であれば学問は必要かもしれないが、女には必要が無いはずだと反論した。女が勉強すると、屁理屈ばかり言うようになって周囲から嫌われるのがおちだと言うのだ。自分は高等小学校を卒業したら花嫁修業に打ち込み、良き妻、良き母になりたいと希望を述べた。

藍之助は、家にいる女でも教養があると楽しいはずだと言い置いて、その場を去った。
新次郎は、藍之助はいつも無邪気に振舞っているが、心のそこでは自分の進路のことをいつも真剣に考えているのだと話した。
それに比べて、千代はそれほど真剣には考えていない。千代は少ししゅんとした。

その頃、和歌山のはつ(宮﨑あおい)へあさからの手紙が届いた。
藍之助が大阪にいると知らせる手紙だった。

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