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肩ごしの恋人 / 唯川 恵

白状します.
浮気しました.
すみません.

“過去形” で書いてありますが,そんなに過去の話じゃありません.
まぁ,過去と言えば過去ですが,本日午後のお話です.
どうも午後から頭が強烈に痛くなって,座っていると今にも吐きそうだし,体が熱っぽく嫌な汗も出てくるくらいヘロヘロになってしまったので,思わず仕事を切り上げて帰宅しちゃいました.

フラフラになってベッドに横たわったものの,妙に神経は高ぶっていて.
もう,気持ちは高ぶっちゃって,収まりもつかないし.
携帯電話の置いてあるベッドの棚に手を伸ばし・・・.

気づいたら,ベッドに招き入れていました.

誓って言いますが,今日が初めてのことです.
しかし,いわゆる “一線” を超えてしまうと,多分,あとは坂道を転げ落ちるように物事は進んでいくんでしょうね.
もう,後戻りはできそうにありません.

そもそものきっかけは,相手に迷惑がかかるといけないのでURL等は秘密にしちゃいますが,ある人の blog です.
4月に更新が止まったままなのですが,つい最近その人の blog を見ました.
その,最後に更新された記事を読んで,もう自分の気持ちを抑えることはできなくなってしまいました.


ごめんなさい,山本文緒さん.
唯川恵さんに浮気しちゃいました!

上で言った blog に「肩ごしの恋人」が紹介されていて,気になって気になって仕方なかったので,ベッドでゴロゴロしながら読んじゃいました.

いい!いいよ!唯川さん!
随分とたくさん著作があるようなので,しばらくは山本文緒を忘れて,唯川恵に熱中しちゃいそうな予感!

「肩ごしの恋人」は,27歳の女性二人が主人公.
一方は「私は強い女で生きていくの」的姉御肌でありながら,人間関係にサバサバしている(ように外からは見える)代行輸入会社で主任を任されている女性,萌.
他方は「女の幸せは男からお姫様扱いされることなの」的男に媚び媚び人生で,人生を謳歌することしか考えてない(という見方以外には見えないし,実際そう)バツ2の新婚女性,るり子.
この2人を対照的に描きながら,「恋や家族や人生について苦悩しながら,最後に一皮向ける」というお話(こんな要約だと身も蓋もねーな).

主役の2人はもちろんキャラが立っているけれど,脇を固める登場人物に関しても全員しっかりとキャラが立ってた.
「女に遊びなれてそうなのか,純粋に正直ないいヤツ」なのかよくわからないくせに女性のハートをがっちり掴んで離さない(俺もかくありたいぜ)柿崎とか.
言動はアオ臭いくせに,ふと大人びた雰囲気を醸し出しておねぇさん方のハートをこれまたがっちり掴んじゃう(俺もこうやって母性本能をくすぐりたいぜ)家出少年の崇とか.
妻にベタ惚れなんだけれど妻がどことなくよそよそしいのでつい火遊びしてしまう(物語の中ではダメなやつの象徴として描かれてるけど,お前の気持ちわかるぜ)信之とか.
新宿二丁目の男たちである文ちゃんやリョウも,それぞれの「セリフ」が切れてましたね.
その他,かなりチョイ役だけれど,信之の浮気相手のエリや,萌の上司の高野課長(♀)とかも映像を見ているように,ありありと姿が浮かんできます.
そんな,キャラの立ち具合.
#解説で江國香織も書いているが,淡々とした描写がかなりいい味を出しています.

僕がぐっと来たくだりは,2箇所.

一つは,るり子が夫の浮気の決定的瞬間を掴んで乗り込んだ後,家に帰ってきて家出少年の崇にセックスを迫るシーン.

「るり子さんは今,抱かれたいんじゃないと思うな.きっと,抱きしめられたいんだ」
「何よ,それ」
「似てるけど,全然違うだろ.そこを間違えると,とんでもないことになる.僕はるり子さんを抱けないけど,抱きしめることならできるよ.ほらね」

(文庫版 p.207)

このセリフ,メモしておいて,いつか使ってやろうと思った.;-p

もう一つは,やっぱりるり子なんだけれど,ホモ・セクシャルである事がはっきりとわかっているリョウに告白するところ.

「僕が,女の子を愛せない男だってことは知ってるよね」
「もちろん」
「だったら」
「人を好きになるのに,そんなこと何の関係があるの?」

(文庫版 p.273)

ああ,今まで”見返りのある恋愛” しかしていなかった るり子ちゃんが,ちょっと違う境地に達したよ!
好きなもんは好きなんだから,しゃーないじゃん,って態度が潔い.
言ってもしゃーないんだけれど,言わずにはいられないって心情が,いじらしい.

面白い一冊だった.
今後は,唯川恵を集中的に読む所存.

ただし,著者本人があとがきにおいて「実は,この小説を書く前の2,3年,・・・(中略)・・・,どちらかというと重く,陰鬱なものを書いてました.」と,本作が異色であることを告白.
うーむ,そうなのかぁ,他は重いのかぁ.

ていうか,この,
「今の自分は相手の一面しか見ていないんじゃないだろうか?もっと付き合っていくと,いろいろと嫌な面とか暗い過去とかあって,あとで幻滅しちゃうんじゃないだろうか?後でイヤな思いをするくらいだったら,あんまり深入りしないほうが良いんじゃないだろうか?」
って不安になる気持ちって,恋(のある一面)だよねぇ.
うーむ,唯川恵に本気で恋していそうな,当方.

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