「先日、テレビでキリスト復活を検証するという、BBC制作の番組を見まして。その番組によりますと・・・」
仏教徒の模範であるべき大龍寺の住職に、いきなり他宗教の、しかもかなり重要な位置を占める教義について話を伺うことになるとは。
今しがた、とても立派な寺で朱印状を書き上げていただき、冷たいお茶も出してもらった。お茶はまだ半分残っているし、それよりも大切なこととしては、僕はまだ朱印状の代金(300円)を支払っていない。こんな状況では、そそくさと逃げ出すわけにも行かない。
なぜ俺は仏教徒からキリスト教の話を聞かなきゃならんのかと思いながら、その不可解さと緊張感が顔に出ないように慎重に表情をつくろい、興味深そうな眼差しで話の続きを聞く。
「・・・であるからしまして、キリスト教の教えの中心には “愛” があるわけです。仏教も似たような概念がありまして、それを “慈悲” といいます。他人をいつくしみ、思いやることです。」
ああ、なるほど。キリストをマクラにして、ちゃんと仏教の話に繋げるわけか。
なかなかの話上手ですな。
「しかし、仏教では基本的に “愛” そのものは扱いません。そのような仏教の教義の中で、愛染明王は独特で、”愛” そのものに踏み込もうとしていらっしゃる明王なのです。」
そして、ちゃんと僕が愛染明王以外に興味が無いということも見抜き、そこにフォーカスして話をしてくれる。
なかなかのやり手だ。
聞けば、大龍寺の住職さんは、「愛染明王の会」(正式名称不明)の会長をしていらっしゃるそうだ。
前会長は勝鬘院・愛染堂の住職さんが勤め、二代目を彼が勤めているそうだ。
そのようなわけで、僕のように愛染明王ツアーをしている人間を見ると嬉しいと話してくれた(おべっかかもしれないが)。
【再度山・大龍寺】
住所: 神戸市中央区再度山1
Tel: 078-341-3482
拝観料: 無料