本日、職場のトイレで大きい方をした。
【警告】
なるべく不快な表現がないように配慮したつもりですが、嫌な予感のする人は以下を読むのを控えた方がよいでしょう
さて、水を流して出ようかと思い、流水スイッチを押した。
当方の職場のトイレは、壁についているスイッチを押すと電気回路の働きによって水が流れるようになっている。このスイッチ以外に水を流す方法は見当たらない。
スイッチを押したが、水が流れなかった。
もちろん、もう一度押すことも試したし、連打も試してみた。神様にお祈りしながら押してみても、やはり水は流れなかった。こんなことは、35年生きてきて初めてだ。
便器の方向から「カチッ」という小さな音は聞こえた。スイッチ自体は生きていて、何かしらの作用はしているようだ。どこか一箇所でも直せば水は流れるのだろう。しかし、当方は緊急修理をするほどの道具も能力も持っていなかった。
はじめは、素知らぬふりして立ち去ろうかと思った。
すぐに誰かが当方の残留物を発見するだろうが、よほどの執念と機材(便のDNA鑑定とか)がない限り当方が犯人だとはバレないはずだ。ちょっとした騒ぎになるだろうけれど、素知らぬふりをしていればなんとかなるだろう。明日には忘れ去られているような、小さな事件だとも言える。
しかし、不幸にもこの残留物を目撃してしまった人は、激しい嫌悪感に苦しめられるだろう。そうと思うと不憫だ。なんとか解決できないものか。
次に考えたことは、用務員さんを呼んできて何とかしてもらおう方法だ。当方の排泄物を見られるのは恥ずかしいし、先方も嫌がるだろうけれど、それは全体の平和のためには仕方のない犠牲だと思った。
しかし、やはり躊躇する。彼を呼びに行く間は現場を離れなければならない。その間に誰かに目撃されたらどうしよう。当方が留守にしたことを、逃亡したと勘違いされるかもしれない。いくら事情を説明したところで「逃げるつもりでバレたから、つじつま合わせの言い訳をしてるんだろう」なんて言われてしまうと、どうしようもない。
途方に暮れること1分。とりあえずの解決策を思いついた。
便器の構造はよく知らないが、便器の中に水を投入すれば、とりあえず流れてくれることは経験上知っている。きっとこのトイレも、電気スイッチで水を流すという近代的な装置はついているものの、汚水の排出に関しては基本的に同じ構造を持つだろう。
そこで、掃除道具のしまってあるブース(僕の入っていた個室のすぐ隣にあって、水道もついていた)から水を汲んできて、流すことにした。
3回ほどバケツの水を流しこんだら、無事に汚物を全て流し去ることができた。
不幸中の幸いにして、この作業中、他のトイレ利用者は現れず、誰にも知られることなく完了した。
やれやれと思って、八つ当たり代わりに、流水スイッチをバチンと叩いた。
すると、水が流れた。まぐれだと思って、もう一回押しても、やっぱり流れる。
なんだよ、もう。
最初に僕がスイッチを押したとき、何らかの理由で流水タンクが空になっていたのだろう(カチッという水弁を開く音は聞こえたのに、水は流れなかった)。
そして、便器内の水が排出されたことを感知するセンサーがどこかについていて、それに反応して流水タンクに水が補充がされる仕組みになっているのだろう。僕がバケツで水を流し込んだことが引き金となって、センサーが反応し、水が補充されたんだろうと今にして思う。
世の大多数の人々にはまったくどうでもいい話だったかもしれないが、当方は個人的に人生の経験値が2点くらい上がったので良しとしている。
地球上の人口に比べればごく少人数だが、当方と同じく某ビルに出入りする方々は、もし同じトラブルに遭遇したらケツをまくって逃げる前に、冷静にバケツで水を流しましょうという啓発です。
ていうか、逃げるならケツをまくるよりも、むしろケツをしまうべきだけど。この場合。