サイトアイコン alm-ore

散髪されることについて語るときに俺の語ること

散髪してきた。
基本的にロン毛系の当方だが、今回はスッキリ・サッパリな短髪クンに変身することにした。
某女性には「いやん、髪の毛短くなって、いい男になったやん~」と言われてしまったほどだ。


今日も、いつもの美容院へ行った。
担当者を指名することのできるシステムがあるが、僕は基本的にフリーでお願いしている。美容師さんの腕の良し悪しを判断できるだけの審美眼を持っていないので、誰にカットしてもらっても自分には同じように見えるからだ。

ただ、なんとなく店のスタッフの方にも客の選り好みのようなものはあるらしい。その人の手が空いている限り、いつも同じ人が担当してくれる。この記事に登場する通称「KinKi Kids の堂本光一みたいな美容師さん」は、頻繁に僕のお相手をしてくれる(なお、リンク先の記事に書いてある漫画の件は、いまだ判明しておらず)。

しかし、今日は「堂本光一くん」は他のお客さんの接客中だった。
代わりに、今まで顔を見たことのない新人さん(♂)が担当してくれた。新人さんと言っても、今までこの店で見かけなかっただけであり、年はそれほど若いわけではない。聞けば、2児(4歳と9ヶ月)の父だという。腕と経験は確かなのだろう。
僕は初めからイメージチェンジをするつもりで来店した。思い切った事をするには、初めての美容師さんにお願いするのはうってつけだと思った。

結果として、とてもカッコいいスタイルに仕上げてくれたので、彼には感謝している。

ただし、必ずしも最高の時間を過ごしたわけではなかった。

僕は、最初にカットのイメージを伝えて、あとは全て美容師さんに一任することにしている。
そして、自分は何もしゃべらず、鏡も見ず、持参した文庫本を読みたいタイプだ。
今日は初めての担当さんだったので、僕のそういう好みがわからなかったようだ。気を使ってくれるのか、もともと話好きなのかは知らないが、何かと話しかけてきた。

話の内容が不快なものだったり、退屈なものじゃなかったのは幸いだった。
彼からは子育てや美容師としての心構えといったものを聞かせてもらって、自分には経験のない世界の話なので興味深かった。今日僕は、天下一品で「チャーハンセット(並)、こってり、ニンニク入り」と注文を告げたことと、DoCoMoショップで「これはいつごろ入荷するの?・・・あ、そう、わからないの。」と東芝のスマートフォン REGZA Phone T-01C に関する質問をしたことの、ほんの数語しか発話していなかった。
人としゃべりすぎるのもストレスだが、あまりにしゃべらなさすぎるのもストレスだ。そういう意味では、いい時間だった。

しかし、本も読みたかった。
持参していたのは、村上春樹の『走ることについて語るときに僕の語ること』だった。
ちょうど、村上春樹が小説を初めて書き始めた頃の回想の部分(2章あたり)でとても面白い箇所だった。集中して読みたいと思った。
しかし、1分も沈黙が続くと彼が話しかけてくるので、ちっとも読み進めることができなかった。これはちと悲しい。

しかし、わざわざ愚痴るほどのことでもないのだが。
繰り返すが、彼との会話はいい気分転換になったし(途中で、完全に読書を諦め、会話に集中した)、かなりカッコよくカットもしてくれた。

帰り際、店の他のスタッフさん(♀)が
いやん、髪の毛短くなって、いい男になったやん~
と言ってくれるほど大成功だったのだから。

僕は照れて、いやぁと頭を掻いて帰ってきた。
帰る道中、模範解答は
「彼の腕が良いってことですよ」
だったなぁと思った。神様がもう1回カメラを回してくれるなら、そのシーンを撮り直したいと思った。

そんな感じで、おおむね良い気分で帰ってきた。
さて、家に着いたし、ゆっくり村上春樹『走ることについて語るときに僕の語ること』の続きを読もうと思った。

しかし、本が見当たらない。
もしやと思ってさっきの美容院に電話をかけたら、レジに置き忘れてあったという。
とほほ。これから取りに戻るのは億劫なので、明日以降、何かのついでに取りに行くことにした。

料金を支払うときに一時的に台の上に置いて、それを回収し忘れたのだから、完全に僕の落ち度だ。
けれども、電話の向こうから
お帰りの際にちゃんとチェックしなかったことは、こちらの不手際です。まことに申し訳ありません
と平謝りされた。

まったくそんなことはないと思うのに。
まったくそんなことはないと思うけれど、適切な返答が何も思いつかずに、そのまま電話を切った。

模範解答はなんだったのだろう。

モバイルバージョンを終了