さっき、コンビニに寄った。
駅前にあるコンビニだけれど、この辺りは車社会なので、おそらく車や原チャリで来店する人が多いのだと思う。
そのコンビニの喫煙所で、タバコを吸いながら缶ビール(350ml)を飲んでいる中年男性がいた。ネクタイを締めていて、おそらく出勤前の人だと思われた。その人の勤め先は知らないし、そこの就業規則も知らない。飲酒して勤務しても良い職場なのかもしれないので、彼が朝からビールを飲んでいても僕は一向にかまわない。
ただ、この辺りは車社会だ。彼がこの直後に運転をするなら看過できない。飲酒運転よくない。
僕は自分の買い物を済ませたが、しばらく駐車場に佇んで彼を監視することにした。
彼が車に乗り込んだら、すぐに運転をやめさせようと思った。それが、「自称良識ある市民」である当方の当然の行動だと思われたからだ。彼が言うことを聞かなければ、ケータイから警察に通報しようと計画を立てた。車で走り去れば、向かった方向とナンバーを警察に伝えよう。
相手は飲酒していることだし、もしかしたらカッとなって殴られたりするかもしれない。たまたま刃物を持っていて、それで切りつけられるかもしれないと心配はした。
ただ、それでもいいだろう、と。名誉の負傷の俺、かっこいい。暑くて会社行きたくないし、正当な理由で病院送りになって、仕事しなくて良くなるなら、それはそれで嬉しいし。
しばらく見張っていたのだが、彼はなかなか喫煙所から動こうとしない。僕に見られていることを気にしている様子でもあった。
そして彼は、飲み終えてビールの缶をゴミ箱に捨てると、再度コンビニの中に入っていった。
堪え性のない僕は、そこでしびれをきらせてしまった。駐車場から車を出し、コンビニを後にした。
それでも気になって、道路に出る時にバックミラーでコンビニの様子を伺った。
すると彼は、何も買わずにコンビニから出てきて、出入口の目の前に停めてあった原チャリに取り付いた。
ああ、運転する気だ、あの野郎!
僕は急停車して彼に駆け寄ろうかと思ったけれど、自分の車が半分道路に出ているところで止まるのも危険だ。道路の車の流れもある。そのまま進むしかなかった。
その後、実際にどうなったかはわからない。
彼は原チャリから荷物を持って、歩いて帰ったのかもしれない。
まぁ、運転して出勤したという線が濃厚だけれど。
今思うことは、俺が千載一遇の偽善のチャンスを逸してしまったことだ。くそう。
もう一つ、せめて彼が飲酒事故を起こさないことを祈るばかりだ。