テレビで見るのと同じように、アノ独特のねちっこいしゃべり方を堪能しました。
彼の詩は、独特の世界観があることで有名ですが、しゃべりも空中にフワフワ浮いているような内容でした。
たとえば
「奈良に来るのは4-5年振りです。前回来た時は大仏様を参拝してからコンサートにのぞみました。大仏様の大きさを目の当たりにすると・・・、自分の卑小さを思い知らされて、がっくり来ますねぇ。ですから、今回は大仏様は見に行きませんでした。」
だの、
「この前年が明けたと思ったのに、あっという間に”梅だ、桜だ”と騒いで・・・、今の季節は新緑が目に瑞々しいですね。でももうちょっとしたら、暑い夏の盛りが来て、”ちょっと涼しくなったなぁ”なんて思っているうちに紅葉の季節になって、木枯らしが吹いて。そんなこんなで、”やれクリスマスだ”なんて言ってる間に新年になるんですね。いやぁ、時間が流れるのは早い」
だの
「次の曲は・・・、中森明菜さんに歌ってもらったものですが。いやぁ、大変よく売れた曲で。・・・ぐふふ。いや、中森さんの実力のおかげであれだけ売れたのに、この言い方だとさも自分の才能があるような言い方でしたね。まったくもって中森さんのおかげなのに。何で笑ったかと言うと、自嘲です。自らを嘲る笑いです。」
とか
「今までいろんな人と一緒に曲を作ってきたのですが、奥田民生って皆さん知ってます?いや、もちろん皆さんご存知だと思いますがぁ、中には知らない人がいるかもしれないので紹介しておくと、ユニコーンというバンドだった人です。僕は彼が大好きなんです。普通バンドが解散すると”俺はまだまだ大丈夫だよ”というポーズのために、すぐさまソロで活動するわけですが・・・。奥田さんは、すぐに休んじゃった。世の中にもっと休む人が増えた方がいいと思うんですねぇ。僕もよく休むほうなので、目立たなくなるでしょ?」
だのだの。
その、力が抜けた、毒にも薬にもならない、内容が無いトーク、面白かったなぁ。
谷村新司とさだまさしと、井上陽水は歌わずにトークショーだけで食っていけるのかも。
#しかしこうやって列挙すると、トークの面白い人は、良い詩を書くね。
で、肝心の演奏のほうはどうだったかというと、バックバンドのギター今剛 氏(ファンサイト)にノックアウトされた。
バンドは、陽水のほか、ピアノ1、ベース1、ドラム1、ギター2という編成だったのですが、どいつもこいつもビジュアルが濃い。
その中で、ひときわ異彩を放っていたのが、今剛さん。
肩甲骨くらいまである長髪に髭ヅラで、そこだけヒッピームーブメントが巻き起こっていると言っても過言ではなかった。井上陽水が、近所で犬を散歩させている普通のオッサンに見えてくるから不思議だ。
陽水そっちのけで、彼の一挙手一投足に視線が釘付け。
で、最後に申し訳程度に、陽水の歌に触れておく。
1曲目、アコースティックギター1本(バックにギターがもう一本あったかも)の「東へ西へ」でスタート。
しょっぱなから、不条理な陽水ワールド全開。
その後、2時間弱に渡り、ノンストップトーク&演奏でした。
アンコールは、「氷の世界」「アジアの純真」「渚にまつわるエトセトラ」「夢の中へ」「少年時代」と超有名曲のパレード。
エレキ編成での「氷の世界」には度肝を抜かれました。
で、最後はしっとりと「少年時代」。
さすがの年の功、見事な緩急使い分け。
やられまくりでした。
ステージを去るとき
「今日は本当にありがとうございました。皆様のご健康とご多幸をお祈りしつつ去ります。ありがとうございました。また機会があったら会いましょう」
と言ってた。
「また会いましょう」なんて、いつもは適当に聞き流すところだが、今日ばかりは「もう一度井上陽水の公演を見たい!」と本気で思った。
ちなみに、東大寺で Puffy の「アジアの純真」&「渚にまつわるエトセトラ」を聞いたので、あとは奥田民生ヴァージョンを聞けば、コンプリートです。