僕らのジャンクフードの王様・マクドナルドですが、それを何と呼ぶかで、お里が知れるとか、知れないとか。
関東地方では「マック」と呼ばれ、関西地方では「マクド」と呼ばれるとか。
当方は道産子アイデンティティーを有しているので、京都に住もうがなんだろうが、とにかく「マック」と呼んでる。
たまに関西出身者との間で、醜い「マック vs マクド」論争をしたりしなかったりするが、英語の語感的にも「マック」が最適だと信じてる。
それに対しては、コンピュータのマッキントッシュと区別が付かないから「マクド」と言うべきだという意見もぶつけられたりするのだが、とりあえず「ビートルズと “Apple” の商標で争った過去のある会社なんだから、んなこたぁどうでもいい!」と全く理由になっていない理由で拒絶することにしている。
こういう関東人と関西人との醜い言い争いを尻目に、「マクダーナル」と発音する、スカした舶来帰りも巷にいるとか、いないとか言われているが、幸いなことに僕はそういう人物には過去1人にしか出会ったことがない。
ただ、彼が本気でそう言っていたのか、ネタで言っていたのかはよく分からないし、今さら突き止めようとも思わないので、この話はこれくらいにしておく。
本日、ちょっと調べ物をしていて、ついでに山形浩生の文章「味なことやるビッグマックインデックス」を見つけて読んでた。
(現在、インターネット・アーカイブでしか読めなくなってる。ここ)
ビッグマック・インデックスというのは、英 The Economist 誌が発表している指数で、世界各国の通貨の購買力を測る指標。
世界企業のマクドナルドは、世界中どこでも同じコストで同じビッグマックを売っていると考えられる。そこで、各国通貨でのビッグマックの価格を比較すれば、為替相場のかわりに使えるだろうという話。
(通常の為替市場では投機目的で売買する人が出てくるから、為替市場の相場では人々の購買力を正確に反映しない可能性がある)
例えば、2007年7月5日に発表された指数によれば、
・アメリカでのビッグマックの価格: 3.41ドル
・日本でのビッグマックの価格: 280円
・ビッグマック・インデックス: $1 = 82.1円
となっていたそうだ。
この当時、為替市場では $1 = 122円で取引されていた。
ビッグマック指標が人々の購買力に基づくので、「より正しい経済指標」であると考えれば、為替市場相場は実際よりも(ビッグマック指標よりも)円安であると判断できる。
長期的なトレンドで市場相場が「正しい指標」に近づいていくとするならば、去年の7月以降円高に触れるはずである。
この予測は当たっていて、今日の為替相場は $1 = 106.73円だ。82円まではまだ遠いけれど、徐々に近づいている。
ていうか、ていうか、ビッグマック・インデックスは巧妙なジョークであるという話もあるけれど。
さきの山形浩生の記事でも
◆ジョークではあるけれど、まったくのおちゃらけじゃない
そもそもビッグマックのお値段を決めるのはだれだろう。だから鵜呑みにするなよ。ジョークだからね。でも、ジョークではあるけれど、まったくのおちゃらけじゃない。きちんとした理論をバックに、実装でちょっとだけおふざけを入れた、とってもためになる頭のいいジョークなのだ。世界中でちょっとでも国際ナントカのお金がらみのことをしている人なら、かならず知っているし、最低でも、飯時のジョークのネタには確実に使える。
なんて、ちゃんと書かれてるし。
「きちんとした理論をバック」という点に関しては、とりあえず彼の記事を読むかwikipedia の「購買力平価説」を見ると良いと思われ。『マンキュー経済学〈2〉マクロ編
じゃあ、どこがジョークなんだろうか。
・プライス・テイカーとプライス・メイカーをすり替えてるところ?(購買力平価では完全競争を仮定しているけれど、ビッグマックは独占だ)
・供給曲線を固定しても、国ごとに需要曲線が違うことを無視してる点?(ビッグマックに対する需要が異なれば、それだけで価格が変わる。購買力と関係なく)
夕方、そこまで考えて、お腹が空いたので、せっかくだからってことで、ビッグマックを食べに行くことにした。
セットにしてしまったので、ビッグマック単品の値段は分からなかったが、コーラとポテトを付けて 590円だった。
レジには2人の女の子がいて、僕に接客してくれたのはメガネっ娘で、それはそれで良かったんだけれど、ちょっと愛想がなさすぎたかんじ。
まぁ、僕みたいな怪しいおっさんがやってきたから、警戒を解くことができない彼女の気持ちも分からんでもないから、笑って許すけど。
本日は、完全にマクドナルド・モードになっていたらしく、気が付いたら『ハンバーガーの教訓』という本を手に取っていた。著者は日本マクドナルド・ホールディングス CEO の原田泳幸。
590円のビッグマックセットのお供にする時間つぶしの本が、720円という点になんとなく納得がいかないものの、まぁそういうものかもしれない。
かなりざくっと眺めただけだけれど、本書のメインテーマは「ビジネスの成功は、個人を尊重すること」に尽きているような気がする。あまり新しい発見はない。
細かい話として、
・マネージャーたるもの、現場を知る必要がある
・成功に油断すると、足元がすくわれる
・個人を活かす人材育成
とかとか、必ずしもみんながみんな実践できているわけではないが、わざわざ言われなくても分かりそうなかんじだなぁ、と。
#あくまで、パラパラと眺めただけなので、アレだけど。
でも、1章2節の「企業の人材育成と、個人の価値」というところは、ちゃんと読んだ。
マクドナルドに設置されているという “ハンバーガー大学” の話が載っていたし、マクドナルドの人材育成について非常に興味があったから。
なんで興味があったかというと、昨日、「名ばかり管理職」だった男性が日本マクドナルドに不払い残業代などの支払いを求めた訴訟を起こし、勝訴したというニュースが流れていたから。
日本マクドナルドの埼玉県内の直営店の店長、高野広志さん(46)が、店長を「管理監督者」(管理職)とみなして残業代を払わないのは違法だとして、未払い残業代などの支払いを求めた訴訟の判決が28日、東京地裁であった。斎藤巌裁判官は原告の主張を認め、同社に過去2年分の残業代など約750万円の支払いを命じた。
この問題がマクドナルド内部でいつころ持ち上がったのかは分からないが、今月出版されたばかりの『ハンバーガーの教訓』では一切触れられていない。
その代わり、店長待遇について
・2005年より、マネージャー(店長資格)をもつ社員数を増やしている
・「人が資産」なので、人件費上昇は厭わない
・マネージャーが育つことで、クルー(アルバイト)が気持ちよく働ける
・マネージャーは成果連動報酬が与えられる
などと説明されている(p.31-34)。
マネージャーの数(もしくは社員の中の比率)がどの程度であるのかや、報酬が具体的にどんな成果に連動するのか(売上げ?アルバイト採用数?)などの具体的な情報は出ていないので、実は読んでいてよく分からなかった。
その上、紙幅の比率で言えば「アルバイトが気持ちよく働けるようにすることが第一」みたいに読めてしまった。
昨日の判決に照らせば、店長に対しては
・社員採用の権限がない (アルバイトは採用できる)
・勤務時間を自分で決められない
・メニュー、価格設定の権限がない
・ヘタすると部下よりも収入が減る
など、およそ管理職であるとは言いがたい処遇であったと認定された。
この訴訟報道を見た後だから言えることだが、確かに本書の中でも管理職がいったい何をやらされているのかわからず、けっこうメチャメチャな気がしないでもない。
本書の冒頭文は
成功している「企業経営」には「盲点」というものがあるのを痛感した。
という、センセーショナルな文章から始まっている。
これは、2007年にマクドナルドで調理日時を示すラベルを偽装していたという問題について言及した文章なのだが。
マクドナルドの「名ばかり管理職」の問題が、今年の盲点の一つだろう。
今後、CEOの原田氏がどう舵を取っていくのか、ちょっぴり注目しようと思ってる。
報道によれば、同じような境遇の店長が全国に1700人ほどいるらしいし。
良い意味で、期待しています。
・・・ところで、重箱の隅ですが
また、定年制度があるからこそ貯蓄しようと考える人は多いのだから、GDP(国内総生産)を押し下げてしまい、好況への転化を阻害している側面があるのも見逃せない。
『ハンバーガーの教訓』原田泳幸 p.193
って、筆が滑っただけだよね?
貯蓄が増えることによってGDPが下がるというのは、不適切だよね?
GDPは基本的に労働者と資本の生産性に依存するのだと思います。
貯蓄が増えても、資本投資が行われればGDPは上がると考えられるし。
日本の高度成長期には、貯蓄率は高かったらしいけれど、GDPはガンガン増えてたのだし。
「貯蓄が増えて、モノが消費されないので、好況への転化を阻害」が正しいんだよね?GDPうんぬんじゃなくて。