こりゃ面白い。
小中学校の女子が読む、子供向けおとぎ話だろうと勝手に思い込んでいた自分を叱りたい。
抑圧された社会に生きていた少女が、女性の権利も尊重すべきだという近代社会の中で自我を形成し自立していく物語だと思って読めば、そのテーマは現代でも通じる(通じるってことは、今の世の中が女性にとって理想的ではないということなのだが)。
もしくは、そんなに小難しいことを考えなくても、少女のカワユいプチ・ロマンスものとして、ホンワカと読める。
この作品のスタイルも特徴的で面白い。
主人公の女の子が、あしながおじさんに書いた手紙という形式になっている。大学入学から卒業までの、およそ4年間にわたる手紙によって全てのストーリーが語られている。
そもそも、主人公が手紙を書くことになった理由は、あしながおじさんにそう言われたからだ。
孤児院で育った主人公は、とある篤志家に文章の才能を認められる。そこで、その篤志家は、学費を全て負担して彼女を大学に行かせることにする。ただし、奨学金の条件として、主人公は篤志家に対して、毎月の様子を手紙で報告する必要がある。
その手紙が、小説『あしながおじさん』そのものになっているというわけだ。
彼女の書く手紙の内容が、これまたとりとめがなくて、愉快。
まるで自分があしながおじさんになったつもりで、自分に宛てられた手紙だと思うと、萌える。
基本的に、ポジティブで前向きな内容ばかりなので、読んでいて気分も良い。
現代風に言うなら、カワイコちゃんのブログ記事を毎日読んでるような気分かな。
あしながおじさんからの返事は一切ないのだが、主人公の文面からにじみ出る、あしながおじさんのちょっぴり我侭でヤキモチ屋っぽいところも微笑ましい。
谷川俊太郎の訳も絶妙だったね。
最後に、一番気に入ったフレーズを抜書き
あのね、おじさま、だれにでもいちばん必要な性質は想像力をもつことだと、わたしは思います。それがあれば、ほかの人の立場に自分をおいてみることができ、人にたいしてやさしく、思いやり深く、理解ある人間になれます。
至言だね。
主人公のジュディも豊かな想像力で、あしながおじさんの立場に身をおいて、思いやりを持ってた。
・・・でも、いちばん重要なところは想像しきれなかったみたいですな。
そこがかわいいんだけど。