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『探偵はひとりぼっち』 東直己

「あっけない幕切れ」

この言葉は生まれてこの方一度も使った記憶はないのだが、最近の当方のマイブームであるところの”すすきの探偵“シリーズの5冊目、『探偵はひとりぼっち』を読み終えたとき、僕は思わずそうつぶやいてしまった。
#脚色ナシ

事件の発端は、すすきののゲイバーに勤めるオカマが自宅マンションの駐車場で撲殺されたこと。彼(彼女?)はゲイというマイノリティ社会に参加しつつも、多くの人々から慕われていた。主人公ともたいへん親しく、主人公は彼の死の真相を探り始める。しかし、その事件の背後には大物政治家の影がちらつき、様々な妨害にあう。警察やマスコミも事件から手を引き始め、市井の人々も強大な権力に恐れをなし、主人公への協力を渋り始める。主人公は孤立無援で立ち回らなくてはならなくなる。


ラスト直前までは、目が離せない展開。
他の巻では常に主人公の味方をしてくれるヤクザや新聞記者たちも、今回はよそよそしい。けれども、陽の当たらないところでこっそりと主人公に手を差し伸べる友情に、思わず「漢だ!」と感激してしまう。
ストーリーでは、ゲイコミュニティに生きる人々の苦悩にさりげなくスポットが当てられていて、マイノリティの問題についてちょっと考える契機が与えられたり。
多くの登場人物が出てくるが、誰が本当の敵で、誰が味方なのか分からなくてハラハラドキドキするし。

そんな感じで、ラスト直前までは目が離せない。
しかし、ついに黒幕が明らかになったとき、なんだか隠し玉でアウトをとたれたような、まさに「あっけない幕切れ」。
まぁ、意外と言やあ、意外なのだが、人によっては「そりゃ、ねーべ」と言ってしまうかもしれない。

けれど、「あっけない幕切れ」とは言うものの、そこに至るプロセスは引き込まれるし、「人々の徒労」(←伏せてみた)というオチは、僕は嫌いではない。
とにかく、ラスト直前までは面白かった。

5000円のコース料理で、メイン・ディッシュまでは満足したんだけれど、デザートにコンビニ・スイーツが出てきたような感じと言えば、感じ。
そこで、「こんなデザートで興ざめ」と思ってその日のディナー全体をみすぼらしいものだと思う人もいれば、「メインまでは最高だったから、まぁいいじゃん」と喜んで帰る人もいるだろう。
僕は、後者のような感じで、本書も楽しかったと思うことにした。

タンブラァに半分残ったスーパー・ニッカを見て、「もう半分しかない・・・」と思う人は悲観的な人で、「まだ半分もある!」と思う人は楽観的な人だ、みたいな話ってよくあるじゃない。
僕は後者のタイプで、楽観的な人間だと思うし。

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