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『人でなしの経済理論』で奇妙なデジャブ

ハロルド・ウィンター著・山形浩生訳『人でなしの経済理論: トレードオフの経済学』の2章、pp.27-28 に、著者がパーティーで知り合った女性との会話のエピソードがある。

彼女は保健政策が専門の若く知的な新任教授で、「人の命の価値は無限であり、それに金銭的価値をつけるなど言語道断」と考えている。それに対して “人でなし” の著者が「いやいや。あなた自身だって、無意識のうちに自分の命の値踏みをしてるよ」と丸め込むエピソードの箇所。

訳者の山形浩生は自身のサイトにたくさんのテキストを掲載している人であり、僕もちょくちょく覗くのでそこで読んだのだろうと思った。で、原稿バージョンと出版バージョンではどの程度違いがあるのか調べてみようと思って、彼のサイトで該当原稿を探した。
しかし、探せど探せど、見つからない。不可解だ。
#彼は商業雑誌の原稿とかもバンバン載せてるし。ちなみに、彼が自分の著作権について表明する文章は名文。

で、google などを駆使して探して、やっと見つからない理由がわかった。


山形浩生のサイトではない所で見たんだった。

メモ:「いのちをお金ではかるなんてとんでもない」ですか? –left over junk

このblog主の人は、去年の夏に原著を入手して、該当箇所のみ独自に翻訳してアップしている。
今、山形訳と見比べてみたのだけれど、文体がとても似ている。

偶然似てるだけなのか、彼らは知り合いで自然と訳のスタイルが似てきたのか、それとも翻訳スキルが高まると必然的に文体は似てくるのか。
よーわからんけれど、面白いわなぁ。

さて、気になる『人でなしの経済理論』の中身について。
僕はまだ初めの方しか読んでないのだけれど、「トレードオフ」とか「人の命にすら金銭的価値はつけることが可能」とかってことを知っている人にとっては、それほど読んでも面白くないかも(いろいろなエピソード集としては面白い)。
また、「人の命に値段をつけるなんてけしからん」とか「物事に優先順位をつけるのはイカン」とかいう信念を持っている人は、読むだけでムカムカするので黙殺するが吉(そういったタイプの人が世の中には少なからずいることを僕は知っており、そういった人たちを馬鹿にする意図はここにはないので誤解しないでください)。

それ以外の人は、「いのちをお金ではかるなんてとんでもない」ですか?の訳を試金石に、そこを読んで興味が持てそうだったら読むがいいさ。

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