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タイトルも作者もわからない漫画

 以下の情報だけで、それがなんという漫画なのかわかる人はいるだろうか?

(1) 時代劇漫画(幕末物である可能性が高い)
(2) 作者は女性である
(3) 最近(少なくとも 2010年)、この作家初となる単行本が出た
(4) この作品は1巻で完結ではないらしい
(5) 講談社か集英社(もしくは小学館かも)あたりの大手からの出版らしい


* * *

 本日、行きつけの美容院で散髪してきた。

 僕は特定の美容師さんを指名するわけではないが、店内ローテーションの都合か、何らかの配慮なのか、よく当たる美容師さんがいる。この美容院は、1人を除いて全員が女性美容師だ。

 1人だけいる男性スタッフは、茶色に染めて軽くパーマをあてた髪を肩まで伸ばした、色白細身の男前だ。KinKi Kidsの堂本光一を想像してもらえばしっくり来る。ていうか、僕は初めて彼を見た時から、心の中で「堂本光一」と呼んでいる。とてもよく似ている。いつも堂本光一にそっくりだと思っているのだが、本人や他のスタッフに対してそのことを話題にしたことはない。ずいぶん付き合いも長くなったし、今さら言い出すのも恥ずかしい感じになってきている。

 ていうか、散髪してもらいながらおしゃべりするのが苦手だ。あんまり喋りたくない。どんな髪型にしたいかとの質問に答えるのすら億劫なときがある。
「カルテに書いてある通り、前回と同じにして」
と一言だけ告げて、あとはすぐに持参した本を読み始めて、”俺には話しかけるなオーラ” を醸しだす。

 今日の担当は、かの堂本光一くんであった。彼はそもそも話好きなのか、それとも女性ばかりの店内にあってきまり悪そうにしている(ように見える)僕に気を使ってくれるのか、特によく話しかけてくるのが常だ。それを避けるためにも、僕はいつにもまして難しい表情を装い、「無一文の億万長者」という400ページもある堅そうな本を真剣な素振りを装って読み始めた。

 作戦が功を奏して、必要最低限のこと以外は話しかけられることもなく、粛々と散髪は進んだ。ヘアカラーも終わった。少し離れた洗髪場に移動することになった。
 そろそろ終わりに近づいたことで、僕にも油断があったのかもしれないし、彼も虎視眈々とチャンスをうかがっていたのかもしれない。

 本をおいてシャワーボウルに頭を預けたそのタイミングで、
「本、お好きなんですね。あの本はどんな内容なんですか?」
と聞かれた。

 さすがにそれを黙殺するほどには、僕も非社交的ではない。世界最大の免税ショップチェーン店 DFSの創業者の半生記であることを説明した。フォーブスの長者番付にランクインするほどの大金持ちになったのだが、私財の全てを匿名で慈善事業に寄付した偉い人である。貧乏な一家に生まれながら億万長者になるほどの才覚にも、世のため人のために貢献しようという高潔な人格にも学ぶところは多いのだと語った。

 最初は乗り気じゃなかったんだけれど、そこからは本の話でひとしきり盛り上がった。
 彼は仕事柄、読書にはあまり興味もないし時間もないのだけれど、たまに読むことはあるという。客に薦められた『金持ち父さん貧乏父さん』は面白くなかったという。彼の雇い主からは「松本清張の『砂の器』は、人間の器が大きくなるから読め」と言われて久しいけれど、まだ読んでいないそうだ。僕は『砂の器』は映画を見て面白かったこと、しかし僕も小説は読んでいないこと、さらに、小説の『砂の器』は上下分冊で読むのが大変だろうから『点と線』(これは僕も読んで面白かった)あたりから入門してみてはどうかなどと話を続けた。

 髪の毛をブローしてもらいながら、彼は自分の馴染みの客について話し始めた。

 僕は職業人が自分の顧客のことを他人に話すのはよくないことだと思っているし、それを聞くのも不愉快だと思う人間だ。だから、最初は嫌な方向に話が向かってしまったなと良い気がしなかった。
 しかし、その話はそれほど悪い噂ではなかったし、結果的に聞いて良かったと思える話だった。それに、そのことをここに書こうとまで思ったくらいだ。

* * *

 ”堂本光一”美容師の馴染みの客に、漫画家の卵がいたそうだ。20代半ばを過ぎても出版社への持ち込みに回る日々だったという。
 それがついに陽の目を見て、今年になって処女作が出版されたという。

 客である漫画家は、”堂本光一”くんに出版の報告はしたけれど、タイトルやペンネームは教えてくれなかったという。その代わり、次回来店時に献本してくれる約束だという。
 まだ彼女が店に来ないので、今はまだタイトルがわからないという。

 僕は、”堂本光一”美容師を介して縁のできたその漫画家の作品をどうしても見てみたい。だから、知っている人がいないか冒頭で呼びかけてみた次第。
 あてずっぽうでもよいので情報をお寄せいただければ幸いです。範囲が絞れるだけでも嬉しいし。

【蛇足】
 その謎の漫画家の知人に、恩田チロ(←クリックする前に周りの視線に注意を払え)という女性エロ漫画家がいるらしい。
 彼も恩田チロの漫画を読んだことはないのだが、ネットでいくつか絵を見た限りでは、なかなかカワイイ女の子の絵を描くのだという。

 店には女性スタッフや女性客がいたので、僕と彼は声を低めてその女性エロ漫画家の話をしていた。まるで、修学旅行の夜に猥談をする男子中学生に戻ったような気分だった。

 そして、彼は高校時代に遊人(代表作「ANGEL」)が大好きで、彼の著作を全て集めたらしい。そしてまた、「最近は絵柄が変わったので、もう買ってない」と言っていた。
 さらにまた「遊人だけは “そういう目的” ではなくて、純粋に絵が好きだったんです」と言っていた。

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