【購入判断部門】 の課題図書、『アルジャーノンに花束を』の読書感想文です。
自信を持って言えることは、アルジャーノンというのがネズミの名前であること。主人公の名前は思い出せません。
ストーリーを今更綴るのもどうかと思いますが、ざっとご説明しますと、成人してもなお万年幼児性知能を授かった主人公が「おりこうになりたい!」と切に願い、マッドサイエンティストの力を借りてスーパーインテリジェンスを手に入れるのです。アルジャーノンという実験用ネズミと一緒に。
そして、なんじゃらほんじゃらやんややんやとありまして、画期的とも思われた実験は失敗に終わります。スーパーインテリネズミとなったアルジャーノンはある一定の時間を過ぎるとスーパーインテリパワーを失ってしまい、(覚えてないけどたぶん)寿命で死にました。勿論、主人公もアルジャーノンと同じ実験の被験者であるゆえ、スーパーインテリから否応なく元のIQに戻っていくという残念な末路を辿ります。本書は我々の良心、思いやりのある想像力や理解しようと努める心を計るバロメーターでもあります。そしてそれは、最初の数十ページを真摯に読めるかどうかにかかっています。
特筆すべきはその文体表現におけるわかりやすい説明方法。物語は主人公の日記を読む形で進んでいきますので、IQの高低が文体で一目瞭然なのです。
軽度知的障害者であったイワン(仮名)は、最初ひらがなでしか考えられない状態でした。その思考の内容も、何を言いたいのやら理解しにくいものでした。ちょうど、こんな具合です。→いわんわちょとちょーばかだたのでひらがなしかわかんないていうのもなぜならいわんわちょー??ばかだから。これのひらがなのぶんしょはまじよみにくいのでみんなこまらせたね。ぎゃるもじとかのおふぇんすでふぇんすきのー?をとーちゃんたちわかてなーい!
これが数十ページ地獄のように延々と続き、脳の手術後、イワンが漢字で思考するにしたがい我々はついに彼が何を言っているのか理解できるようになるのです。
そして終盤、正しい文法の読みやすい文章からまた難解なひらがなイワンに戻っていく主人公の姿(というか文体)が読者の哀れを誘うことは言うまでもないのですが、ひらがなで綴られた文章を読むのはけっこう本当に辛かったのでわたくしは最初の1ページ目から既に殆ど読み飛ばしてしまいましたことをここで勝手に懺悔します。申し上げなければならないことは、わたくしがこの本を読んだのは12歳~14歳の時だったということです。IQと人間の幸福、はたまたIQと愛の救済及び不毛との関係性を汲み取り吟味するにはあまりにも無邪気な少女でした。
そういうわけで、わたくしが今回ご推薦したい夏休みの一冊は、マルタン・パージュ著『僕はどうやってバカになったか』でございます。 Ignorance is blissという言葉があります。こちらは、ある種の人間にとって知能は不幸の原因にしかならず、もはや病ですらあると考える若きウェルテル(仮名)が、「バカになりたい!」と切に願い、脳手術を受けて(いや、投薬だったかも)まで知性を失う話。なお、ここで言うある種の人間とは、わたくしが前述致しました「思いやりのある想像力」がありすぎるタイプのことです。
酢豚に入れるパイナップルなみの思いやりしか持たない一般読者としましては、君はもう十分愚かだよ!、と優しく諭してあげたいところですが、ウェルテルの悩みは太平洋よりも大きくマリアナ海溝よりも深いので、「無知はホトケ(死)」にも繋がるアルジャーノン理論と併せて読んでみたら心理学的にも?おもしろいのではなかろうかと思います。わたくしがおもしろがっているわけではありません。ちなみに、わたくしアルジャーノンの結末はボンヤリ覚えているのに、数年前に読んだこちらの結末はどういうわけか忘却の闇の彼方です。
ハッピーエンドだったのかしら?・・・気になってきました。いつか読まれることがあれば、教えてください。