今回,ハズレ.
端的に感想を述べると
「オナニーエッセイほどつまらないものはない」
ということ.
著者に対して非常に失礼な書き方になってしまいましたが.
もちろん,彼女が「作文のプロ」として,出版社の意向に沿ってその手の文章を書いたのだろうから,彼女の人格を否定する意味では言っていません.
#あと,あちこちに寄稿したエッセイの寄せ集めなので統一感がないのも仕方あるまい.
先の言い方が悪いとするなら,マイルドな表現に改めるとすると
「等身大の山本文緒がわかる.良くも悪くも」
になります.
売れっ子作家になるまでの苦悩とか,成功者の喜びとか,恋愛観とか,若い読み手(♀)に対するエールとか,いろんなことがとても主観的に書かれています.
その手のことに興味のある人,もしくはこの本のターゲットと思しき人々(思うに,20-30代で仕事にも恋愛にもがんばりたい,だけど今の自分はなんか違うと思っている女性)にとっては面白く読めるかもしれません.
ただ,読んでいて嬉しかったのは,彼女が札幌に部屋を借りて仕事場を作ったという話.たまに気が向くと1週間くらい滞在するらしい.
どんな土地でも悪い人はいるだろうが,私が札幌で知り合った人は皆一様にさっぱりしていて,ねちっこくない.合理的で親切で押し付けがましくない.
(山本文緒「日々是作文」 p.267)
自分の暮らした街の人を,こういう風に書いてくれると嬉しい.
あと,直木賞受賞前,候補者リストに挙がったという報告を受けるくだりが好き(「愛憎のイナズマ」 p.286).
それが何だったかは忘れてしまったけれど,何かのときに僕も彼女と同じような興奮と冷静さを経験したことがあったような気がする.そのときの自分の心情が活字になって客観的に読めたのが良かった.
なお,読みながら考えたのは,
「結局,alm-ore だって,結局オナニーblog じゃん.そろそろ打ち止めにしてもいいかな」
ってこと.
しかしまぁ,3分悩んで
「アダルトビデオのジャンルにだって,”オナニーもの” はジャンルとして確立してるじゃん.人のオナニーを覗き見したい気持ちはわかるし,きっと少なからずニーズはあるじゃん.いいや,オナニーblog 続けましょう」
という結論に至ったわけだけれど.