wikipedia で黒澤明の作品リストを眺めてみたが、僕は1本も見たことがないことがあらためてわかった。
別にクロサワを見たからといって偉くなるわけではないが、なんとなく教養が足りないような気がしないでもない。
1993年作品の「まあだだよ」は存在だけは知っており、所ジョージが好演しているという噂も聞いてはいた。
なんとなく興味はあって頭の片隅に留めていたのだが、結局そのままになっていた。
それが先日、この作品が内田百閒をモデルにした作品だと知り、俄然興味が増したのである。
そんなわけで、レンタルDVDで見た。
この作品は、内田家で買われていた猫が行方不明になり、それを嘆く内田の日記である。
当方もあるにゃんを飼っており、愛猫家の一人としてこの作品を共感しつつ読んだ。
最初は猫つながりで読み始めた内田百閒ではあるが、読んでいくと彼の偏屈ぶりと独特のユーモア精神にほれ込んでしまった。
そんなわけで、「阿房列車」シリーズ(たぶん、本邦初の鉄ちゃん文学)なんかも読んでいるわけだが。
映画のストーリーとしては、晩年(還暦後)の内田百閒の伝記物語。
教え子たちを集めて、宴会をやりながら、偏屈な屁理屈や愚につかないジョークを飛ばしまくる。
そんな内田百閒を松村達雄がうまく演じてる。
僕はもちろん百閒本人に会ったことはないのだが、彼の文章から伝わってくる人柄や、「阿房列車」の表紙に写っている内田百閒に雰囲気がそっくりなのである。
ものすごい、はまり役。
映画の中では「ノラや」を追従し、飼い猫が行方不明になって落ち込む姿なども描かれている。
内田百閒好きにはたまらない内容。
その反面、内田百閒にこれっぽっちも興味がない人にとっては、退屈この上ない映画かもしれない。
この映画があんまり評判になっていないのはそのせいだと思う。
僕も内田百閒を知らずにこの映画を見たら、10分で見るのをやめていたと思う。
そんなわけで、もし見てみたい人がいたら、とりあえず内田の作品(「ノラや」とか)を読んでから見ることをお勧めするなり。
映画の冒頭シーンをYoutubeで見つけた。