NHK『風、薫る』4回

当方が、NHK朝の連続テレビ小説『風、薫る』の第3回めをNHK+で見ましたよ。

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第1週『翼と刀』

父・信右衛門(北村一輝)がコレラに感染した。
りん(見上愛)を守るため、信右衛門はひとりで隔離病院に行くことを希望した。
けれども、りんは父と離れ離れになることに猛反対した。そこで、下人を雇って家で看病させるという折衷案を提案した。しかし、家には下人を雇うだけの金のないことがわかった。

すでに医者は帰った後で、信右衛門は病院へ行くことができなかった。そこで、彼は自ら納屋に閉じこもった。家老時代に使っていた刀を1本だけ納屋に隠してあり、それをつっかえ棒にしてりんが入ってこれないようにした。
りんがどんなに訴えても、信右衛門は戸を開けようとしなかった。それどころか、入ってきたら刀で切ると脅した。

ちょうどその頃、母・美津(水野美紀)と妹・安(早坂美海)が東京から帰ってきた。しかし、村の入口には柵が設置され、東京から来た者は誰であれ入ることは許されなかった。その場にやって来た元部下の中村(小林隆)から事情を聞かされた。そして、現在は県役人の中村をもってしても美津らを村に入れてやることはできなかった。それどころか、中村は今家に帰れば美津たちも村八分にされるといって諌めるのだった。

夕方になり、りんは着替えを納屋の入口に置いて声をかけた。しかし、父からの一切の反応がなかった。もちろん、押せども引けども戸は開かない。最後の手段として、薙刀の木刀を持ち出して戸を打ち破ろうとした。

その時、中からやっと信右衛門のか細い声が聞こえてきた。かすかな風を頬に受けて目が覚めたという。
信右衛門はこれまで生きてきて良かったと話した。武士の時代が終わった時、一度は切腹も考えたがそうしなくてよかったと言う。今まさに死にかけているが、できることならもっと生きたいと本音を打ち明けた。
そして、りんに向けて、しっかり生きていくよう命じた。たとえ情けないと言われようとも、生きていかねばならないと訓示した。
りんは、きっと優しい風を起こすだろうと予言した後、一切の物音が消えた。

慌てふためいたりんは再度戸に手をかけた。どうやら信右衛門がつっかえを外したようで、戸は簡単に開いた。

しかし、信右衛門はすでに事切れていた。

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NHK『風、薫る』第3回

我が最愛の山瀬まみがラジオ(radikoで聞く)で「桜餅とか、桜味のもの大好き!」と言っていて、俺も昔から桜餅が大好きだし趣味が合ってサイコーだな!と思ったりしてたんだけれど、さらに「ズブロッカ(ウォッカ)は桜餅の匂いがする」と言ってて、おうそういえば俺もズブロッカ大好きだったぜ、卒論を書き上げて提出した夜はズブロッカをがぶ飲みしたなぁ、そしてケロったなぁと思い出した当方が、NHK朝の連続テレビ小説『風、薫る』の第3回めをNHK+で見ましたよ。

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第1週『翼と刀』

直美(上坂樹里)は、教会の牧師・吉江善作(原田泰造)に呼び出された。彼は、孤児であちこちの教会をたらい回しにされていた直美を最後に受け入れた人物で、彼女の家や仕事の世話までしてくれた。直美は彼に恩を感じている。

吉江は、直美に教会の伝道師にならないかと誘った。幼い頃から教会で神の教えを学んできた直美ならばぴったりの仕事だというのだ。
彼に恩を感じている直美ではあるが、物言いはいつも率直だった。伝道師の給料は魅力的だが、伝道師にはならないときっぱり断った。
直美は、正しい人が嫌いであることが理由だと説明した。加えて、正しいことをしているだけで生きていられる幸せな人も嫌いである。家柄の良い人も嫌いだし、善い人も嫌いである。これだけ嫌いな対象が多く、伝道師の資格がないという。
そして何より、自分自身のことが最も嫌いだと話した。

りん(見上愛)は同じ村の百姓の倅・虎太郎(小林虎之介)に想いを寄せていた。
彼の母・栄(岩瀬顕子)がコレラに罹患し隔離病院に担ぎ込まれたことが心配でならなかった。村人たちは虎太郎の家族を村八分同然にして近寄ろうとしなかったが、りんは虎太郎に会おうと病院へ向かった。

りんは虎太郎が町外れの川のほとりでひとり佇んでいるのを見つけた。すぐにそばに駆け寄って元気づけようとした。
手を握って励まそうとしたが、りんは寸前で手を止めてしまった。虎太郎がすでにコレラに罹患しており、それが自分に感染するかもしれないと恐れたからだ。
虎太郎がその動作の意図に気づくのは当然だった。自分と一緒にいればりんまで村八分にされるから一緒にいるべきではないと話、自ら去っていった。

家に帰ってからも、りんは自分の振る舞いを後悔していた。いつもなら父・信右衛門(北村一輝)から学問を習うことは喜びであるのに、この日はあまりが身に入らなかった。

他の家族が留守にしていることもあり、それからは父娘でとりとめもなく、しかし、今まで口に出すことのなかったような内容を話し合った。
りんは、自分や妹・安(早坂美海)が他家へ嫁いだら、年老いた後の両親の世話をみる者がいなくなる。だから、姉妹のどちらかは婿を取って家を継ぐべきだと訴えた。しかし、信右衛門は、夫婦というものは互いに愛情を持ち、笑い合う仲であるべきだと話した。だから、家のために犠牲になるべきではないというのだった。

その頃、母・美津(水野美紀)と妹・安は東京に住む一ノ瀬信勝(斉藤陽一郎)を訪ねていた。彼は信右衛門の弟だが、現在は大きな商家となって裕福な暮らしをしていた。そんな彼が、りんや安など姪たちの結婚の世話をしてくれているのだ。
縁談の話とは別に、美津は信勝にこっそり着物と帯を差し出した。それは美津の母の形見の品である。信勝は遠慮がちではあるが、それを十円で買い取った。美津は夫にも内緒で、以前からこのようにして家計を支えていたのであった。

そのようなことはつゆ知らず、信右衛門はりんに家老を辞し、新政府の役人にもなろうともせず、百姓になった理由を話した。
彼が仕えていた藩主は、戊辰戦争で新政府側についた。そうすることで自国の土地や民を戦火に巻き込むことを回避したのだ。しかし、藩主は徳川への恩義も忘れていなかった。板挟みで悩んだ結果、自ら死を選んだ。

その時、信右衛門はこのままでは世の中がさみしくなると感じた。誰かが弱者や敗者の味方でなければならない。だから自分が武士の身分を捨て、百姓になろうと決めたと言う。
ただし、その選択が正しかったのか誤りだったのか、未だにわからないと話した。

その日の教材は『論語』だった。りんは「過ちて改めざる。これこそ過ち」の意味が腑に落ちたような気がした。
りんは、煮物をつくると虎太郎の家へ密かに届けた。母が入院したことで女手がなく、また村八分同然にされているので虎太郎には嬉しいことだった。

そんな矢先、父・信右衛門が突然激しい咳をして苦しみだした。

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NHK『風、薫る』第2回

強風で折りたたみ傘が手から離れて飛ばされてしまった上、会社帰りの薄暗い中でそれを見失ってしまい、そばにいた人に指さされたところを見ると10数メートル彼方に転がっており、恥ずかしい思いをしながら拾いに行った当方が、NHK朝の連続テレビ小説『風、薫る』の第2回めをNHK+で見ましたよ。

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第1週『翼と刀』

隣町でコレラ患者が発生したという。しかし、宿屋の客がたった一人罹患しただけで、その宿屋はすぐに閉鎖して消毒処理されたという。
りん(見上愛)たちの暮らす農村には感染拡大はなさそうだということで、家族も村人たちも安堵した。

りんと妹・安(早坂美海)は、父・信右衛門(北村一輝)から初歩的な教育を受けている。信右衛門は娘たちを女学校に行かせたいと思っていたが、今の暮らしではそれが叶わないのだ。信右衛門は娘たちにすまないと頭を下げた。

娘たちは父から学べれば十分だと答えたが、信右衛門は学問の重要性を改めて説いた。
今のような変化の激しい時代には、一時の風に流されず、自分で本質を見極めることが重要である。そのためには学問が大事だと話した。
そして、「学ぶことは世をわたる翼となり、身を守る刀となる」と語った。
りんは、それに感じ入った。

母・美津(水野美紀)は、りんの妹・安を連れて東京へ向かった。
元々りんに持ち込まれた縁談であったが、本人が乗り気ではなく、むしろ安が大いに興味を示した。そこで安を嫁に出そうということになったのだ。その顔合わせのために上京した。

ふたりが東京の街を歩いていると、背後で騒ぎ立てる女と男の声が聞こえた。
振り返ると、直美(上坂樹里)がスリを捕まえて財布を取り返しているところだった。その財布というのが、美津のものだった。さっきすれ違いざまにぶつかった隙にスられたのだ。

直美は見事にスリの男を組み伏せると「貧乏な田舎者から金を盗むな。金を盗むなら金持ちから盗め」と罵った。スリの男は直美の素性を知っており、腕を締め上げられながらも直美のことを「耶蘇のみなしご」と罵り返した。
そのやり取りを聞いた美津は、親のないことをバカにした男のことが許せなくなった。男が持っていた木の棒を奪い取ると、身に付けている薙刀の技で男をしたたかに打ちつけた。男はほうほうの体で逃げ出した。

美津は直美に向き直ると、金持ちであっても金が盗まれていいわけではないと、直美の煽り文句をたしなめた。礼を言われると思っていた直美は面食らった。

美津と安が東京で騒動に巻き込まれている頃、りんの村でコレラ患者が発生した。
すぐさまその家は封鎖された。遠巻きに集まった村人たちは、コレラの家を冷ややかな目で見た。
りんと虎太郎(小林虎之介)は、好きで病気になったわけではないと声に出すが、村人たちの態度は変わらなかった。

その直後、虎太郎の母・栄(岩瀬顕子)もコレラに感染した。彼女は病院へ運ばれていった。
りんは医者に診てもらえるなら安心だと思ったが、村人の話によれば、彼女が連れて行かれるのは隔離病院であり、そこから生きて帰ってきたものはいないのだという。貧乏人はろくな治療も受けられず、ただ隔離されるだけだというのだ。

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NHK『風、薫る』第1回

今シーズンの根性だめしを始める当方が、NHK朝の連続テレビ小説『風、薫る』の第1回めをNHK+で見ましたよ。

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第1週『翼と刀』

明治15年(1882年)、文明開化によって東京府は目まぐるしく変化していた。人々は西洋の目新しいものをどんどんと取り入れ、競うようにそれを互いに見せびらかしていた。

そんな街の中で、大家直美(上坂樹里)は異彩を放っていた。
彼女は誰も着ないような古臭い江戸風の装いで歩いていた。マッチ箱製造の手工業で糊口をしのいでいるが、そもそもが薄給のうえ、しくじって材料を無駄にするとその分が給金から引かれてしまう。しかも、親のいない孤児であった。そのようなわけで、好むと好まざるとにかかわらず、薄汚い格好しかできないのだった。

それでも、直美は自分の境遇を嘆いてはいなかった。
小綺麗な格好をした女学生たちにバカにされても
「いかにも、私がみなしごで耶蘇の貧乏女ですが、なにか?」
などと堂々と言い返す強気な性格でもあった。

同じ頃、栃木県那須の農村には17歳になる一ノ瀬りん(見上愛)が暮らしていた。そこは東京の繁栄とは正反対なのどかな田園風景で、彼女は百姓の娘として農作業に従事していた。

彼の父・信右衛門(北村一輝)は、藩の筆頭家老を勤めていたほどの名士である。しかし、ご維新の時に突如として武士を辞め、百姓になった。りんは当時3歳であり、父が武士を辞めた事情を知らない。誰に尋ねても理由を教えてくれなかった。
それでも、父・信右衛門は今でも周囲からの尊敬を集めている。旧藩の関係者は近所に大勢暮らしており、彼らは今でも信右衛門のことを丁重に扱う。家来の中村(小林隆)などは、今では県役人として立派に勤めているが、足繁く信右衛門を訪ねては政府への仕官を勧めてくる。
しかし、信右衛門は百姓の暮らしを変えるつもりはなかった。ただし、頻繁に農作業の手を休めては和歌を詠むなど、どこか浮き世離れしているところもあった。

一方、りんの母・美津(水野美紀)は表面では信右衛門に従っているものの、自身が旧藩主の一族出身ということもあり、内心は家名復活を望んでいた。今でも娘たちに薙刀の稽古をつけ、気位が高かった。

りんと、2つ下の妹・安(早坂美海)は年頃ということもあり、いつか自分たちが結婚する時のことを考えずにいられなかった。女の人生はどこに嫁ぐか次第であり、商家の妻はどうだ、宿屋の女将はどうだなどと、浮ついた話に終始していた。

そんな矢先、りんの縁談話が持ち上がった。相手は東京で手広く商売をしている商家の長男だという。妹がふたりいて、なかなかの男前だという。妹・安は滅多にない良縁だと言って、自分が嫁になりたいと騒ぎ出す始末だった。
しかし、りんは乗り気がしなかった。一ノ瀬家を継ぐためには婿を取らねばならない。大きな商家の長男が婿に来てくれるはずなどないからだ。家のことを思えば、今回の縁談は成立しないと思った。
けれども、父・信右衛門は婿を取らなくてもいいと静かに話した。りんが幸せになるのが一番で、家のことなど考えなくてよいというのだ。
その日は、結論は出ず、保留となった。

実はりんは、近所の百姓の息子・虎太郎(小林虎之介)のことが気になっていた。虎太郎もりんのことをいつも気にしている。農作業中にふと目が合うこともしばしばである。
本人たちはそれを表に出そうとしないが、端から見ている安にはふたりが惹かれ合っていることが明白だった。安が姉への縁談を横取りしようとしたのも、それが多少関係していた。
安から虎太郎に嫁げばよいと冗談を言われ、りんは怒ったものの、やはり彼のことを意識せざるを得なかった。百姓の妻になった自分のことを想像できないでもなかった。

翌朝、畑に向かって歩いていると、向こうから虎太郎が駆け寄ってきた。
真剣に何かを訴えようとする表情にりんはドキリとした。

そんな虎太郎から出た言葉は、コロリ(コレラ)が発生したという知らせだった。

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NHK『ばけばけ』第6回 [終]

明日放送の山瀬まみが復帰するというので今から胸がドキドキして落ち着かない当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ばけばけ』の第6回めをNHK+で見ましたよ。

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第2週『ムコ、モラウ、ムズカシ。』

トキ(高石あかり)は婿をとることに決めた。一家の働き手を増やして借金を返すためだ。そうでもしなければ到底今のどん底の暮らしから抜け出せないと考えられるのだ。

トキは、紡績工場の同僚の女工・チヨ(倉沢杏菜)とせん(安達木乃)とともに、縁結びで有名な八重垣神社に参った。
そこで占いをしたところ、同僚のふたりは良縁が近いという結果が得られた。一方、トキの占い結果は、結婚相手はいつか見つかるものの、それは果てしなく遠い未来であるというものだった。

トキはすっかりしょげかえってしまった。夕食も満足に喉を通らない。トキの両親(岡部たかし池脇千鶴)は占いは当たらないこともあると言って慰めたが、場の空気を読まない祖父・勘右衛門(小日向文世)は八重垣神社は由緒正しい神社なので占いのはずれるはずがないと追い打ちをかけた。トキはますます塞ぎ込んだ。
トキの両親は、良い見合い相手を近いうちにきっと見つけてやると約束した。見合いを成功させて、占いの結果を覆せばいいと慰めたのだった。

両親は、結婚相手に望むことを尋ねた。しかし、トキは働き者で金を稼ぐ男以外に希望はなかった。あくまで借金返済のための結婚だと割り切っているからだ。
ただし、もし叶うのならば、怪談の好きな人がよいと述べた。怪談好きであれば、たとえ人間以外の化物でもよいというのがトキの願いだった。

しかし、トキの見合い相手探しは難航した。
向こう見ずな父・司之介は勤めの牛乳配達にかこつけて県知事の屋敷に出向き、知事の息子を婿に欲しいと直談判した。身分違いをわきまえない失礼な要望ですぐに叩き出された。牛乳配達の親方からもこっぴどく叱られた。

母・フミは遠縁であり、トキの勤め先の紡績工場も経営している雨清水家の妻・タエ(北川景子)に相談した。自分で見合い相手を探しても見つからないと言ってなかば泣きついたのだ。するとタエはすでに見合い候補を探し始めていると答えた。トキが工場で婿探しをしていると喋っているので、夫・傅(堤真一)を経由して話を聞いていたのだ。
その返答にフミはいささか面白くなかった。トキの母親である自分になんの連絡もなくタエが独自に探していたことで、自分が除け者にされたような気分になったからだ。それを理解してタエは素直に謝った。

ある朝、工場に出勤したトキは、一緒に神社で占いをしたせんに結婚相手が見つかったと知らされた。確かに彼女の占い結果は早くに良縁に恵まれるというものだった。
占いがよく当たるという証拠を見せられたと同時に、せんが羨ましくなってトキの表情は硬くなった。

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NHK『ばけばけ』第5回

某知人がハンバートハンバートの背の高い方と蕎麦屋で相席になったことがあると聞いたことのある当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ばけばけ』の第5回めをNHK+で見ましたよ。

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第1週『ブシムスメ、ウラメシ。』

明治19年(1886年)、18歳のトキ(高石あかり)は織物工場で働いていた。同僚はみな貧乏な家の娘で、今の暮らしには良いことも娯楽もないとボヤいてばかりいる。
トキは最近良かったこととして、新しい怪談を聞いたこと、幽霊の夢でうなされたこと、金縛りにあったことなどと答えた。調子外れの回答に同僚たちにかすかな笑いが広がった。

その織物工場は、トキの遠縁にあたる雨清水傅(堤真一)が武士の道を外れて創業したものである。無事に軌道に乗り、トキをはじめ何人かの女工を雇って順調に経営していた。
その日も、女工たちへカステラを差し入れた。貧しい女工たちにとっては生まれて初めてのカステラであったし、たまには良いこともあるものだと喜んだ。

雨清水は、他の女工たちの見ていないところで、トキにカステラを一切れ手渡した。家で内職に精を出している母・フミ(池脇千鶴)への土産だという。

一日中働き、家に帰り着くとトキはヘトヘトだった。それと前後して、同じように疲労困憊した父・司之介(岡部たかし)も帰ってきた。彼は5年前から牛乳配達の仕事で日銭を稼いでいる。

それでも松野家の暮らしは最底辺だった。松江城のそばにあった屋敷はとっくに手放し、現在は川の反対側にある貧民街の長屋に暮らしていた。長屋のすぐ隣は遊郭である。
日々の食事にも事欠き、膳にあるのは飯の他には漬物としじみ汁だけだった。しじみ汁は一家の大好物であるが、椀の中にしじみはほんの少ししか入っていなかった。

雨清水からのカステラを手渡すと母・フミは大喜びした。彼女もカステラは生まれて初めてであり、その甘い香りにうっとりした。おっかなびっくり指先に小さな欠片を取って口に運ぶと、その美味しさに感激した。
その様子を見た父・司之介は自分にもよこせと迫ってきた。しかし、それはフミへの土産だと言って、トキが激しく抵抗した。父と娘の争いはまるで子供のような幼稚さであり、フミはその様子を見て笑った。トキと司之介もどこか楽しそうにじゃれ合っている。
貧しくはあったが、まんざらでもない生活であった。

それでもトキは昔の生活を思い出すことがある。長屋の井戸からは、屋敷のあった川の反対側がよく見える。
トキの幼馴染で、現在は同じ長屋に住んでいるサワ(円井わん)がやってきた。川の向こう側を眺めるトキと一緒になって、こんなはずではなかったとボヤいた。彼女は教師になって家を支えるという夢を持っていたがそれが叶わなかったのだ。

そうこうしていると、隣の遊郭に来ていた酔客が井戸の付近で立ち小便をした。叱りつけるトキとサワの声で遊女のなみ(さとうほなみ)が駆けつけてきた。
その遊女・なみに向かってサワは悪態をついた。このような無様な酔漢から金を貰って生きるなど悲しいことだと言うのだ。

その売り言葉になみは、女が生きていくには身を売るか男と一緒になるしかないと捨て台詞を吐いて去っていった。

ある日、森山(岩谷健司)が借金の取り立てにやって来た。滞納している先月分もまとめて払えというのだ。しかし、松野家は今月分にすら足りない額しか出すことができなかった。
すると森山はトキに目をつけた。遊郭に売ってしまえというのだ。
トキを何よりもかわいがっている祖父・勘右衛門(小日向文世)は激しい剣幕で怒鳴りつけた。元武士の迫力に押され、森山は逃げ帰った。

騒動が収まると、トキは婿を貰うと言い出した。借金を返すには、婿を取って働き手を増やすしかないというのだ。
現状を踏まえれば、家族の誰もその提案を却下することはできなかった。

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NHK『ばけばけ』第4回

今日は我が最愛の山瀬まみの誕生日であることをたいへんめでたく祝福している当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ばけばけ』の第4回めをNHK+で見ましたよ。

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第1週『ブシムスメ、ウラメシ。』

父・司之介(岡部たかし)がふらりと家を出たまま10日以上帰ってこなかった。
トキ(福地美晴)は学校の行き帰りで街中を探し回った。

するとついに、宍道湖の岸に佇む父・司之介を見つけた。
司之介はトキの姿を見つけるや否や、湖の中へ逃げ出した。トキも後を追い、ずぶ濡れになりながら父にすがりついた。
「すまん」以外は何も話そうとしない父に向かって、そんな父に向かってトキ、失踪した理由が何であれ生きていただけで良かったと言い、一緒に帰るのだと強い口調で命令した。
さらに、司之介がいないと大好きなしじみ汁もまったく美味しくないと述べた。そこに母・フミ(池脇千鶴)も現れ、異口同音にしじみ汁の味気なさを語った。

ふたりの説得で、ついに司之介は折れた。
ただし、トキには翌日から学校に行かずに働いてほしいと継げた。それというのも、ウサギ相場が大暴落し、今やウサギには全く値がつかないという。司之介が仕入れた大量のウサギが捌けなくなったばかりか、事業拡大に投じた莫大な借金だけが残ることとなった。その額は、司之介が一生働いても返せないほどだという。
トキを学校に行かせる金はなくなったが、大好物のしじみ汁だけは飲ませることを司之介は約束した。

こうして司之介は家に帰ってきたが、その日の食卓にしじみ汁はなかった。
代わりに「しめこ汁」という初めて見る料理が出ていた。それはそれは美味で、祖父・勘右衛門(小日向文世)は有頂天になった。
ただし、「しめこ」が何かと聞いても、司之介とフキは口ごもって答えようとしなかった。

嫌な予感のしたトキは、ウサギの在庫置き場を見に行った。すると、そこには空っぽのカゴだけが積まれていて、一羽のウサギもいなかった。それらは全て絞められて食卓に上がったのだ。
祖父とともにウサギをかわいがっていたトキは、心の底から恨めしく思った。

昔からトキは、恨めしいことがあると母・フキに怪談本を読んでもらった。そうすることで恨めしさが紛れたのだ。
その夜も読んでもらったが、トキの恨めしさは増すばかりだった。

それと同じ頃、アメリカのシンシナティに暮らすレフカダ・ヘブン(トミー・バストウ)は自分で自分のこめかみに銃口を向けていた。
新聞記者の仕事を失い、無一文で餓死寸前だったのだ。遺書に、自分には何も無い、金もパンも家族も、そしてこの遺書を読む友人の一人もいないなどと書き綴った。
いよいよ覚悟を決め、引き金に指をかけたが、彼には銃弾を買う金もなかった。死にきれなかった。
そんな境遇を恨めしく思った。

遠く離れた場所で同じように恨めしさを募らせているふたりは、この5612日後に出会うことになる。

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NHK『ばけばけ』第3回

マジで別宅の隣がウサギ屋である当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ばけばけ』の第3回めをNHK ONE(未ログイン状態)で見ましたよ。

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第1週『ブシムスメ、ウラメシ。』

父・司之介(岡部たかし)は、家に金成(田中穂先)という男を招いた。彼と一緒にウサギの商いを始めるという。司之介と金成は城勤めの頃からの知り合いで、金成からよく儲かると教わったという。
金成によれば、舶来物の珍しい柄のウサギが世間で人気を博しており、中には5円で仕入れたウサギが600円で売れた例もあるという。母・フミ(池脇千鶴)がざっと計算したところ、その額はトキ(福地美晴)を小学校に100年間通わせることのできる金額に相当した。

フキは話がうますぎると半信半疑だった。しかし、今までくすぶっていた司之介がやっと元気を取り戻したと思うとが嬉しくて、反対せずに応援することにした。
祖父・勘右衛門(小日向文世)は、武士が商売を始めると聞いて烈火のごとく怒った。しかし、トキが父と一緒になって頭を下げると許すことにした。彼は孫にはめっぽう甘いのだった。

それから数週間が経った。
ウサギは飛ぶように売れ、司之介の商売はしごく順調だった。1ヶ月の売上は200円にもなった。
あんなに怒り心頭だった祖父・勘右衛門も今ではトキと一緒になってウサギをかわいがった。松野家の食卓も豪華になった。以前は飯とめざし、そしてしじみ汁程度のものだったが、いまではおかずが5品もつくほどだ。ただし、松江に生きる者として、好物のしじみ汁だけは欠かさなかった。
松野家では笑顔が絶えなくなった。トキが生まれてこの方、家族みんながこんなにもずっと笑っているのは初めてのことだった。

この前まで、トキは大きくなったら教師になりたいと言っていた。しかし、いつ気が変わって、もっと大きな夢を抱くとも限らない。彼女がどのような進路を選ぼうとも必ず叶えてやれるよう、より多くの蓄えが必要だと司之介は考えるようになった。
そこで、相場が有利な今のうちに借りれるだけの金を借りて商売につぎ込むことを決めた。松江武士は猪突猛進を心情としており、それに従うのだと司之介は得意になった。

ある日、父・司之介はトキを連れて松江の町を散策していた。
その時、借金のかたに売られた娘が逃げ出し、複数の男たちに追いかけられて捕まる騒ぎがおきた。その他にも、粗末な身なりの男女が縄で縛られて連れて行かれる様子が見られた。それらはいずれも借金で身を持ち崩した当事者や親族であるようだった。
司之介は、ウサギが失敗していたら自分たちもああなっていただろうと話すのだった。

ある夜、家でほろ酔いになった司之介は酔い覚ましのためにふらりと家を出ていった。
しかし、結局その日は家に帰ってこなった。

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NHK『ばけばけ』第2回

山瀬が復帰する!それだけでもう天にも登る思いの当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ばけばけ』の第2回めをNHK+で見ましたよ。

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第1週『ブシムスメ、ウラメシ。』

父・司之介(岡部たかし)は武士の矜持が捨てられず、働くことは恥だと思っている。祖父・勘右衛門(小日向文世)も隠居の身であり、食い扶持を稼ぐことをしない。母・フミ(池脇千鶴)が細々とした内職で家計を助けていたが、一家を支えることは到底無理である。松野家の貯金は今にも底をつきそうだった。

トキ(高石あかり)の通う小学校では、各々が将来就きたい職業を発表していた。トキは武士の娘として育てられており、女子が働くなど論外だと考えていた。そのため、他の子たちが活発に夢を語る中、小さくなっていた。

トキと仲のよいサワ(小山愛珠)は学校の先生になりたいと発表した。女は男ほど給金を貰えない中でも、他の職業と比べて教師は高給だと聞いたからだという。病弱で貧乏な両親を自分で養うことがサワの夢だという。

それを聞いたトキは大いに感じ入った。自分も教師になって一家を支えようと決意した。
その日、夕食の場でトキは家族に向かってその決意を述べた。父と祖父が武士のままでいられるよう、自分が一家の面倒をみると宣言した。家族は驚きながらも、トキの心意気を褒めた。

その頃トキは、遠縁の格式高い武家へお稽古に通っていた。そこの妻。雨清水タエ(北川景子)から茶の湯、三味線、華道などを習っていた。タエは武家の妻の鑑のような女性で、気位が高く、口調は物静かでも威厳に満ち溢れていた。

その稽古の日、トキは単刀直入に今日いっぱいで稽古をやめると言い出した。自分は小学校の先生になるつもりであり、それには茶も三味線も花もいらないというのが理由だった。付き添いで来ていた母・フミも突然のことに驚いてしまった。

タエは落ち着き払ってトキを諭した。武士の娘は嗜みを持ち、夫や家を支えることが本懐である。商いをしたり、教師になったりするなど、外で働くことなどすべきではないと静かに話した。
タエから水を向けられた母・フミもその冷酷な雰囲気に気圧され、一も二もなく頷いた。

その直後、タエの夫・傅(堤真一)が部屋に入ってきた。昨日まで髷を結っていた傅であったが、理髪店に行ってきた帰りだという。彼は自分の散切り頭を気に入り、妻や女中に一刻も早く見せたかったのだという。しかし、一同はあまりのことに言葉を失った。
唯一、トキのみがよく似合っていて立派に見えると本心から述べた。しかし、他の者たちは相変わらず黙ったままだった。もちろん、タエも黙ったままだった。

さらに傅は、織物工場を始めると宣言した。すでに武士の時代は終わり、これからは時代に即して生きていかねば路頭に迷うというのが傅の考えだった。
タエは、武士であった夫が商売を始めると聞いて、二の句が継げなくなった。

帰宅したトキは、傅のことを思い出してうっとりした。立派な大人物な上、散切り頭もよく似合っていた。加えて、お土産のお菓子までくれたのだ。自分の父は正反対である。傅が父であったらよかったとボヤいた。
そのボヤキが、ちょうど帰宅した父・司之介に聞かれてしまった。拗ねる父に対してトキは、よその家のことは気にせず、司之介は司之介らしく武士を続けてほしいと話すのだった。

ある日、学校から帰ってくると見知らぬ客人(田中穂先)が父と一緒にトキの帰りを待っていた。彼は風呂敷で覆った大きな荷物を持っていた。
風呂敷を取り除くと、そこにはカゴに入った一羽のウサギがいた。トキは思わぬことに喜んだ。

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NHK『ばけばけ』第1回

今回のまとめ記事も短命に終わる予感のしている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ばけばけ』の第1回めをNHK+で見ましたよ。

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第1週『ブシムスメ、ウラメシ。』

1875年(明治8年)の松江に、松野家があった。
一家は松江藩に使えた武家であったが、明治維新によってすっかり落ちぶれてしまった。
他の家がちょんまげを落とし商人や役人となって新たな時代に適応していったのと対象的に、松野家は昔ながらの生活にしがみついたままだった。父・司之介(岡部たかし)も祖父・勘右衛門(小日向文世)もいまだにちょんまげを結ったままである。周囲からも半ばバカにされていた。

父・司之介はまとも働こうともしない。そればかりか、維新によって武家社会を崩壊させた薩摩・長州や新政府に深い恨みを抱いていた。司之介をバカにする周囲の人々と同じくらい、司之介自身も周囲の者をバカにしていた。彼らがそれまでの生活や考え方を簡単に捨ててしまったからだ。

一人娘のトキ(福地美晴)も学校で同級生たちからからかわれた。同級生たちの多くは元武家の子どもたちだが、どの家も新しい生活を始めているのだ。担任教師もトキの父が全く働こうとしないのは異常なことだと遠慮なく言い放った。

トキは、自分の父は間違ったことをしているわけではないと信じていた。父の言う通り、悪いのは父ではなく、世の中の方だと思っていた。
それでも、トキの信念が揺らぐこともあった。母・フミ(池脇千鶴)によれば、父は戸惑っているのだという。トキが生まれた直後、急に世の中が様変わりしてしまって、どうしてよいかわからず困惑したままなのだと説明した。その話を聞いて、トキは父に落ち度はないのだと再び信じることができた。

司之介は世間には馴染めずにいるが、家族には優しく明るい父であった。
トキは、父をバカにした教師への仕返しのつもりで、怪物に化けた父が教師を食い殺す絵を描いた。それを見た司之介は、描かれた怪物の真似をして家族を追いかけた。トキは笑いながら家中を逃げ回った。

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