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今年読んだ本

当blogの右袖にもブログパーツを貼ってあるが、メディアマーカーというサイトで読書記録をつけている。その記録によれば、2008年には約160冊の本を読み終わったことになっている。
#数ページ読んでやめたやつとか、薄っぺらいマンガとかも含む数字。

その中から、印象に残った3冊。
#それ以外のものは、こっちに一覧を置いた。

マンキュー経済学: ミクロ編 / グレゴリー マンキュー

なんと言っても、今年はこれ。
著者自身が「世界一売れている経済学の教科書」とかなんとか言ってるらしいのだけれど、それも頷ける内容。

ミクロ経済学の初歩から、少なくとも大学の学部卒業程度(だと思う、よー知らんけど)の知識までみっちりと詳細に、分かりやすく解説してくれる名教科書。単に理論的な事柄や机上論に終始するだけではなく、最近の実世界の実例をふんだんに取り入れて例示してくれるので直感的にも理解できる。

大学の教養時代に「近代経済学」という講義を半年受けて、当時は分かったような、分からなかったような内容が、この教科書1冊で明快に分かった。僕の学生時代の時間と学費を返せと言いたいような、まぁ当時に比べれば僕の知的レベルも動機付けも高まっているので、当時の先生を責めるのも申し訳ないよなと思うような。

この教科書の内容を読んだだけで、新聞やテレビの政治・経済関連のニュースがよくわかるようになった。ちょっと値が張るのだが、僕の人生にとってかなりお買い得な本だったと思う。
僕の中では、ドーキンスの「利己的な遺伝子」に並ぶ1冊。

#マクロ編は今読んでる途中。

こんな夜更けにバナナかよ / 渡辺一史

筋ジストロフィーという病に冒され、寝たきりであり、呼吸すら自力では困難な男性に密着取材したノンフィクション。

これだけ読むと、大病に苦しむ患者と著者との暖かい心の交流に基づく感動秘話かと思うのだけれど、その期待は裏切られる。
患者の男性は、身の回りの世話のほとんどを無償ボランティアに頼って生きている(余談だが、この患者は札幌に住んでいて、本には出てこないが僕の知り合いもボランティアに行っていたそうだ)。ところが、ボランティアのミス一つが彼にとっては致命傷になりかねない(たとえば、人工呼吸器の扱いを誤れば、窒息する)ので、彼は無報酬の相手に対して怒号を飛ばしたりして自分の意のままに操ろうとする。
執筆上の演出もあるのだろうが、とにかく、イヤなやつなんだ、この患者ってのは。書名の「こんな夜更けにバナナかよ」というのも、ボランティアの一人が夜中に起こされて何事かと思えば、バナナが食べたいと言われたときの心境に基づくそうだ。

そりゃまぁ、イヤなヤツなんだけれど、一方で生きるということの本質が見えてきたりもする。
僕がこの本を読みながら考えたことは、かのロビンソン・クルーソーとの対比だ。
ロビンソン・クルーソーは、無人島で生きるための活動の全てを一人でやらなくてはならなかった人物とされている。経済学や社会心理学の教科書なんかを読むと、「人間は社会の中で、他者と分業することによって豊かになったのです。クルーソーのように、なんでも一人でやろうとすると効率が悪く、富も少なくなります」なんてことがよく書いてある。
しかし、クルーソーは強靭な肉体でなんとか生き延びるのだが。つまり、クルーソーは対人関係という”社会”を失ったけれど、自分の”肉体”は残されていた人物だ。

一方で、この本に出てくる患者の男性は、筋ジストロフィーという病によって自分の”肉体”の自由は失われたが、他者との”社会”関係は残された。しかも、多くのボランティアに24時間囲まれるという強烈な形で。
本書を読むと、彼は単にワガママなだけではなく、よく相手の人間性を観察していたということが記されている。どの相手には、どの程度のことまで言って良いかという、高度な算段を常に行っていた素振りがあるのだ。しかも、彼がその計算を間違えて、相手との関係を破壊してしまい、機械の操作を放棄されてしまったら、彼は死んでしまうのだ。その緊張感たるや、想像を絶する。

クルーソーの寓話から、「人が社会関係を奪われるとどうなるか」の思考実験はよく行われる。逆に、本書の記述から「人が社会関係のみに依存するとどうなるのか」の思考実験をしてみることは興味深いことだと思う。

阪急電車 / 有川浩

著者、有川浩は「図書館戦争」、「ラブコメ今昔」など、今年はヒットしたらしいのだが、僕は「阪急電車」しか読んでない。他の本をパラパラと立ち読みしてみたのだが、冒頭で肌に合わないと思ったのだ。

しかし、この「阪急電車」だけは、読み始めて一気に引き込まれた。
舞台となっているのは、兵庫県を走る阪急・今津線。片道20分ほどの短い路線なのだが、入れ替わる乗客たちの微妙な交流が生み出す “ちょっといい話” 系のハート・ウォーミング短編集。

どうってことないお話ばっかりなのだが、そのどうってことなさっぷりにひどく感じ入ってしまった次第。
実際に、舞台となっている今津線に乗って、全ての駅を降りてみたりしたくらいお気に入り。

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