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醍醐寺: 愛染明王はおあずけで、仁王に度肝を抜かれる

醍醐寺霊宝館先日、いとう・みうら『見仏記 ゴールデンガイド篇』を読んでいたら、京都市の醍醐寺にも愛染明王があると書いてあった。
敬愛する愛染明王さえあれば、当方は全国津々浦々どこにでも出かけていく気満々である。
愛染明王の展示されている醍醐寺の霊宝館は春と秋の限られた時期しか公開されていないらしい。しかも、春の公開が5月6日までとのことなので、今日を逃すと半年以上おあずけをくらうことになる。
そんなわけで、超ダッシュで行ってきた。

しかし、結論から先に言うと、目当ての愛染明王を拝観することはできなかった。寺の人に話を聞くと、霊宝館の展示物は時期によって変わるらしい。そんなわけで、今回の公開では愛染明王は展示されていなかったのだ。

ちょっぴり残念だけれど、秋の公開時に展示されることを期待。境内のあちこちにたくさんのモミジが植えられていて、紅葉狩りがてらに再訪するのもよかろう。モミジの赤と、愛染明王の赤の競い合いは想像するだけでまぶしい。

愛染明王は見れなかったけれど、醍醐寺はそれ以外にもたくさんの見所があって、とても楽しめた。


一番印象に残っているのは、西大門
境内の中央を延びる参道には、左右の木々の枝が大きく張り出し、その隙間から巨大な瓦屋根だけが見えている。

歩いて近寄るにつれ、左右の枝々が自分の後ろに流れて行き、少しずつ門の全容が明らかになってくる。まるで天の雲が横に流れて、神々しい太陽が姿を現す感じ。
そして、そこに突然現われたのが、1対の仁王像だった。

仁王像は、彫像という静的な物体の中に、今にも動き出しそうな躍動感があるのが魅力だ。それは、日本一有名な東大寺の南大門(運慶・快慶作)も同じ。止まっているんだけれど、悪いことしたら動き出して襲われるんじゃないかという緊張感が魅力。

しかし、醍醐寺の演出はそれ以上。枝に隠されていて、何もないと思っていたところから、突然仁王像がバーン!と現われるんだもの。動いている主体は自分なのだけれど、あたかも2人の仁王が向こうからにじり寄ってきたかのような錯覚を覚えた。
誇張でもなんでもなく、僕は本当にこの演出にシビれた。日中だったからよかったものの、夕暮れなどの薄暗いところで見ていたら、僕はきっと叫び声をあげていたに違いない。

醍醐寺は秀吉が花見を行ったことなどから、桜が有名だけれど、ぜひこの仁王門の錯覚スペクタルも経験していただきたいところ。

ところで、秀吉で思い出したけれど、霊宝館に醍醐の花見で読まれた歌が展示されていた。
秀吉直筆と言われているものもあったのだが、彼は自分の名前ではなく「松」という歌号を署名していた。ちょっと親近感。

しかし、前田利家だの淀君だのが、秀吉をヨイショする歌を詠んでいるのを見て、家来の苦渋のようなものを想像して微笑ましく思った。

相生の松にさくらの咲かひて みゆきの山に 千世を重ねん –利家

僕の解釈が正しいかどうかは分からないけれど、秀吉(松)が桜のように花開き、山の根雪のようにどっしりと、千年もの間繁栄するといいのに、って感じの意味だよね?

醍醐寺
住所: 京都市伏見区醍醐東大路町22
TEL:075-571-0002 / FAX:075-571-0101
拝観料: 600 – 1500円 (3つのゾーンに分かれており、1か所600円。複数チョイスすれば、500円に下がる)
駐車場: 数十台駐車可能。1回700円


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