ちょっと小耳に挟んだのですが、目に紫外線が当たると肌が黒くなる可能性があるとか、ないとか。
簡潔で分かりやすい説明は、目に紫外線が当たると肌が黒くなる?!(ロート製薬のサイトのようだ)にある。
紫外線に曝露されることで、目の細胞が破壊される。そのダメージに反応し、脳がメラニンを作る指令を全身に送り、肌が黒くなるというメカニズムらしい。
耳だけに紫外線を照射したマウスは耳だけが黒くなったけれど、目だけに紫外線を照射すると全身が黒くなるという実験結果からも実証されているらしい。
「目から日焼け」というキーワードでgoogle 検索すると、出てくるわ、出てくるわ。わりとメジャーな話なんだろうか?
皮膚が紫外線にさらされて黒くなるってのは常識的によくわかるけれど、目に紫外線が当たることで、それ以外の皮膚が黒くなるってのは、かなりビックリな話だよね。
しかし、つらつらと見ていくと、根拠が大阪市立大学の井上正康先生の研究結果ということになっている。もうちょっと詳しく知りたいと思って、元となった論文を探したんだけれど、どうもそこにたどり着かない。
目から脳を介して日焼けする?(2)|ちゃりん子のうだうだな日常。というブログ記事からも
大阪市立大学教授、医学博士の井上 正康教授は、面白い研究内容を2001年に発表したらしいです。
(一応調べたけど、論文見つけられなかった・・・。誰か見つけたら教えてください。読みたい・・・。)
という悲痛な叫びが聞こえてくる。
ていうか、ちゃりん子さんという(推定)美女の願いに答えるのが当方の役目だと、勝手な使命感に燃え、そこから検索の嵐。
なんとか、オリジナル論文っぽいものを見つけた。
Keiichi HIRAMOTO, Masayasu INOUE, Mariko SUGIURA, & Ritsuko HAYAKAWA. Effect of UVA irradiation on protein synthesis in the liver, brain, skin and collagen in the skin of mice. ENVIRONMENTAL DERMATOLOGY, 8(2) : 59-64, 2001.
<追記: 上記論文は、異なる内容のものでした>
K. Hiramoto, N. Yanagihara, EF. Sato, M. Inoue: Ultraviolet B irradiation of the eye activates a nitric oxide-dependent hypothalamopituitary proopiomelanocortin pathway and modulates functions of alpha-melanocyte-stimulating hormone-responsive cells. Journal of Investigative Dermatology, 120, 123-127, 2003.
に、ラットの目にだけ紫外線を照射する実験が出ている。ダウンロード。
<追記おわり>
会員登録すればこちらから有料でダウンロードできるそうだ。578円なんてハシタ金なので、サクッとダウンロードすべく会員登録しようと思ったら、「医療関係者のみ」というチョー排他的な注意書きがあってムカつく当方。
ムカついて、当方宅から徒歩15分の国会図書館関西館で探してみたら、見事に収蔵されていた(東京館は未収蔵!)。「いいもん。アンタの世話にならないもん」と捨て台詞を吐きつつ、明日論文コピーに行く所存。
#気が向いたら、内容について当blogでレポートします。
ただ、目を経由して日焼けするって話は、「そんなん、効果はきわめて限定的だから、気にしてもしゃーない」という反論記事が出ていたりして(Exposing eyes alone to UV light can trigger a “tan”: New Scientist)、もう解決かなって気もしないではないが。
つーか、「目からも日焼けするから、気をつけてね!」って話は、サングラスとかコンタクトレンズとか目薬とか、そこらへんを売り込みたい人の思惑が見え隠れしないでもないよね。こうやってビビらせておけば、ここらの関連商品が売れるから。
実家が眼鏡屋の当方としては、むしろ「目から日焼けするから、みんなサングラスかけて!」って言った方が親孝行な気もしないではないのだが。
でもやっぱり、New Scientist の意見に賛成で、けっこう眉唾な話なんじゃないかと思う。
僕は素人だから、たんなる山勘だけどさ。
ごめんなさい。本文にある Hiramoto et al. “Effect of UVA irradiation …” という論文は、異なる内容の論文でした。
たぶんこっち。
K. Hiramoto, N. Yanagihara, EF. Sato, M. Inoue: Ultraviolet B irradiation of the eye activates a nitric oxide-dependent hypothalamopituitary proopiomelanocortin pathway and modulates functions of alpha-melanocyte-stimulating hormone-responsive cells. J. Invest. Dermatology. 120, 123-127, 2003
ジョギング・マラソン関連のWEBサイトには、「眩しいと『脳が勘違いして』実際よりも気温が高いと感じさせ疲労度が増す。サングラスをかけるだけで驚くほど涼しく感じるし、疲労度が全然違う」みたいな話が「科学的な研究成果にもとづいて」よく載っています。で、その下に格好良いスポーツサングラスのWEB通販へのリンクが貼ってある(笑)。「サングラス欲しいなぁ」と思っている人に、自分がサングラスを買うべき「科学のお墨付き」を与えて購買を後押しする効果があるのでしょうね。
ところで、話が少しズレますが、オレオレ詐欺系の「定額給付金詐欺」防止のために専門家を招いてセミナーを行った、というニュースを先日見たのですが、「『緊急事態におかれると、脳はわかりやすい解決策に飛びついてしまう傾向がある』との専門家の解説に、集まった市民は首をうなづかせ聞き入っていた」みたいなことが書いてあったんですね。これつい数年前までは「脳は」ではなく「ひとの心は」と言ったと思うんですよ。何でも「脳が」って言っちゃった方が説得力を感じる人が多いらしい、ってのが昨今の風潮なのかなぁと思います。「脳が勘違いして」みたいに変に擬人化した話は、脳科学ブームの弊害というか、長期的に見ると人間理解への妨げになるんじゃないかと思いますが(まさに「わかりやすい解決策に飛びついている」だけで)。あぁ、だいぶ話がズレちゃいました。
「僕は心の底から君のことを愛しているんだ」
「僕の大脳新皮質と辺縁系が総動員で、君のことを愛しているんだ」
もう何年かしたら、後者が殺し文句になる時代が来るね。
土曜日のドラマで、キムタクがそう言ってくれたら、スグに来るね。
いや、来ない(キッパリ)。