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『沢田マンション物語』読書感想文 by りん母

 りん母さんより、読書感想文大会への投稿がありました。
 【自由図書部門】 にエントリー、『沢田マンション物語 2人で作った夢の城』(古庄弘枝)の読書感想文です。


私が高知に住んでいた頃、気になって気になって仕方がない建物がありました。
その建物は「白いコンクリートの5階建てくらいのマンション」で、とてもユニークというか奇妙な外観をしていました。

まず、一般的なマンションより緑が多いこと。
マンションでガーデニングを楽しむ方も多いでしょうが、ベランダガーデニングの域を遙かに超えた大きさの木が茂っていました。
それも1階の庭部分ではなく、各階のベランダや屋上に大きな木が茂っているのです。
マンションの裏側は山でしたが、山と調和しているような、山にマンションが飲み込まれているような感じでした。

そして屋上に生えているのは木だけではありません。
クレーンも生えて・・・いやいや、建っていました。
初めて見たときは工事中なのかと思いましたが、クレーンが動いて工事をしている様子は一度も見られませんでした。

更に変わっていたのはマンションの外壁を囲むようにスロープがあること。それはショッピングセンターの屋上駐車場へのスロープのミニバージョンのような物で、普通のマンションではあり得ない位置を車が走ったりしていました。
ベランダの横とか。
だからと言って屋上駐車場がある様子も見られないのです。

説明するのは難しいのですが、とにかく一般的なマンションとは何かが違っていました。

奇妙だと感じたのは私だけではないのでしょう。
何度かテレビで「面白物件」として取り上げられたそうです。
本書はその奇妙なマンション、沢田マンションの物語。

外観だけでなく、内部や生活までもが「変わっている」という沢田マンションは、オーナーである沢田夫妻が自分たちで建てたそうです。
自分たちの好みに注文した、ということではありません。
マンション建設の全行程を2人だけでやったというのです。
しかも建築について学んだこともなければ、マンションの図面もないのだとか。

世の中には色々な物を手作りする人がいます。
マスクを手作りする人もいれば猫の駅長帽子を作る人だっている。
マスクや駅長帽子の図面がないと言っても誰も驚かないでしょう。
それくらい簡単に真似できるわ、と思われるかもしれません。
では鉄筋コンクリートのマンションではどうでしょう。
図面もなく独学で手作り・・・すげー。

さて、本書ではマンションの日常風景や沢田夫妻の生い立ち、マンションを建てるに至った経緯などが「こんな困難もあったけど乗り越えましたよー」と語られています。
○○さんの物語にありがちな話の展開です。

残念ながら木公さんには本書を読むことをお薦めできません。
なぜなら木公さんは沢田マンションを見たことが無いから。
沢田マンションの何ともいえない不思議な空間は本書を読んでも伝わりません。
やっぱり生で見ないと。
というわけで、木公さんには沢田マンションを見に行くことをお薦めします。
場所は高知自動車道、高知インターのすぐ近くです。

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