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ふたりの愛ランド: 東海道五十三クリング(1)

厚木のオフィスに転勤して3ヶ月経った。
今まで黙っていたけれど、厚木のオフィスにいるアシスタントさん(♀)はなかなかの美人さんである。いつも一緒にお昼ごはんを食べていたりして、それはそれは楽しい毎日である。

問題は彼女が既婚であるという事である。
さらに問題とすべきは、彼女は妊娠しているということである。
最大の問題は、彼女が今月いっぱいで産休に入るということである。
7月から何を楽しみに会社に行けば良いのか。


* * *

彼女と昼食をとりながら、時々、僕は心のなかで小さくガッツポーズする。
それは、彼女が夫の愚痴をこぼす時である。旦那ザマアミロ、なのである。

彼女の夫の趣味は自転車だそうだ。
自転車のことはよくわからない僕だが、彼女の話から推測するに、彼女の夫は
「車体が軽くて、タイヤが細くて、掴むと自動的に前傾姿勢になるあのハンドルで、自動車並みの速度が出て、中古車並みの価格がする自転車」
に乗っているらしい。

休日の朝「ちょっと出かけてくる」と言って出かけた先が、片道50kmも離れた三浦半島の先端であったそうだ。
平日の夕方、荷物が届いたので受け取ったら、外国から送られてきたナントカという部品で、添付されていた納品書を見たら、彼のお小遣いをはるかに超過した品物がクレジットカードで買われていたそうだ。
最近は、今のものよりも数百グラムだけ軽いホイールを20万円で買うとかなんとかほざいているらしい。

そういう愚痴を聞くたびに、当方なんかは
「おうおう。なんぼでも喧嘩しなさい。別れたら、お腹の中の子供も含めて、ボクが面倒みるよー」
などとこっそり思ったりしているのである。

ところが、である。
それだけ愚痴を言ってる割に、彼女は自転車に詳しい(少なくとも僕なんて全然かなわない)。なんだかんだ言って、夫の趣味に付き合っている様子なのだ。

* * *

昨日、僕はワケあって、市内のスポーツ自転車専門店に行ってきた。
そこで店主からとある自転車を勧められた。1時間くらい、みっちりと自転車の話を聞かせてもらった。
しかし、聞いてきた話は一晩でほとんど忘れてしまった。

今日の昼休みの食堂で、そのことを彼女に話した。
自転車のメーカーの名前すら忘れてしまったと言ったところ、
「○○○? それとも、△△△?」
と、スラスラといくつかの名前が挙がった。でも、僕には聞き覚えがなかった。

「じゃあ、TREK?」
あ、それそれ!

「TREKは良いメーカーですよね。SHIMANO使ってるし。」
シマノ?それは、有名なレーサーの名前かなにかですか?昨日、そんな話はなかったなぁ。

「いえいえ。ギアとかのパーツが SHIMANOなんですよ。釣り具も作ってる有名メーカーですよ。」
ああ、リールとかね。聞いたことあるわ。ていうか、詳しいですね。

「で、TREKの何を勧められたんですか?」
えーと、FXとかいうシリーズでした。

「何番?」
えぇぇと、確か7.3だか、7.5だかいうやつ・・・?

「あー、それはいいクロスバイクですね。良心的なお店ですね。」
スゲェ、スゲェよ。なんでそうスラスラと出てくるんですか。つーか、部品のメーカーまで熟知してるなんて。なんだかんだ言って、ご主人の趣味にかなりの理解があるんですね。

「で、買ったんですか?」
いえいえ。昨日はカタログを見て、話を聞いてきただけです。在庫も置いてないと言われたし。週末にもう何件か回って吟味しようかと・・・。

「えーと、確か、町田か多摩にトレックの専門店があるはずです。そこなら実物も展示されてるでしょうから、見に行ってはどうですか?」
そして、午後にはその専門店の情報とURLをメールで送ってもらった。

* * *

そんなわけで、明日は何件かの自転車屋さんに行く予定。
在庫があれば、「シマノがついてるトレックのFXの何番だか」をすぐ買う所存。

彼女とこんなに楽しくおしゃべりができるなら、僕は喜んで自転車を始めるのだ。

ただし、問題は彼女が既婚であるという事である。
さらに問題とすべきは、彼女は妊娠しているということである。
最大の問題は、彼女が今月いっぱいで産休に入るということである。
7月から何を楽しみに会社に来れば良いのか。

7月といえば。
会社の節電協力で、オフィスがシャットダウンされる。当方には2週間の夏休みが与えられる。
2週間あるので、自転車で東海道五十三次の走破にチャレンジしようと思っているのだ。

名づけて「東海道五十三クリング(とうかいどう ごじゅうサイクリング)計画」、いざ開始。
これで7月をエンジョイする。

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