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フジ『北の国から』第20回

じゃがいもと玉ねぎとベーコンのスパゲティ(参考: 日清製粉のレシピ)をたまに思い出してはしんみりしてしまう当方が、BSフジ『北の国から』の第20回を見ましたよ。

* * *
UFOを観察すると言って凉子(原田美枝子)が螢(中嶋朋子)を連れ回し、山で遭難したことが新聞で報道された。口止めされていたにも関わらず、純(吉岡秀隆)が新聞記者にペラペラとしゃべってしまったせいだ。純はひどく落ち込んだ。五郎(田中邦衛)は純が傷つかないように、その話題には触れないようにしていた。純は五郎らの配慮に気付き、そのように気を使われている立場にいること自体にますます傷つくのだった。

寝室で螢が純に話しかけてきた。近頃、五郎が毎晩富良野に行っていることが気にかかるというのだ。ある日など、朝帰りした時にラベンダーの石鹸の匂いがしたという。それは家で使っているものとは明らかに違うものだったという。五郎に女友達ができたとみて間違いないと螢は言うのだ。純は、五郎は再婚について考えを巡らせた。そして、なにもラベンダーの石鹸の女などではなく、雪子(竹下景子)と結婚すればいいのにと思うのだった。
純は、五郎は雪子のことを好いていると予想していた。しかし、螢の考えは、雪子は草太(岩城滉一)のことを好きなのだから、五郎と結婚することはないというものだった。ふたりで話していても埒が明かないので、雪子の気持ちを確かめることにした。じゃんけんの結果、純が雪子から聞き出すことになった。

純が雪子から話を聞きだすと、雪子はここで一生を過ごす予定であり、結婚もこちらでするつもりでいることがわかった。ただし、相手は特に決まっていないといって言葉を濁した。純は黒板家でずっと暮らすことを提案した。その流れで、いっそのこと五郎と結婚すればいいと言った。雪子は口に出して否定はしなかったが、態度でそれを拒絶した。
そして雪子は、五郎が建築中の丸太小屋が完成したら家を出ると告げた。近くに部屋を借りて一人で住む予定だという。突然の告白に、純は驚いた。雪子はまだ五郎にも話していないという。しかし、五郎もそのつもりでいるらしいというのだ。なぜなら、五郎の作った丸太小屋の模型には雪子の個室がないからだ。指摘されて、純も模型にはベッドが3つしかないことを不思議に思っていたことを思い出した。

その晩、五郎はやはり夜遅くに帰ってきた。家に入る前、体の匂いを確認することを怠らなかった。
五郎はすぐに寝床に入ったが、ランプを付けて開高健の本を読み始めた。純は、五郎の雪子に対する気持ちを聞いてみたかった。しかし、なんとなくそれを聞ける雰囲気ではなかった。逆に、五郎に対して何か良くない感情が浮かんできた。漫画すら満足に読めない五郎が、急に活字ばかりの本を読み始めたことがなんだか気に入らないのだ。ランプを付ける油がもったいななどと、五郎に対して憎まれ口を叩くのだった。

次の日は日曜であった。仕事が休みの五郎は、一人で丸太小屋の建築現場へ出かけた。
その日は螢が昼食を作った。それを弁当箱に詰めて、螢が五郎に届けることにした。五郎を驚かせようとワクワクして出かけた螢であった。しかし、そばまで来てみると、五郎が螢の知らない女・こごみ(児島美ゆき)と楽しそうに弁当を食べているのを目撃してしまった。螢は踵を返して駆け出した。途中の川で弁当を廃棄し、何くわぬ顔で家に帰り、誰にも何も言わなかった。

その翌日、東京からテレビ局の職員が訪ねてきた。バラエティーショーの制作スタッフで、UFOを目撃した螢のことを取材したいというのだ。純は興奮した。そのバラエティーショーは全国放送で、令子(いしだあゆみ)もよく見ていたものだ。テレビに映れば、令子に元気な姿を見せてやれると期待したのだ。螢に出演するよう迫った。しかし、螢はひどく嫌がった。収録は翌日である。五郎は螢が一晩よく考えて、明日までに結論を出せばいいと言って、肯定も否定もしなかった。

純は螢の出演を強い口調で説得した。頭を小突いて脅すのだ。しかし、螢はテレビへの出演よりも、五郎のことを気にしていた。前日、五郎が知らない女と弁当を食べていたことを純に報告した。その時の五郎の様子がどんなに楽しそうだったかということを純に話すのだった。
深夜、螢は雪子の布団に潜り込んで相談した。雪子は、螢が嫌ならば止めるのが良いと助言した。螢はテレビに出たくないという思いと、令子に姿を見せてやりたいという思いの間のジレンマを打ち明けた。それから螢は話題を変えた。令子や五郎は近いうちに再婚するのだろうか、と雪子に聞くのだった。そして、急に雪子に抱きついて泣くのだった。雪子はわけが分からず困惑した。

翌日、螢はテレビのインタビューを受けることを承諾した。レポーターにマイクを向けられ、UFOを見た時の様子を事細かく説明した。その様子は、3日後の昼のバラエティーショーで放送された。中畑(地井武男)の家にみんなで集まって視聴した。螢はかわいらしく映っており、本人も出来栄えに満足した。
インタビュー映像が終わると、スタジオのコメンテーターたちが話し始めた。彼らの話は、涼子と螢を侮辱する内容だった。レポーターはふたりが遭難したことを口頭で説明し、担任教諭であった涼子に至っては取材拒否したと面白おかしく語った。コメンテーターは、教師がUFOなどという非科学的なことを教え子に信じさせるとは言語道断だと切り捨てた。それから、螢は催眠術のようなものにかけられ、妄想を真実のように語っているだけだと断じた。特に、螢のようにかわいい女の子は、周囲の注目を集めておくために、虚言を真実だと思い込んで吹聴する癖もあると言うのだった。
螢は悲しくなって部屋を飛び出した。純は悔しくて仕方なかった。令子も見ているかもしれない番組で、全国に向かって螢が侮辱されたことにひどい怒りを覚えた。

その晩、五郎は富良野には行かず、早くに帰宅した。中畑の豚舎から分けてもらった豚肉で、豪勢な鍋料理を食べた。みんなが明るく振る舞う中、螢だけは相変わらず落ち込んでいた。五郎は螢を慰めた。誰がなんと言おうと、螢は自分の見たものを信じればいいと諭した。五郎や純をはじめ、螢を知っている人々はみな螢のことを信じている。そういう人々がいるから何も心配することはないと言って励ますのだった。
それから五郎は、翌日はピクニックに行くという計画を発表した。五郎の見つけた秘密の場所があるので、そこに出かけるというのだ。富良野の知り合いに昼食の準備も頼んであるから、楽しい小旅行になると言うのだ。純はとても喜んだ。しかし、雪子は仕事があるので参加できないということだった。

翌8月5日の朝。雪子が仕事に出かけると、五郎は急に上機嫌になり始めた。未だかつて無かったほどに丁寧に身だしなみを整え、鼻歌などを歌っている。純と螢のことを上品ぶって君付けで呼んだりした。
8時過ぎに、こごみが家までやって来た。そしてピクニックに出発した。五郎は終始、こごみの手を引いて山道を登った。その様子は子どもから見ても仲睦まじかった。純は、こごみのことをまあまあ気に入った。五郎の再婚相手として悪くはないと評価した。しかし、螢は不機嫌な様子だった。
昼食は、こごみがスパゲティ・ボンゴレを作ってくれた。五郎はますます上機嫌になってそれを食べ、よくしゃべり、よく笑った。純にはその態度がとても軽薄なものに思えた。自分の父親として恥ずかしい姿だった。しかし、五郎がそれだけこごみのことを気に入っているという証拠でもあった。

螢は、食が進まなかった。こごみの作ったスパゲティを持て余し、魚の餌にするといって川に投げ入れ始めた。五郎は、スパゲティは人の食べ物であって、魚の餌ではないとたしなめる。しかし、螢はやめなかった。ついに、雪子は料理が上手で毎日おいしいものを作ってくれるなどと捨て台詞を吐き、ザリガニを探すといって早々に場を離れた。純もそれを追いかけた。純には螢の気持ちが想像できた。螢はこの場にはいない雪子のことを考えているのだろうと想像した。
帰り道に夕立にあった。周囲は晴れているのに、純たち一行のところだけを狙ったようないやらしい夕立だった。

8月7日になった。北海道ではこの日に七夕祭りをする風習がある。子供たちは空き缶で提灯を作り、それを持って家を回り、お菓子をもらう。日中、純と螢が準備をしていると、同級生の中畑すみえ(塩月徳子)が大慌てでやって来た。涼子の転勤先が決まり、本校ではなく遠い学校へ行くことになったのだという。遭難事件の責任を取らされたことは明らかだった。
涼子が寝泊まりしている分校の後者へ行ってみたがすでに無人で、きつく施錠されていた。純は自分の責任を重く感じた。

夜になって、純と螢は街の子供たちと一緒に七夕祭りに参加した。
ふと、街角に涼子が佇んで見物しているのを見つけた。純と螢、さらにすみえが駆け寄って話しかけた。しかし、涼子は列を離れるのは良くないと言って、子供たちを戻らせた。それでも純だけは涼子のところに留まり謝罪した。自分がUFOや遭難事件のことを第三者に漏らしてしまったことで騒ぎが大きくなったからだ。そのせいで全国の笑い者にされた螢は傷つき、涼子は転勤する羽目になってしまった。
それから純は、自分は螢や涼子のことを信じていると打ち明けた。そして、自分にもUFOを見せて欲しいと頼んだ。今度は絶対に秘密を守るし、涼子に迷惑もかけないと誓った。すると涼子は、翌日の15時に山の登山口に来るよう指示した。UFOは時間に関係なく、信じる人の所に必ず表れるというのだ。純は約束した。

その晩、運の悪いことに純は風邪を引いて熱が出て頭が痛んだ。翌朝には熱が引いたが、大事を取って午前中は薬を飲んで寝ていた。純は夢を見ていた。東京で仲の良かった女の子・恵子(永浜三千子)がスパゲティ・ボンゴレを食べさせようと純と螢を追いかける夢だった。奇妙な夢だったが、純には楽しい夢だった。
雷鳴を聞いて目を覚ますと、15時20分だった。純は完全に寝坊してしまった。螢が止めるのも聞かず、走って待ち合わせ場所に向かった。

約束の登山口に着いたのは16時近かった。約束の1時間後だ。すでに涼子の姿はなかった。
涼子は怒って一人でUFOに会いに行ったと予想された。純は後を追うように、山の中へ入っていった。途中で激しい雨がふりだした。それにも構わず純は山を進んだ。
するとどこかから、涼子が「365歩のマーチ」を歌っている声が聞こえてきた。そちらに進んでみると、雨に濡れるのにも構わず、涼子が木の上に登っていた。上空には巨大な葉巻型宇宙船が滞空しており、涼子に向かって一筋の光を伸ばした。純は、涼子がその光に吸い込まれるように消えていくのを確かに見た。

純はその後の記憶が曖昧になった。どうやって家に帰ってきたのかすら覚えていなかった。家の者に言わせると、嵐の中をびしょ濡れで幽霊のように帰ってきたのだという。その日の晩からひどい熱を出し、5日間起き上がることができなかった。
ようやく元気を取り戻したのは、UFOと涼子を見てから1週間後だった。分校の様子を見に行くと、扉や窓には板が打ち付けられていて、完全な廃校となっていた。学校の後片付けをしていたおじさんに話を聞くと、涼子はちょうど1週間前の嵐の日に転勤して出て行ったのだという。
純は、涼子は宇宙船に乗ってどこかへ去ったのだと確信した。人に話しても誰も信じない話だろう。しかし、純はそれを実際に見たし、信じる。ただし、誰にも話さないことを決めた。

8月の半ばなのに、その日から急に涼しくなった。もう秋風が吹き出した。

そして、富良野の夜の街ではひとつの噂が流れ始めた。
以前に富良野の農協のスーパーで働いていた女が、札幌すすきののソープランドで働いているのだという。会った男によると、互いに名前は知らないが見知った顔であり、双方驚いて顔を見合わせてしまったというのだ。本名は依然として知れないが、源氏名は「雪子」であったという。
駒草で飲んでいた五郎は、そばで話している男たちの話を耳にした。

* * *


凉子先生(原田美枝子)とUFOのくだりは、さっぱりわけがわかりません。かなりの現実路線のドラマなのに、どうして急にファンタジーになるのかわからず、見ていて戸惑います。
第14回の放送のラストでは、UFOらしき光のあったところから忽然と涼子が姿を表します。それは純(吉岡秀隆)、螢(中嶋朋子)、正吉(中澤佳仁)の3人が確かに目撃しています。今日の放送では逆に、光の中で涼子が消えてしまうのを純が見ている。
今日の放送に限って見れば、熱に浮かされた純が幻想を見たと解釈できないこともないが、それ以前の目撃シーンとの整合性がない。謎すぎる。

ただし、白い長い布をまとった原田美枝子が呆然と空を見上げていて、柔らかい光に包まれる幻想的なシーンは美しくて僕好みだから、それはそれでいいのですが。

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