スピッツと俺と発表会その1

スピッツのメジャーデビューは1991年らしいのだけれど、僕がその存在を知ったのは1997年だった。超有名曲の『空も飛べるはず』は1994年リリースとのことなので、テレビやカラオケなんかで耳にしていたことはあったかもしれないが、そういうバンドがあるとはっきり意識したのは1997年なのだ。

1997年の僕は大学4年生だった。
同時、スマホはなく、ガラケーでも満足にメールが使えなかった時代。電子メールはあったけれど、みながみなパソコンを持っているでもなく。卒論の執筆やら実験の分析やらはパソコンでやるのだけれど、学生たちは大学の研究室のパソコンを使ってそれらの作業をしていたわけで。様々な事情で、僕が研究室のパソコンのお世話係をしていたりしたわけで。

その頃、「ポストペット」というメールソフトがリリースされた。
もちろん僕はAL-Mailユーザーだったので、周りのみんなにもAL-Mailを使わせていたわけだけど。

それでも、「ポストペットという新しいソフトが出たらしい。クマやウサギなどのペットがお手紙を届けに来る。かわいくて女子に人気が出そうだ」なんて噂を聞けば、モテたい盛りだったわけで、当然使い始めるわけで。
ポストペットは、メールをやり取りする双方が使用しないとペットのお届け機能は使えない。一人だけ使っていても意味がないのだ。当然、同級生たちにも使わせた。なんてたって、僕が研究室のパソコンのお世話をしていたのだから。なんてったって、女子学生の多い講座だったのだから。

他のユーザーからお使いに来たペットは、自分のパソコンでアニメで表示される。
他人のペットをなでてあげたり、おやつをあげてかわいがってやることができる。お使いから帰ってきたペットは、相手のところで受けたおもてなしについて報告してくる。なでてもらって愉快だったとか、美味しいおやつをもらって嬉しかったとか。今にして思えば、LINEの既読機能みたいなもの。メールを開かないと相手のペットと遊べないので。

ポストペットでは相手のペットをもてなすだけではなく、「殴る」という機能もついていた。
殴られて帰ってきたペットは、飼い主にそのことを報告する。いくらパソコンの中の電子的なペットだとはいえ、自分のペットが殴られるといい気はしない。だから、通常、ペットを殴ろうとする人はいなかった。

さて、僕の同級生にハナザワさん(仮名)という女子がいた。
酒癖が悪くて、ちょっとガサツで、だみ声系の女子。けれど、色白丸顔ベビーフェイス。
お察しの通り、当方の好みのタイプである。

上記の通り、同級生同士でポストペットでメールのやり取りをしていたのだけれど、ハナザワさんのところから帰ってきたペットは疲弊しているという話が持ち上がった。ペットからの報告書に「ハナザワさんに殴られた。悲しい」というものが頻発したのである。
みんな研究室の中で、声をかければ届く距離で卒論を書いていた(その合間にポストペット)ので、ペットからの報告が来るたびに、「おい、ハナザワ!うちのペットを殴るんじゃねぇ」などと怒号が飛んだ。

しかし、ハナザワさんは完全に否定した。
「そんなことするわけないじゃない。ちゃんと撫でてるよ。リリースされたばかりのソフトだし、バグがあるんじゃない?おかしいね」
目を合わせようとはしなかったし、声も少し上ずっていたけれど。

けれども、天は悪事を見逃さないのである。
ある日、パソコンに向かっていたハナザワさんから悲鳴が上がった。
「きゃー!パソコンがハングアップした!」

パソコンのお世話係 兼 ハナザワさんファンクラブ自称会長の当方は、すぐさまレスキューに向かった。
そこで見た。

ハナザワさんのパソコンは、ポストペットを開いたまま画面が固まっていた。
ちょうど、同級生のナカジマくん(仮称)のペットが訪問中だった。マウスカーソルはゲンコツの形になっていた。まさに殴って、ホコリの舞い上がるアニメーションのまま止まっていた。
みんなのペットを殴っていたという動かぬ証拠である。
それ以来、H大学B学部S講座の中で殴られるペットはいなくなったという。

その後、同級生一同は無事に卒業し、ハナザワさんも春からは某役所で働き始めた。
風の噂で彼女は結婚したと聞いたけれど、卒業以来一度も会うことはなかった。
そんな中、去年の初冬に僕らは卒業以来20年ぶりに再会した。その時、何があったかは、また別の機会に。

唯一言えることは、彼女のメールアドレスをゲットしたこと。
迷惑メール避けのためによくあることだけれど、妙に長ったらしく、複数の単語を組み合わせたものだった。それらの単語の中に “spitz” とあったのを僕は見逃さなかった。聞けば、今でも彼女はスピッツのファンらしい。たまにライブにも行っているらしい。

1997年のポストペットブームのとき、彼女は自分のペットに「マサムネ」と名付けていた。
僕は、酒乱の彼女のことだから「菊正宗」あたりからもらった名前だろうと思っていた。
しかし、彼女の説明によれば
「草野マサムネ。スピッツの人」
とのことだった。
僕がこのバンドを知った経緯である。

そして今日は、先日アナウンスした通り、僕の通っている音楽教室のバンド発表会。
曲目はスピッツの『空も飛べるはず』。

バンドメンバーは、

  • エレキギター: 俺
  • アコースティックギター: ギター科の生徒のおっちゃん(♂)
  • ボーカル: ボーカル科の生徒ちゃん(♀; JCくらい?)
  • エレキギター: 講師さん(プロ♂)
  • ベース: 講師さん(プロ♂)
  • ドラム: 講師さん(プロ♂)

という構成。

アンプとエフェクターに使い慣れてなくて、うまく音が出なくて、準備に焦ったり、演奏中も音がおかしくなったり(僕の演奏上のミスだけではないはず)。
そんなわけで、いつものようにカメラをセットするのを忘れて演奏が始まったりしたまったり。Aメロのエレキギターお休み中に慌ててセットしたり。というわけで、ギターストラップ以外は僕だとはわからない映像になっております。

うまく弾けたらハナザワさんに送って見てもらおうと思ったけれど、その案はボツにせざるを得ませんね。精進します。

明日も12:30くらいからと、14:30くらいからSAKURAのように舞い散らないように演奏してきます。
どうぞよろしくお願いいたします。

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