先日「バスタオルを探しに行ったのに100万円以上のギターの説明を受けた日」という記事を書きました。
そこには書かなかったんだけれど、同じ日に商店街の1本横の道を歩いていたら “Honey Hush” という看板を掲げたバーを見つけていました。
僕はFoghatというバンドのCDを持っていて、その中の “Honey Hush” という曲がカッコいいなぁと思って気に入っていました。フライデーナイトギターででもちょっと挑戦したことがあったように思う。
好きな曲と同じ名前の店だなと思いつつ、なんとなく怖くてその日はスルーしました。周りは韓国カラオケ居酒屋やら台湾カラオケ居酒屋やらが密集している地域で、道も薄暗くて、なんとなく怖かったんです。
でも今夜、週末の開放感と相まって、無性に気になったので偵察に行くことにしました。
まず、単なる通行人を装って、窓から店の中を覗きつつ一度通り過ぎようとしました。
客はゼロ。
マスターは50がらみで、豊かな頭髪が黒々としているのが往来からも見て取れました。しかも、彼は暇を持て余しているのでしょうか。鏡に向かって、ヘアーの乱れをせっせとせっせと整えていました(アラジン『完全無欠のロックンローラー』のメロディで読んでください)。もちろんリーゼント。
僕も “Honey Hush” 好きのリーゼント革ジャンですから、これはもう素通りできるはずがない。躊躇することなく店に飛び込みました。
店はカウンターが5席ほどの小さな店。
鏡に向かっていたマスターは虚を突かれた感じになりながらも僕を迎え入れてくれました。
とはいえ、一見の僕に対して少々警戒している様子。僕の方も価格表を全く見ずに入ったので緊張してるんだけど。
とりあえず舐められちゃいけないと思って、慣れた風を装って席に着くや否や「フォアローゼスあります?ロックで」なんてスカして注文してみたり。マスターは「ブラックラベルしかないけどいいですか?」って言うじゃない。きゃー、高い方のやつじゃん。でもここで断ると舐められると思って、ドキドキしながら値段も聞かずに承諾しましたよ。
彼がドリンクを準備している間、余裕のある客のフリをしようと思って、こっちから話しかけたりして。
俺「最近こっちに引っ越してきたんですけど、店の名前に惹かれて。”Honey Hush” って曲の名前ですよね?僕は Foghat のやつで知ったんですけど」
マスター「お、知ってる?俺は Foghat ってのは知らないけど、いろんなカバーがあって、俺は Johnny Burnette Trio のやつが大好きで。店をやるなら絶対にこの名前にしようと思ってたんだ。」
ていうか、壁に目をやるとお宝ギターが飾ってあるわけですよ。
俺「ホワイトファルコンやら、テレキャスやらあるじゃないですか!真ん中のは知らないけど・・・」
マスター「真ん中のは “ホワイトペンギン”。わかりやすく言えば、ホワイトファルコンをチェンバードボディに仕立てたタイプ。飾り付けとかが共通してる」
俺「僕もギターやってるんで楽しい!羨ましい!」
マスター「どんなのやるの?」
俺「大人になってから始めたので下手っぴですが、ブルースとかロックとかですねぇ」
マスター「俺は10代の頃からロックンロールとかロカビリーとか。小学生の時にMTVを録画したStray Catsを見て、『俺は絶対ギターやるんだ!』って思った。左のテレキャスは、若い頃、酔っ払った足で、その日もらった給料を全部注ぎ込んで買ったやつ。持って帰ったら、当時一緒に住んでたオンナと喧嘩になった」
マスター「あんた、出身はどこ?」
俺「北海道です」
マスター「北海道のどこ?」
俺「苫小牧ですね」
マスター「・・・。」
俺「苫小牧ってあまり有名じゃないので、知らないですよねぇ。。。」
マスター「いや、わかるよ。俺、札幌だもん。新さっぽろ」
俺「マジすか!?」
もう、いろいろ楽しすぎてたまらない。
店には YouTube を再生できるモニターが設置してあって、ふたりでいろんなミュージックビデオを見ながらロック話をした。
マスター「SGも1台ほしいんだよなぁ。ギターを始めるとき、親が知り合いから YAMAHA の SG を貰ってきてくれて。あれ、とっておけばよかったなぁ」
俺「YAMAHA の SG といえば高中正義なわけですが、あそこの商店街に高中正義ファンの金物屋のオッサンいるの知ってます?この前覗いたら一生懸命ギターの練習してたんです。で、話しかけたらスマホでお宝ギター見せてもらいましたよ。高中モデルのSGとか。」
マスター「え!?その店は俺もたまに行く。けど、それは知らなかった」
もうなんつーか、さらに楽しすぎてたまらない。
その他、公序良俗に反するのでここに書けないような話もいっぱい聞きました。
それを聞きたい人は、僕に会ったときにウィスキーを3杯飲ませば話します。
というわけで、楽しくフォアローゼス(ブラックラベル)を2杯飲んで帰ってきて現在に至ります。
代金は2,000円でした。よかった、また通える価格帯。