当blogでもずいぶんとたくさん読書感想文を書き散らしてきたけれど、川上弘美の『センセイの鞄』は印象に残っている小説のひとつであるし、その感想文を書いたときのこともよく覚えているし、実はその時の記事にまつわる後日談も僕にとっては忘れがたいものなのである。
そんなわけで、川上弘美は当方が無条件に追いかける作家の一人である。
無条件に追いかけているだけあって、たまにハズレもある。
『パレード』とか。大好きな『センセイの鞄』のプチ続編という位置づけなのだが、そのシマリのなさに僕はちょっとガッカリした。
むしろ、最近は、「もう川上弘美と決別しようかなぁ」とか思っていた次第。
そんな中、試金石として『古道具 中野商店』を読んでみた。
これを読んで、つまらなかったら、もう川上弘美を買うのはやめよう、と。
結論を言えば、『古道具 中野商店』は面白かった。かなり僕好みのお話だった。
これからも川上弘美を追いかけようと思う。
#実際、今日は本屋で『ニシノユキヒコの恋と冒険』を買ってきた。
『古道具 中野商店』は、タイトルから想像できるとおり、下町の小さな古道具店が舞台。店に出入りする店員と客が、憎みようがない騒動を巻き起こすというお話。
主人公はその店で雇われている若い女の子のヒトミ。単に店に入れ替わり立ち代り客がやってくるというオムニバス形式であるだけではなく、ヒトミの青臭い恋愛模様の進展が屋台骨になっている。同じ雇われ店員のタケオという男の子が出てきて、ヒトミとの間にゆっくりと恋愛したり、喧嘩したりを繰り広げる。主人公のヒトミが自分の恋愛に悩んでいるときに、狂言回しとして店主の中野さんや、彼の実姉であるマサヨさんなんかが出てきて、無言で意図せざる人生教師としてヒトミにいろいろ影響を与えたりといったお話。
僕が川上弘美を好きなのは、『センセイの鞄』のツキコとセンセイのような、ゆっくりとじれったい恋愛が読めるから。その意味で、『古道具 中野商店』はヒトミとタケオの恋愛がものすごくじれったい。喧嘩の様子すらじれったい。マトモな大人なら、そんな理由で喧嘩はしないし、そんな無様な喧嘩のやり方もしない。でも、そんなじれったくて、子供じみた恋愛模様が、どこか懐かしくて、微笑ましい。
単にヒトミとタケオの恋愛を追うだけではなくて、巧妙に人生の先輩(店主・中野さんやその姉)の生き様を重ねることで、読者はじれったい恋愛を微笑ましく眺めるだけではなく、人間関係に普遍的にあるであろう機微を考えさせてくれるところも好印象。
そんなわけで、『センセイの鞄』に並んで好きな川上作品です。
根っからの悪人が一人も出てこないのも好印象。
川上弘美、俺も追いかけてます。
『古道具 中野商店はまだ読んでいないんですが…。
マイベストは小説ではなくエッセイ?ですが「東京日記」(1と2両方)。
オススメです。
電車の中で読むと笑いを堪えるのに苦労しますw
最高です!
言われてみて、川上弘美のエッセイはまったく読んだことがないことに気付きました。
今度、追いかけてみます。Thx!