映画『アクロス・ザ・ユニバース』を見た

ほぼ1年前、僕は

『アクロス・ザ・ユニバース』は予告編を見て「こりゃアカンわ」と思って、そのままです。

などと、当blogのコメント欄でぶっこいていたわけですが。食わず嫌いはイケナイだろうと思い、アクロス・ザ・ユニバースをレンタルDVDで見てみました。

すると、意外や意外、わりといい映画だった。
steraiさんが、どこかで

「この場面で使われると、聴き慣れたはずのこの歌詞の意味が全く違って見える」というところにある

という評判を聞きつけて(彼は未見らしい)、僕に教えてくれたのだが、確かにその通りだった。何度も聞いたビートルズの名曲たちが、とても新鮮に聞こえたから不思議だった。演奏家が違うとか、アレンジが違うというだけではない。


一応、僕は青春時代にはずっとビートルズの曲を聴いて育ってきた。
若いときというのは、歌詞の内容と自分の境遇を重ね合わせて陶酔しちゃったりするものだ。
女の子に一目ぼれしたら “I saw her standing there” だし、初めてチューとかしちゃったら “I should have known better”(邦題「恋する二人」)だし、もう会えない女の子のことを思い出すときは “Norwegian wood”(邦題「ノルウェイの森」)だったりするし。
そんな感じで、「こんな気分の時には、ビートルズのこの曲」というルールがある。多くの人が、そういう自分ルールを持ってるかもしれない。

そういった、自分のイメージするビートルズ曲の持ち味が台無しにされるんじゃないかと思ってこの映画は敬遠していたのだが、前述の通り、新たな発見がたくさんあった感じ。

たとえば、僕が面白いと思ったのは、”I want you” のシーン。
言われてみれば確かにその通りなのだが、合衆国の徴兵ポスター(アンクル・サムがこちらへ指さしているアレ; ぐぐれば、一発)の文句に載せてきたのは笑った。この曲は、歌詞を表層的に捉えれば、女性にハマり込むという内容なのだが、徴兵となると意味が全く別だ。
一方で、この曲はたぶん薬物中毒を暗示する歌詞なのだが、そう考えれば、徴兵という不条理な状況に絡めとられて抜け出せないという意味でしっくり来るから不思議だ。
そして、”She’s so heavy” の歌詞にあわせて、軽いジョーク(風刺)があるのもよかった。

なお、ストーリーにはあまり期待してはいけない。あくまでビートルズの曲ありきで、それをウマく取り入れるように強引にストーリーをでっち上げただけだから。それでも、一応形にはなっている。
ラストのルーフ・トップで、さりげなく “She love you” が出てきたときには、思わずホロリと来た。

この映画の楽しみ方は、マイケル・ジャクソンのショート・フィルムを見るとの同じような感じで、上質なミュージカル映画として楽しむのが良い。

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