同業者っつーか、学生時代から同じ研究分野を専門にしている人々が仙台に集まっているこの週末、ていうか社会心理学会大会が東北大学で行われている中、今日も今日とて東京の日本科学未来館に出向いていた当方。
入り口のポスターを見ていたら、1日前に京都大学の松沢先生の講演会(「心の進化」とかそういうタイトルだった)がまさしく日本科学未来館行われていたことを遅ればせながら知って、なんで聞きに行かなかったんだろうと、後悔することしきりの午後。
自分に腹を立てつつ、いらだちまぎれに、昨日から気になっていたことを独自に調査。
日本科学未来館では、床に行先案内掲示のパネルが埋め込まれている。
これがちょっとおかしいのだ。
足元の「電話コーナー」というパネルをよく見て欲しい(上の写真、クリックしたら拡大するよ)。
なんか、文字が歪んでね?
絶対に歪んでるよ、これ。
初め見たときは、疲れてて、見間違いだと思った。
そこで、人が行きかう中、通路にしゃがみこんでマジマジと眺めてみた。
明らかに歪んでる。
で、その理由を推理し始めた。
【仮説1: お茶目デザイン】
デザイナーが遊び心を出して、面白おかしく斜めに文字を配したのだと思った。
それにしては、中途半端な遊び心な気もしないではないが、あんまり崩しすぎると案内掲示として用を成さなくなってしまうので、これくらいがギリギリの線だったのだろうと解釈。
しかし、全てのパネルが歪んでいるわけではなく、歪んでいるパネルの法則性もいまいちよくわからなかった。
いずれにしても、ちょっとお粗末なデザインだと思った。
【仮説2: 錯視教育用デザイン】
昨日、生命の科学と人間コーナーを見学していたら、錯覚の展示がいくつかあった。
その一環で、パネルにも錯視を取り入れてるのだと思った。
全てのパネルが歪んでいるわけではない理由も、子供たち(大人でもいいけど)に歪んでいるパネルを「発見する喜び」を与えるための意図だと解釈した。
パネルには格子状の点が配置されており、それを手がかりにすれば、「歪んでいるように見えるものでも、格子点を手がかりにすれば、きれいな配列に見える」という工夫がされているものと解釈した。
しかし、どんなに注意深く見ても、元の形状(錯視ではない状態)に見えることはなかった。
格子を手がかりにしてもだめ。
なんなんだ、こりゃ?
【正解への道】
気になって仕方なかったので、インフォメーション・センターのおねぇさんに「変なこと聞いてすみませんが、案内掲示板の文字、歪んでません?どんな意図があるんですか?」と質問してみた。
(しっかし、この施設のおねーさんはどの人もみんな上品で、美人だ。決して、それが声をかけた理由ではないが)
すると、そのおねーさんは、とくに驚くでもなく対応してくれた。
特にお願いしたわけでもないのに、ブースから出てきて、問題のパネルのところへトコトコと歩き出した。
もちろん、付いていく当方。
パネルの前に立って、2人で見下ろす。
「これ、時間と共に変化したんです」
【誤解】
「時間と共に変化」
ここは日本科学未来館。
昨日は、ヒトの第2染色体の塩基配列の記号(AGCT)を1分間に100個(?)ずつ表示するディスプレイというのを見た。配列の数が物凄く大きいので、そのペースで表示しても3ヶ月近くかかると説明されていた。
そういう、悠長かつ楽しげなギミックのある施設なんだし、時間つながりってことで、時刻にあわせて刻々と文字が歪んでいくんだと思った。
パネルごとにタイマーが異なっていて、早いものや遅いものがあると考えれば、歪んでいるものや歪んでいないものがあることにも納得がいく。
そんなわけで、おねーさんに、
「へぇ~。面白いですね。で、24時間周期ですか?それとももっと長いスパンですか?」
と聞いてみた。
彼女から返ってきた答えは
「いいえ。この建物ができてからなので、5年くらいになります。6階のパネルはもっとすごいですよ。」
なんて悠長なんだ!
そして、数年越しのギミックを考えたデザイナーすげぇぞ。
で、で、何年後にこの歪みは最終形態になるんだ?
駄目押しで聞いてみた。
「で、どんな規則で変化するんですか?」
【真の解答編】
僕が激しく勘違いをしていることに気づき始めたおねーさん。
「いいえ。温度とか圧力とかで、勝手に歪んでるんです。だから規則性とかはわかりません。」
うわ。ほんまかいや。
もう少し詳しく聞いてみたけれど、彼女自身はちゃんとした原因を知らないらしい。
パネルの構造がどうなっているかわからないけれど、格子模様の歪みはどこにも見られず、文字だけが歪んでいた。
きっと、それぞれ別の板に印刷されていて、各板の頑健さが異なるんでしょうね。
どんな材質なんだか知りませんが、デザイナーさん、大失態ですね。
とは言え、それはそれで面白いし、また何年かしたらどういう変化を遂げたか見に行きたいですな。
もしかしたら、僕みたいなリピーターを集めるための、巧妙な罠かもしれないと思ってしまったなり。
(終わり)
【歪んだパネル、もう1枚】
なお、2日間、この部屋にいました。
WWWWWWWWWwwwwwwww-
そんなことがあったのか・・・。
昨日、科学未来館へ行った人によると、すでに修理されてしまっているようです。