プチモテ期継続中。
また、読者(♀)からラヴいメールが届く。
80年代ポニーテールにしてみた
写真つき。
休日の朝寝坊でボンヤリした頭が急に冴え出す。
冴え出すとはいえ、思い出すのは「スケバン刑事」のポニーテールの斉藤由貴。
貧相な想像力。
でも、ポニーテールの斉藤由貴に萌える少年時代を過ごしたというエピソードは、多くの読者(♂)の共感を得るはず。
「てめぇら、許せねぇ」
そんなセリフと、桜の大門のヨーヨーを頭に浮かべつつ、近所の本屋へ。
平積みされていた文庫本に目が留まった。
斎藤由香著「窓際OL: トホホな朝 ウフフの夜」
「へぇ~、斉藤由貴が小説でも書いて出したのかな。”ウフフ” とか “トホホ” とかって、いかにも斉藤由貴が使いそうなフレーズっぽいし。社会の荒波にもまれて、挫折しそうになりながらも、健気に生きて、幸せをつかむ女性の姿を描いた小説なんだろうなぁ。いかにも、斉藤由貴が書きそう。30代の働く女性にウケそうだね。”女の子ハンター”を目指す当方だし、”敵を知り己を知れば百戦あやうしからず”って言葉もあるし、これを読んで女性の傾向と対策を勉強しよう。」
と、ヨコシマかつ、下衆な妄想と共に、本を手に取る。
帯には、さくらももこのイラストが描いてある。本当に頼りなさそうなOLのイラストだ。
こういう絵は、さくらももこの真骨頂だね。
煽り文も読んでみよう。
祖父は大歌人・斉藤茂吉
父は作家・北杜夫
そんなお嬢様のお仕事は
なんと「精力剤」のPR!?
あれ?
叔父に斎藤茂太まで輩出している、作家一家じゃん。
斉藤由貴じゃないじゃん。
ポニーテールもセーラー服も棒読みの「てめぇら、ゆるせねぇ」も、尾崎豊も関係ないじゃん。
まぎらわしーよー。
しかし、「精力剤」の文字に引かれ、買った。
読んだ。
著者の斎藤由香さんは、本当にサントリーに勤めていて、「マカ」を主成分にした精力剤の販売を行う部署にお勤めらしい。
本書の前半では、女性ながらに精力剤のPRをしなければならない苦労が面白おかしく語られている。
下世話な週刊誌の取材を受けて「”中折れ”にも効くのか」とか「行為の何分前に飲めばいいのか」とかの質問に答えなければならないとか、笑える。
#そして、当方もかなり気になる。
そして、話は、社内の奇人変人社員の紹介や、バリバリと活躍している知人女性たちへのエールに移る。
本書の後半は、著者の家族に関するエピソード。
実を言うと、最初の3分の1くらいのあたりで、ちょっとビミョーな違和感を感じながら読んでいた。
なんつーか、人イジリというかゴシップというか、あまり愛の感じられない暴露話の雰囲気が立ち込めていたから。
そういうの、個人的に嫌いだし。
あと、話もアッチに飛んだり、コッチに飛んだり、全く同じ話が何度か出てきたりで、統一性のない散漫なエッセイ集に思えてきた。
#もともと、雑誌連載エッセイをまとめたものだから、仕方ないのかもしれないけれど。
しかし(ここから、褒めるということをわかってほしくて、ボールドにした)、
丹念に読むと、実は行間に深いテーマがあることに気づいた。
たぶんそれは、「老いと生きがい」だと思う。
個人的な話だけれど、僕がタバコを吸うと言えば「長生きできないよ」と言われたり、独身で子供もいないと言えば「歳をとったら誰に面倒見てもらうの?」と言われるし、持ち家も貯金も無いと言えば「老後、どうやって暮らしていくの?」と言われる。
世間的にも「少子高齢化」とか言われてるし、「今の若い世代は年金がもらえなくて、暗い老後」とか言われてるし。
そういうのに、なんかモヤモヤとしていたここ数年。
「窓際OL」を読んでいて、胸がすくような一節発見。
「・・・そういえばフランス人の友人が日本の健康ブームにビックリしていて、”何のための健康なの?”って聞かれたよ。健康や年金を語り始めたら歳とっている証拠だって」
「まさに、”長寿のための健康” に振り回されてるよね」
「でしょ?目的がないんだよね、日本人は。面白かったのがパリで友人にパーティーに誘われたんだけれど、目の前で六十代のご主人と美しい奥さんが派手にケンカをやり始めたの。”他の女の人に声をかけすぎてる、何故、私を見つめないのか?”って奥さんが抗議しているんだって。二人とも、”人生、生きてます!”って感じで大迫力だったよ」
そうなんだよ、”人生、生きてます!”っていう感じがないのは、寂しいことなんだよ。
老いることが寂しいんじゃなくて、生きがいがなくなるのが寂しいんだよ。
本書の後半では、著者の父、北杜夫がどんどんダメになっていく姿が語られている。
彼がひどい躁鬱病(単なる欝病の方がまだマシで、躁になっちゃうと向こう見ずにとんでもないことをしでかす)であることは有名で、本書の中でもそのせいで家族がどれだけ苦労させられているかがいろいろと書かれている。
しかし、由香氏の焦点は、彼の躁鬱病を嘆くという点にあるのではなく、北杜夫が生きがいをなくしていくことへの寂寥感にあると読んだ。
由香氏の祖母(北杜夫の母で、斎藤茂吉の妻)の描き方は「老いてなお盛ん」な感じで、80歳を超えてもホイホイと海外に出かけていくなど、バイタリティ溢れる、好人物として描かれている。
それに対して、北杜夫の方は、元気がなく、やる気もないダメ人間として描かれている。
「生きがいなくしちゃ、ダメよ」と語りたい1冊なのだと思った。
老後の自分の経済状況や健康状態がどうなろうが、精力剤「マカ」で女の子とウハウハで楽しい人生を送りたいと思った。