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奈良・野鳥の森

近鉄高の原駅から東に向かって、あてもなく車を走らせていたら、「野鳥の森」という看板を発見した。
敷地の中を覗き込んでみると、大きなネットが張ってあり、確かに鳥が放し飼いにされている様子。
しかし、出入りする人はおろか、猫の子一匹見当たらない。
#猫は鳥捕まえちゃうかもしれないけれど。

「今見学しないと、二度と来ることもないだろうなぁ」
と思い、恐る恐る入場してみた。
入場料金200円。
受付小屋の中では、おじさんが暇そうにボーっとしており、ボーっとしつつも、サングラスをかけてヤクザな格好をしている当方をいぶかしんでいる様子。
ゴールデンウィーク中とはいえ、暦では今日は平日だし、
アンタ、仕事はどうした?
と言いたげな様子。

「いや、今日はちゃんと会社から休みをもらってるし、動物の行動観察は当方の研究の周辺領域だし、れっきとした」
と、心の中で言い訳しつつ、いざネットの中へ。


鳥の放し飼いスペースは、100m四方くらいの広さか。
中央に池があり、多数の鳥が羽を休めている。
入場者は定められた通路の上しか歩けないようになっており、池のほとりに近づくことはできないが、柵は30cmくらいの高さしかないので視界の妨げになるようなことはなく、鳥たちを間近に感じることができる。
ていうか、割と人に慣れているようで、通路にでーんと座り込んでいるやつもいて、可愛い。

案内板によれば、13種類の鳥がいるそうである。
ちゃんと数えたわけではないけれど、ざっと100羽近い個体がいるっぽい。

そんな中、当方が一番心惹かれたのは、シロクジャク。
非常に美しい。神の使いと言われたら信じるくらいに美しい。

じーっとシャッターチャンスをうかがっていたら、やっと正面を向いてくれた。
凛としてかっこいい。

しかも、その立派な尾羽にも触らせてくれた。
想像するほどフワフワではなかったが、しなやか。

孔雀のオスといえば、尾羽の”目玉模様”が特徴であり、目玉模様が多い個体のほうがメスにモテると言われていたりするわけだが、シロクジャクの尾羽に関しては目玉模様も真っ白だった。
本当に神々しい。

ちなみに、メスもいた。
尾羽が短いこと以外は、オス同様で真っ白。

管理人さんの話によれば、今の時期は求愛の季節だそうで、普段なら尾羽を精一杯開いたシロクジャクが見られるそうである。
ただし、今日は小雨模様のせいか、求愛行動はあまりしていないとのこと。
ツイてない。激しく残念である。

ほかに見学者がいないおかげで、5分ほど管理人さんにいろいろ話をうかがうことができた。
彼の一押しの鳥は、きれいな赤い色をした鳥だそうだ。
正確な名前は忘れてしまったけれど、××トキという、かの有名なトキの一種だそうだ。
僕は、真っ白なシロクジャクに心惹かれたが、燃えるような赤い色をしたトキも確かに美しい。
#上の池の写真にいっぱい写ってる。

そのほか、管理人さんは寂しいことも語ってくれた。
野鳥の森は、奈良市の施設なのだが、近年は入場者も少なく、採算が合わないために閉園すべしという議論も持ち上がっているそうだ。
ただし、生物を処分するとなるといろいろ問題があり、それがほぼ唯一の存続理由という悲しむべき事態に陥っているようだ。

少なくとも僕は、シロクジャクや赤いトキを他の動物園などでは見たことがない。
それらの珍しい鳥を、良い意味で無造作に見学できる「奈良・野鳥の森」を心の底から素晴らしい施設だと思っている。
このような貴重な施設を、「採算が合わないから」という理由で閉鎖してしまうとするなら、残念でならない。

僕は奈良市民ではないので、仮にこの施設を存続させようという議員がいても投票できないし、赤字部分を税収でまかなおうとしても住民税を納めているわけでもない。
存続のためにどーんと寄付金を納めるという方法もあるだろうけれど、日々の無駄遣いのおかげで蓄えもほとんどないので、この施設の1週間分のランニングコストになるかならないかくらいじゃなかろうか。

教育だの文化・学術振興だのがあちこちで叫ばれているが、意地悪な見方をすれば、パソコンを○○台学校に設置しただの、パワーポイントでプレゼンができる子供を育てるだの、WEBであらゆる知識にアクセスできるだの、ITマンセーな税金投入がもてはやされている昨今である。
クリフォード・ストールの「コンピュータが子供たちをダメにする」ではないが、果たしてそれは本来の教育のあるべき姿だろうか。

無機質な印刷物だとかディスプレイだとかを介した知識だけではなく、もっと泥臭い知識に触れられる機会を準備しておくべきではないか。
野鳥の森に出かければ、鳥たちの形状や行動様式を直接眼で見れるし、どんなときにどんな声で鳴くのかを自分で発見できる。
クジャクの足が、爬虫類のようにようにウロコっぽくなっているなんて、今日の今日まで僕は知らなかったよ。
鳥が羽ばたけば埃っぽいし、園内に漂う動物臭はクセーけど、そういった視覚や聴覚以外の情報を通じて学習することなんて、向こう数十年はPCには無理っぽくね?
#「知らなくてもいい」っつー話も、あるような、ないような気がするけれど。

採算度外視で、こういうところに税金をぶっこむくらいの度量の深さを見せてもらいたいものである。
真の文化振興のために。

鳥は美しかったし、世の中のあり方についてもいろいろ考えさせられちゃうような、面白い施設を見つけたと、僕はかなり満足な夜。

【野鳥の森】
WEBサイト:
住所: 奈良市左京五丁目3-1
TEL: 0742-71-0775
開園時間: 10:00-16:00
休園日: 月曜、祝日の翌日、年末年始
入場料: 200円 (15歳以下等無料)
駐車場: 4台

なお、国道24号線側からは入れない。高の原方面から回り込むこと。

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